今年の夏は、一度きり。
タイトルはよなかさんの見出し画像にインスピレーションを受けて、つけさせてもらいました
昨年ど派手な転職すってんころりん体験をした私は、全世界の人が怖くなってしまった。それらは過去のnoteに随分書いてきたので、今日は以下省略にしてみることに。
ここ最近は徐々に人と接点を増やして、いろんな話題に慣れたり、恐怖心がぶり返して寝込んでみたり、また復活を繰り返しながら、少しずつ外の空気に触れている真っ最中。
いずれは何かしら定職を選ぼうと頭の中では考えてはいるものの、再度すってんころりんするかもしれない、そう思うと怖くて足がすくんでしまう。別に転んだっていいはずなのに、もう一度ボロボロになるのは耐えられそうにない。家族や病院、知人友人から色々アドバイスをもらった末、今は負担の少ない短時間の仕事をしている。
最近になって体調の良い日には、スキマバイトやスポットワークで単発バイトをすることも。昨年の私から見たらちょっとした進化を遂げた。知り合いの知り合いの他人さんもたまにやっているよという話を聞くし、noteでは体験記事があがっていて多くの「スキ」が付いているのを見かけると世の中にスキマバイトが浸透しているんだなぁと感じる。noteで多くの「スキ」がされている体験記事に対して、これから書く体験談は脱力系で何の参考にもならないのでご注意を。
毎回、真面目に働いているだけなのに、いつもおかしな出来事に巻き込まれている人の戯言です。
まずアプリを開いて行ける時間と日にちを探しからスタート。無理しないのを家族と約束しているので、時間帯や仕事内容をよく確認。わりと気軽に行けている。いい意味でのあっさり加減が、今はとてもちょうど良くてスキマバイトが世の中にできて良かったと思う。半面、危ない事件に巻き込まれるケースもあると注意喚起の文言をみかける。なので自分がよく知る会社や店舗しか選べない。とても臆病で心配性なのだ。
私は見た目がしっかりして見えるらしいけれど、中身は残念な程に完璧なおっちょこちょいである。うっかり八兵衛と肩を並べられるか、私が一歩先を行っているくらいに。
何度も来ている様に見えて大体初日。
職場の従業員と見せかけて初出勤。
頼りにされても初心者マーク。
そんな見かけ倒しなので、かなりの割合で面白い出来事と遭遇できる。
お孫さんがいるであろう年代の可愛いマダム。孫でもないのに「飴なめな」「あらま、よく頑張るね」と、飴をもらい可愛がられ、お褒めの言葉をかけてもらう40代。褒められて伸びる子です、を、絵に描いたような性格なので褒められるとウフフしている。頭の片隅でお世辞だとかおだてられていると考えると、途端につまらなくなるので、マダムの手のひらで初心者マークの40代は小躍りしている。
仕事にまったく無関係な眼鏡を褒められたかと思えば「あら〜でもよく見ると面長ね」と面長を暴露される。夫にその会話を伝えると電話の向こうで大喜びしていた。
「よく見なくても面長なのにね」
知っている。生まれてからずっとこの顔の形で生きてきたから、知っている。そんな夫も面長。まあまあそんなどうでもいいにまみれ、仕事と無関係な面長の話題で場が和んであと30分でも頑張れるのなら面長で生まれてきて良かった。
ちなみに可愛いマダムは梱包されたアイスをみる度に「あらやだ、美味しそうだわ」「あら。こっちの餃子見てたら、お腹空いてきちゃった」と心の声がダイレクトに出てしまう。心の声が漏れちゃった、どころじゃなくて、ダダ漏れの心の声をラジオ感覚でずっと聴いているうちに、世の中は怖い人ばかりじゃないんだな、と改めて知った。
またある人は。
職場内の危険探知が鋭くて「あそこには行かないでおきな」と、こっそり教えてくれる。難所を掻い潜る秘密の攻略法が手に入れたおかげで、怪我も火傷もしていない。怖がりな私にとって、無傷で帰れるのはとても有り難い話なのだ。
しかし、駄菓子菓子。
とある所で身に覚えのない事をチクリと言われ、ジワッと汗をかきながら返答に困った。周りを見て助けを求めようにも他のスタッフがてんやわんやしている忙しい時に揉めるのは色々面倒なので「分かりました」と言い、その場を凌いだ。結果「犯人はアイツだ」と、犯人のレッテルを貼られ、冷や汗から一転、心は一気にずぶ濡れになる。よくあることだと、言い聞かせて流れにのったつもりだったけれど、ひと呼吸おけば置くほど、あと数時間「犯人」のままでいるのが悲しくなってくる。
