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詰めているつもりで、考える力を奪っていた|マネジメントしているつもりで、組織を壊していた話⑤

詰める


詰めているつもりの上司ほど、現場から考える力を奪っている。

ベンチャーの営業現場では、この勘違いがよく起きる。

経営層や責任者は言う。

「数字への意識を持たせたい」
「もっと危機感を持ってほしい」
「甘い見通しをなくしたい」
「営業なら結果に向き合うべきだ」

言っていることは間違っていない。

営業は数字から逃げられない。
見込みが甘ければ、組織全体の判断がズレる。

未達リスクを早く見つけることも必要だ。
ただし、
詰めることと、考えさせることは違う。

この違いを間違えると、現場は自分で判断しなくなる。

前回は、数字を見ているだけでは、現場の疲弊や判断停止は見えないという話を書いた。

前回の記事はこちら

しかし、数字の違和感に気づいた経営層や責任者が、次にやりがちなのは「もっと厳しく詰める」ことだ。

詰めているつもりの上司ほど、現場から考える力を奪っている。


営業会議でよくある。


「この案件、本当に決まるのか」
「なぜこの数字なのか」
「いつ受注できるのか」
「失注したらどうするのか」
「足りない分はどこで埋めるのか」

責任者は、厳しく確認しているつもりでいる。
でも、現場からすると、考える場ではなく、責められる場になっている。

すると営業は、本音を出さなくなる。

危ない案件を危ないと言わない。
着地見込みを強めに出す。
失注リスクを曖昧にする。
都合の悪い情報を後回しにする。
詰められないための説明を用意する。

こうなると、
会議は現実を見る場ではなくなる。
上に怒られないための場になる。

経営層から見ると、現場の見立てが甘いように見える。

もっと考えてほしいと思う。
数字への執着が足りないように見える。
責任感が弱いように見える。

でも、現場が考えていないのではない。

考えたことを出すと詰められる空気を、上が作っているだけだ。

本来、営業会議で確認すべきなのは、誰かを追い込むことではない。

どの前提が崩れているのか。
どの案件の確度が下がっているのか。
どこに打ち手を入れるべきなのか。
何を捨て、何に集中するのか。
誰がどこで意思決定すべきなのか。

そこを明らかにすることだ。

しかし、詰めることが目的になると、現場は防御に入る。

考えるより、言い訳を探す。
共有するより、隠す。
相談するより、抱える。
判断するより、上の顔色を見る。

その結果、責任者はさらに詰める。

「なぜ早く言わなかった」
「なぜ考えていないんだ」
「なぜ同じことを繰り返すんだ」

でも、これは悪循環だ。

詰めれば詰めるほど、現場は本当の情報を出さなくなる。
本当の情報が出ないから、経営層はさらに現場を信用できなくなる。
信用できないから、さらに細かく詰める。

そして、営業組織から判断力が消えていく。

言語化

特にベンチャーでは、プレイヤーとして強かった人が営業責任者になることが多い。

そういう人ほど、自分の基準で詰める。

「自分ならもっと早く動く」
「自分ならこの段階で気づく」
「自分ならこの数字は外さない」
「営業なら普通わかる」

でも、
その基準が言語化されていなければ、現場には再現できない。

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強い人の当たり前は、組織の当たり前ではない

上の感覚で詰めても、下の判断基準は育たない。
むしろ、考える前に正解を探すようになる。

この答えなら怒られないか。
この報告なら通るか。
この見込みなら責められないか。
この言い方なら納得してもらえるか。

これでは、営業は顧客ではなく、上司を見るようになる。

顧客の変化を見るべき時間が、社内説明に使われる。
案件を前に進めるべき時間が、詰められないための準備に使われる。
考える力を伸ばすべき場が、責任回避の場になる。

これをマネジメントと呼んでいるうちは、組織は強くならない。

厳しさは必要だ

でも、厳しさとは感情で追い込むことではない。

厳しさとは、基準を曖昧にしないことだ。
厳しさとは、現実を直視することだ。
厳しさとは、未達の原因を個人の根性にせず、構造として見ることだ。
厳しさとは、次に同じ判断ミスをしない状態を作ることだ。

マネジメントできているかどうかは、どれだけ厳しく詰めたかでは決まらない。

見るべきは、
詰めたあとに現場の判断精度が上がっているかどうかだ。

危ない案件を早く出せる空気があるか。
見込みの前提を言語化できているか。
失注リスクを責めずに扱えているか。
次の打ち手が明確になっているか。
同じミスを防ぐ基準が残っているか。

ここが残らないなら、それは指導ではない。
現場を萎縮させているだけだ。


次回は「支えているつもりで、依存を増やしていた」について書く。

助けることと、依存させることは違う。

この違いを間違えると、優しい上司ほど現場の自走を止めてしまう。

営業現場やベンチャー組織で、詰めているのに現場が考えなくなった場面を見たことがあれば、スキやフォローで反応してもらえると嬉しいです。

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