PEST|ニュースを集めるだけでは、外部環境分析にならない
PEST分析
PEST分析をやって、
金利。
法改正。
人口動態。
AI。
業界ニュース。
かなりの量を調べた。
Political。
Economic。
Social。
Technological。
分類もできている。
それなのに、
「それで、この会社には何が起きるの?」
と聞かれて止まったことはないだろうか。
さらに、
「だから、自社は何を考えなければいけないのか」
と聞かれると、答えられない。
PEST分析で起きやすい失敗は、
情報が足りないことではない。
情報を集めたところで仕事を終えてしまうことだ。
PESTは、
ニュースを四つに分類するためのフレームワークではない。
会社の外で起きている変化を、
自社の売上、コスト、人、投資、事業モデルへ翻訳するための分析
である。
この記事では、
PESTとは何かという説明だけではなく、
実際の仕事として、
何を調べ、
どう整理し、
どこまでできたら提出していいのか。
まで整理する。
PEST分析をするときに迷ったら、
ここへ戻って使ってほしい。
PESTとは何か|外部環境を、自社への影響に変換する
PESTとは、
Political:政治・法律・制度
Economic:経済
Social:社会
Technological:技術
の四つから、
会社の外部環境を見るフレームワークである。
ただし、
Politicalを三つ。
Economicを三つ。
Socialを三つ。
Technologicalを三つ。
均等に埋める必要はない。
会社によって、
重要な外部環境は違う。
金利が重要な会社もある。
人手不足が重要な会社もある。
規制変更が重要な会社もある。
技術進化が事業そのものを変える会社もある。
重要なのは、
会社の前提を変える外部環境は何か。
である。
そして、その変化を、
売上。
コスト。
人。
業務。
競争。
ビジネスモデル。
へ翻訳する。
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Political|法律や政策ではなく、経営への影響を見る
Politicalでは、
法律。
規制。
税制。
補助金。
政策。
許認可。
貿易政策。
国際関係。
などを見る。
ただし、
規制が強化される。
で終わってはいけない。
見るのは、
誰に影響するのか。
いつからなのか。
何が変わるのか。
自社のコストは増えるのか。
業務プロセスを変える必要があるのか。
顧客の購買判断に影響するのか。
までである。
外部環境を、
経営上の変化へ翻訳する。
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Economic|売上だけでなく、キャッシュまで見る
Economicでは、
景気。
政策金利。
為替。
物価。
賃金。
原材料費。
消費。
資金調達。
投資環境。
雇用環境。
などを見る。
経済環境が変わったとき、
売上だけを見るのでは足りない。
コスト。
採用。
借入。
投資。
入金。
キャッシュ。
まで見る。
たとえば、
金利が上がった。
という事実がある。
そこから、
借入コストが上がる。
顧客企業の投資判断が慎重になる。
商談期間が長くなる。
設備投資や採用計画が変わる。
という影響が考えられる。
重要なのは、
経済ニュースを知ることではなく、自社の数字に何が起きるのかを見ること。
である。
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Social|社会変化を、行動変化まで落とす
Socialでは、
人口。
世代。
働き方。
労働市場。
消費者意識。
ライフスタイル。
教育。
価値観。
購買行動。
などを見る。
たとえば、
人口減少。
で終わらない。
誰が減るのか。
どの地域で減るのか。
採用にどう影響するのか。
顧客層はどう変わるのか。
サービス提供方法は変わるのか。
まで考える。
社会変化 → 行動変化 → 経営課題
まで落とす。
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Technological|新技術は、機会だけとは限らない
Technologicalでは、
AI。
自動化。
SaaS。
製造技術。
データ。
セキュリティ。
通信。
プラットフォーム。
などを見る。
新技術が出たから、
Opportunity。
ではない。
技術進化によって、
コストが下がる。
速度が上がる。
顧客の期待値が変わる。
競争条件が変わる。
今までの強みが価値を失う。
ということもある。
技術は、
自社にとって機会にも脅威にもなる。
見るべきなのは、
技術そのものではなく、何の前提を変えるのか。
である。
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PESTを始める前に|何を判断したいのか決める
PESTで迷いやすいのは、
目的を決めずに調査から始めたときだ。
実務では、
最終的に何を判断したいのかから逆算して調べる。
たとえば、
○○業界のPEST分析をする。
だけでは弱い。
これでは、どこまで調べればいいのか分からない。
たとえば、
3か年事業計画を見直すために、売上・コスト・採用・投資の前提を変える外部要因を整理する。
とする。
これなら、見るべき情報がかなり絞られる。
PESTは、
調査範囲を広げるためではない。
意思決定に必要な外部要因を絞るために使う。
情報源は「信頼性・新しさ・関連性」で見る
PESTでは、情報源も重要になる。
見るのは、
信頼性。
新しさ。
今回の判断への関連性。
である。
政府。
中央銀行。
自治体。
業界団体。
企業の開示資料。
統計。
など、可能な限り一次情報に近いものを使う。
一方で、
ニュース。
専門家コメント。
現場の声。
二次情報も、変化の兆候をつかむには役立つ。
大事なのは、重要な結論について、
どの情報を根拠にしたのか戻れる状態
にすること。
情報源。
公表日。
対象期間。
は残しておく。
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事実・解釈・仮説・未確認を分ける
