手紙がおしえてくれたこと【旅行記|再会編】
2025年の終わりに2つのチケットを手に入れた。
1つは高速バスのチケット。もう1つは、とあるイベントのもの。
イベントに文通で交流していた友人が出店するという。いや彼女はもう何年も第一線で活躍しているけれど、イベントが初開催される地に夫が何故か単身赴任でいる。奇跡の組み合わせが実現していたわけで、もうこれは行くしかない、走れ!というわけで、スポットバイトでせっせっとお皿を洗い、別な日にはベルトコンベアと格闘し、ときにドライアイスをかち割った。いえ、かち割り損ねながらも奮闘したと言う感じ、とにかく頑張った。それほどまでに行きたいと願った旅行とイベント。
そのイベントとは…

手紙舎さんが主催する紙ものイベント。文房具や紙もの、イラストが好きな人にとって憧れの場。わたしは、何年も前からいいなぁ〜いいなぁ〜いいなぁ〜と画面越しに憧れを抱き、時に近隣の県で開催されるときはコロナ禍で予定が真っ白く無くなってしまう年があり、でも結局は私自身が「いつか。いつか」と行動に移せないまま夢を募らせていた。病気がきっかけになって叶えたいことはやれるうちに!(できる範囲で)と思うようになった2025年。手帳のやりたいことリストに「〇〇ちゃんに会う」と数名の友人、知人の名前を連ねた中に、文通相手の彼女を書いた。もう数年、いや大げさじゃなく二十年近く直接会えて居ない気がする。
手紙の楽しさや紙のぬくもりの面白さを教えてくれたのは紛れもなく文通で交流を重ねた彼女。
デジタルが右肩上がりの時代、Windows95が発売した少し後、顔も知らない彼女に手紙を書いた。
彼女の便箋のチョイスはいつもセンスがよくて、文字もかわいいし、間違えて書いた文字を消すイモムシさんさえ可愛いので真似したくなった。FAXでもやりとりしたこともあった、ブイブイブイと音を立てながら感熱紙に印刷された文字が出てきた時はリアルタイムでやりとりしているのを味わってワクワクした。手紙は何でもないやりとりかもしれないけれど、〇〇ちゃんに手紙を書こうと少し面白い目線で日常を観察するようになった。
何気ない日常をありふれたまま書いて送って、数ヶ月後に彼女からの手紙がポストに届くとプレゼントが届いたような嬉しさで階段を駆け上がった。