そんなとき。
後ろから颯爽と「水飲んだ?」と1人の女性が現れる。かっこいい、まるでハンサムを絵に描いたような。私と同年代だろうか、笑顔がとても生き生きして爽やか。その人がコップに注いでくれた冷たい水が喉を通って身体中に沁みわたる。沁みる、沁みます、この荒野の心に沁みます。
私の様子を見て、犯人違いを察してくれたようだ。すると「私の名前出して言い返していいよ!」と、さっぱりとした顔で言い放つハンサムな彼女。
この瞬間。この職場における伝家の宝刀か水戸黄門様でいう所の印籠を手に入れた。フリマアプリでも売っていない、高額転売も出来ないレアアイテムを手にいれ大事に懐へ忍ばせた。そのあと荒れた心は痛まなくなって、与えられた仕事を黙々とこなしているうちに段々楽しくなってきた。
すると先ほどチクリと言ってた男性に手招きされる。一瞬ギクッとしたけれどそれは次の瞬間に勘違いに変わる。
「なんて呼べばいいか分からないから、こっちに来て〇〇ミーさん!」
その場にいる数人が一斉に振り返る、全員〇〇ミーさん。ちょっと笑った。
冷汗は一気に引いて、きっと間抜けな顔で近づいたと思う。
そんな私に「〇〇ミーさん!倒れるから水飲みな!」そう言って冷たい水を渡してくれた。
水を受け取ったあとに「あなた名前は?」
気が利かないので、なんの代わり映えもしないどこにでもある自分の苗字を名乗ってしまった。
「1号です」
「フーテンの寅次郎です」
「名乗る者でもございません」
変化球でも良かったのにこんな私にも恥じらいがまだあるらしい。
大切な印籠を懐に忍ばせた助さんでも格さんでもない、しっかり者っぽいうっかり八兵衛(40代)はそれなりにその一日をやり遂げる。慣れない仕事はそれだけでぐったりする。まだまだリハビリが必要みたいである。
先ほどの水を差し入れしてくれたハンサムな彼女が、さらっと自分の名前を言った時、以前の職場でお世話になった女性の先輩と同じ苗字。それだけでただ、ただ嬉しかった。
その場限りの人だからと雑に扱うことは決してしない強さがかっこよかったし、帰り際は出口まで見送ってくれた。「今日は来てくれて助かりました」と、笑顔で言う。ああ、こんなところまで先輩と一緒だなんて。たった数時間同じ釜の飯ならぬ、同じサーバーの水を飲んだだけなのに、見送ってもらえてステップを踏みたくなった。味がしないはずの水があんなに美味しいと感じられたのは何故だろう。外気にさらされて汗ばんだ額にぬるい風があたる。去年の夏と、今年の夏は全く違う。
去年の夏にもらった先輩からの言葉が耳に残る。
「人生長いから無理しちゃ駄目だよ。ちもさんと出会て嬉しかったよ」
どこの職場にも良い所と大変な所がある気がする。
一緒に働くスキマバイトの人はそれなりに何かを抱えている人が多い印象。そして誰かが困ってたら助け合う的な風土がある。助けられたら助けてもらった分は、次の誰か返せばいいと思ったし、というかそれしか出来ない出会いなのを知った。優しくしてもらった次の瞬間には次に会える約束はないのだ、だから、その瞬間その瞬間を楽しんでいる。自分が食べないアイスを見て喜んでいる可愛いマダムに会える機会はそうそうない。
すってんころりんしたから、今ここにいる不思議さや私に欠けているものを取り戻す大切な時間。
こうして頑張って少しヘソクリが溜まったら、なんはなグッズを手に入れたい物欲にまみれている。もしも家族が持ち物を見た時に「なんのはなしですかってなに?」って#を探し始めたら面白い。そして私のnoteに辿り着いてくれるだろうか。壮大でちっぽけな私のヘソクリ物語である。ちなみにどれを買おうか悩んでいてまだ何も購入出来ていない。やっぱりTシャツかな、いやトートでしょ。いやここは手始めに手堅くステッカーでしょ。
この夏は悩ましくて険しくて、そして楽しい。
今年の夏は、一度きり。
来年の夏もずっと夢を見て、そして追いかけたい。
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