PESTで最も危険なのは、
事実と自分の考えが混ざることだ。
そこで、四つに分ける。
事実
確認できていること。
解釈
その事実を、どう意味づけるか。
仮説
まだ確認できていないが、今後起こる可能性があると考えること。
未確認
現時点で分からないこと。
たとえば、
事実:政策金利が引き上げられた。
解釈:企業の資金調達環境が厳しくなる可能性がある。
仮説:顧客の投資判断が慎重になり、商談期間が長くなる可能性がある。
というように分ける。
仮説を、事実のように書かない。
これだけで分析の質はかなり変わる。
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PEST分析のやり方|6ステップ
Step1|目的を決める
何を判断するためのPESTなのか。
対象事業。
対象期間。
を見る。
Step2|情報を集める
Political。
Economic。
Social。
Technological。
について、判断目的に影響する情報を集める。
Step3|分類する
情報を、
P / E / S / Tへ整理する。
ただし、四つを均等に埋める必要はない。
Step4|自社への影響へ翻訳する
ここがPESTの本体になる。
外部変化が、
売上。
コスト。
人。
業務。
競争。
投資。
キャッシュ。
へどう影響するのかを見る。
ただし、因果関係を勝手に作らない。
たとえば、
賃金が上がった時期と、
売上が落ちた時期が重なっていたとしても、
賃金上昇が売上減少の原因とは限らない。
相関と因果を混ぜない。
Step5|重要度をつける
すべての外部変化を、同じ重さで扱わない。
High。
Medium。
Low。
などで整理する。
ここでいうMediumは、
重要ではないという意味ではない。
今すぐ判断を変えるほどではないが、監視し、条件が変わったら再評価するもの
である。
緊急度と重要度は、分けて見る。
Step6|次に確認することを決める
PESTだけで分からないことも残る。
顧客はどう動いているのか。
競合はどう対応しているのか。
自社の数字には本当に影響が出ているのか。
次に何を確認するのかを残す。
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どこまで調べたら、提出していいのか
PESTは、調べようと思えば終わらない。
一度提出していいのは、
1. 今回の判断に重要な外部要因と、その根拠が揃っている。
2. 自社への影響と、まだ分からないことを分けられている。
3. 追加情報を集めても、重要論点や結論が大きく変わりにくい状態になっている。
ここまで来たら、
一度レビューを受ける。
調査が終わったことと、分析が確定したことは違う。
重要な外部要因を落としていないか。
レビューで確認する。
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PEST分析の完成例
金利環境の変化を見るとする。
項目| 内容
分類| Economic
事象| 金利環境の変化
根拠| 政府・中央銀行などの公表情報
事実| 政策金利が引き上げられた
解釈| 資金調達環境が厳しくなる可能性
仮説| 顧客の投資判断が慎重になり、商談期間や案件規模に影響する可能性自社への影響| 受注時期、売上計画、資金回収への影響
重要度| High
未確認事項| 顧客予算・商談期間が実際に変化しているか
次に確認すること| 商談期間、受注率、案件単価、顧客ヒアリング
ここまで書けば、
「金利が上がった」というニュースが、
自社で何を確認するべきか
という経営分析に変わる。
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PEST分析の提出テンプレート
項目| 内容
分類| P / E / S / T
事象| 何が起きているか
根拠| 情報源
事実| 確認できていること
解釈| その事実をどう捉えるか
仮説| 何が起きる可能性があるか
自社への影響| 自社の何が変わるか
重要度| High / Medium / Low
未確認事項| まだ分からないこと
次に確認すること| 追加で見るもの
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提出前チェック|作る側が見る5項目
1. 何を判断するためのPESTか明確か。
2. 根拠は信頼性・新しさ・関連性を満たしているか。
3. 事実・解釈・仮説を分けているか。
4. 「だから自社に何が起きるのか」を説明できるか。
5. 次に確認することが明確か。
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レビュー時のチェック|受け取る側が見る5項目
1. 今回の判断に関係ない情報が入りすぎていないか。
2. 重要な外部要因を落としていないか。
3. 因果関係を飛躍させていないか。
4. 仮説を事実として扱っていないか。
5. 次に確認することが明確か。
分析の型を揃える目的は、
資料の見た目を揃えることではない。
考え方とレビュー基準を揃えることにある。
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実際にPEST分析をやってみる
自社の事業について、
今後1〜3年で、事業前提を変える可能性がある外部要因を一つ選ぶ。
そのうえで、
事実。
解釈。
仮説。
自社への影響。
未確認事項。
次に確認すること。まで書いてみる。
PESTは、
大量のニュースを集めるための仕事ではない。
会社の外で起きている変化を、自社の未来へ翻訳する仕事である。
ただし、PESTだけでは経営判断まで届かない。
次に必要なのは、変化した環境の中で、
顧客。
競合。
自社。
がどうなっているのかを見ること。
次回は3C分析を扱う。
PEST → 3C → SWOT → 経営判断。
この流れを使って、情報を意思決定へ変えていく。
このシリーズでは、PESTから経営判断までを一つの流れとして整理しています。
分析業務で迷ったときに、必要な回へ戻って使っていただければと思います。
「分析の教科書|情報を経営判断に変えるための実務」