あれからもう何年経つのだろう。
いつの間にかお互いに苗字がかわり、何度かしか直に会わないままなんとなく繋がりを意識していたのは、私のだけ何だろうか。だって彼女は輝くように羽ばたいていった、コツコツと仕事を積みかねて、どんどんどん人の心をほっこりさせていく。何年も会っていない、最近はすっかり手紙交換をしていない・・・覚えてくれているのかな。いや、もう覚えていなくても「ずっと応援してました」そんな想いを詰めた手紙を用意して高速バスに飛び乗った。
移動中は眠ろうと思うのに、夫にも会える。友人にも会える。夢のイベントにも行けるかもしれない。胸は高鳴って景色がびゅんびゅん飛んでいくのが楽しくて仕方なかった。
思い出せば、私も彼女も環境が変わって、幾度目かの引っ越しで宛先が分からなくなって、出した手紙から返信が来なくなった。どちらも悪くない、人生で交わらない時ってあるのだ。またいつか交差点で「あれ?◯◯ちゃん!」と出会う日を夢見ながら、遠くにいる彼女を思っていながら、彼女はユニットを組みクリエイターとしてほっこりと活動し始めて、いつの間に友人という枠を飛び越えて大好きなクリエイターさんになっていた。
――――
イベント当日。夫と私は自他共に認める「雨男・雨女」。意気揚々と電車に揺られ会場近くの駅から歩こうと外に出ると雨が歓迎してくれる。やっぱり我々は、この能力を持ってしてこそ我々なのだね。と、各々で折り畳み傘をサッと用意し、そして、仕舞うとき用の吸水式折りたたみ傘バッグまで持っている。それぞれに。生まれ持って女子力高めな夫が男らしさを発揮しだし、やっと私がこの年齢で女子力に興味を持ったお陰で、折りたたみ傘からの仕舞う時用の傘バッグを阿吽の呼吸で用意できるまでに。もはや感動である。何かに付けて感動である。
駅から同じ方向へ向かって歩く人ばかり。
「これは紙博へ行く人達だね」
「きっとそうだよ」
「思っていたよりも家族連れが多いんだね」
「女の人も多いけど男の人も多そうだ」
あはは、うふふと傘が重ならない距離で道中は会話を弾ませる。夫と久しぶりに直に会って話せる時間はなんともくすぐったいのだ。
ついに会場の吹上ホールへたどり着いた。しかし、会場はどこだろう。きっと人の流れについていけば間違いないね。そうそう、ちゃんと傘の水を切らなくちゃ、吸水式の傘バッグに入れて準備は万端。おや?さっきの人の流れは幾つかの方向へ分かれているみたいだ。ここは初めてきた場所なのに、『念願叶った場所だ』という喜びと興奮が、謎の自信に満ち溢れた野生の勘を発動させた。一目散に小走りで指をさす「あっちだよ!ほら!旗が立っている」本当に?という一抹の不安げな夫が小走りで並走しながら一緒に入口らしき方向へ走る。
あ、入口だ、看板だ、よし、いこう。
『愛知 トミカ博 in NAGOYA』
「ちがうだろう」
夫のささやかな叫びが耳元で木霊する。

夫のツッコミがなければトミカ博へ突入しプラレールで遊んだはず。スットコドッコイっぷりを自ら証明してしまった。いや、そんなことはどうだっていいの。
紙博。紙博。
ホールの2階へ行くと用意していたチケットを取り出す。階段を上がっていくと憧れの場所・・・

最初は人の多さで脳内の人混みリミッターが壊れてめまいに襲われあんまり記憶がありません。おまりにおろおろするので、側にいる夫さえ不安になる。よろめきながら、初めに・・・初めに、彼女に挨拶したい、その一心で目的のブースへ行くと静かに黙々と仕事をしている姿が目に飛びこんできた。
「いた」
嬉しかった。忙しそうにしているし、他のお客さんもいるのでどうしようか迷ったけれど、ここまで来たのだから、えいやっと一歩を踏み出した。店先にいるスタッフにお願いし奥で仕事をしている彼女に挨拶させてしたいと伝えた。奥からゆっくりと現れた彼女は、
「えー。ちもちゃん?」
何年も会わなかった彼女との再会はあまりに自然で、予想より近くて不思議なくらい会えない時間を感じさせないものだった。
雨に濡れないように持ってきた手紙とほんの少しの手土産を渡せて、もう充分。そのくらい彼女はきっと忙しく過ごしていたはずだと思った。私たちが挨拶している間に「サインを・・・」という方がいて、なんだか申し訳なさも込み上げてきたけれど、1つだけ願いを叶えて欲しくて、接客が終わり振り返ってこちらに戻ってきた彼女へ鞄からポストカードを取り出して伝えた。
「厚かましいけれど、私にもサイン良いですか?」
それは数年前、彼女がクリエイターとしてが発売したポストカード。現在2人のクリエイターユニットとして活躍している。作画は彼女が担当している。お気に入りの一枚を鞄に入れて来た。何通も彼女からの手紙をもらっているのに、「今」の彼女と再会できた思い出を1つカタチにして持って帰りたい、という身勝手なお願いを快く受け入れてくれた。
夫は隣で見守っていてくれて、彼女がそのポストカードを手に取るとうふふと言う微笑みで。
「素敵な絵ですね」
可愛い冗句。静かにサインとイラストを描いてくれている間に、夫はひょっこと彼女の手元を覗き「すごいなー」と笑う。そんなにうろちょろしないでと、言いながらどう見ても私の方が挙動不審なはず。書き終えたポストカードをドキドキしながら手に取ると「ありがとう」の文字が書かれてあった。ここに来てわたしは何もしていないのに。
感動して立ちすくんでいると
夫が「ちもちゃんがいる」と指さすので、どこに?どこに?と探すが私らしき顔はない。くすくすと彼女が笑うので更に「どこどこ?」と目をきょろきょろさせて、探すとなんと、ど真ん中にわたしのトレードマークが描かれていた。

ちもは子供のころ、丼ものが大好きだったのだ。そのなごりを確かに描いてくれてなんだか、嬉しいな、嬉しいな、とゆっくり思い出に浸りたくなってしまう。しかし彼女は彼女の時間があるので、またあとでゆっくり来るね。と手を振り、私たちは一旦、紙博のイベントホールへ旅立つことに。
後日「紙博イベント編」を投稿しようと思っています。想像以上にたくさんのお店があって圧倒されました。どのお店も作り手の愛情が伝わる方が多くて嬉しかったなぁ。

彼女のお店に戻ったのは、お昼を過ぎてしばらくした頃。私が作品に夢中になりすぎたせいか「俺、そのへんにいるから、ゆっくり見てな」と夫はフラフラどこかへ行ってしまった。一緒に見たかったのにな・・・少し残念に思いながら、トコトコと会計場所へ行くと見たことのある2人がニコニコと話している。
あれは、夫と彼女ではないか。
2人はたったさっき出会ったばかりのはずなのにちょっと待ってよ。
ズルい混ぜてよ、私だって話したい!と近づくと「話をさせてもらってた」と嬉しそうに照れくさそうに言う夫。隣で笑っている彼女。
夫は超が超つく人見知りなのに、友人と自然と話している姿に嬉しくなった。
文通していた友達との再会。
そして、私の大好きで大切な2人の出逢い。
どちらの場面も不思議なほど自然でおだやかだった。再会はあっという間でバイバイと手を振って帰路についた。
駅までの道はもう雨は降っていなくて歩道のあちらこちらに水たまりが出来ているので避けて歩く、まるでゲームのように。
彼女と何を話していたのか夫に聞くと
「フラフラ歩いてたら『何を見てきましたか』って、彼女の方から話しかけてくれたから「あの店とあそこの店に行って、こんな体験もしてきました」って言って。「全部これ、一からみんな作ったんですね、すごいですね」っていうのを話してた」
内心。とても驚いた。あの会場であの規模で回数を重ねたイベントから夫は「一から人の手が作った」のを感じて、飾りなく話してくれていたこと。
水溜りが出来た歩道はまっすぐに歩けない、くねくね、ぴょんぴょん。私たちはそうやって息をするように思い出を胸にしまいながら、出会いと別れを繰り返し、ぴょんぴょん、とことこ、歩いていった曲がり角の先でまた新しい日々と出会うのだろう。
手を振りながら「またいつか」と再会を願う。
それが何年後になるかは分からないけれど、手紙はたしかに人と人を繋いで、そしてまた新しい出会いの種を撒いてくれた。
手紙が教えてくれた。
想いを繋げていてくれた。
ありがとう。
駅に着く頃には、もう雨の気配はなかった。私たちの能力は初めに使いきってしまったらしい。あの時の雨はきっと制御できないほどの嬉しさが雨粒になったのかもしれない。


またいつか
かならず会おうね
追記:3.7さんの切手画像を使わせていただきました🙇🫶✨ありがとうございます
【おまけ】
お昼ご飯。
引きで見ると

あれ、あなた、鰻食べるって言ってませんでした?
ひつまぶしは?
と思っている方がいたら、ぜひ「ごはんの時間(ひつまぶし編)」にも遊びにきてね。たぶん書きます。
👇️ゆるい記録をのこそうとしています👇️
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップは日々を楽しくつづける為につかわせていただきます。色鉛筆や紙モノ、物語で楽しいをいつか表現できるようになりたいです。