【司書】 ロバート・ヘンライ
アメリカに
若い画家が居た
美しい女性をモデルに
絵を描きたいと思った
女性を愛し
絵を愛していた
まず彼は見る力と
考える力を鍛え直した
其れを言語化する
能力を鍛え直した
絵は理屈であり
スピリットであるから
誰もが其れを知っているから
観察と分析に
一週間かかった
表現の戦略を練るのに
二週間かかった
モデルに相応しい画材を選び
モデルに相応しいポーズを取らせた
(今回はモデルから始まった)
彼は新しい
技法をあみ出した
自分だけが見抜くことが出来る
モデルの本質を的確に表現する為に
ひとつの絵を描く為に
ひとつひとつ
毎回そうやって描いていった
それ以上のこともした
例えば絵でも良い
例えば詩でも良い
例えば音楽でも良い
アートとは
生きることについて
全くそのものであるから
全ての表現は
完成しないだろう
アートとは全てそうなのだ
難しいことを要求している様で
難しいことを要求してはいない
ただ、生きることを良くしてゆくこと
画学生たちよ
初めから巨匠であれ
1923年初刊以来、アメリカの若き芸術家のあいだで熱狂的に読み継がれてきた芸術指南書のロングセラー、その名も『アート・スピリット』。 デイヴィッド・リンチやキース・へリングも影響を受けた名著を詳細な解説(滝本誠)と共に本邦初訳でお届けする。著者のロバート・ヘンライ(1865~1929)は、20世紀初頭のアメリカ・モダニズムアートシーンで活躍した画家。彼は長年美術学校で教鞭をとり、その講義録が本書と元となっている。日本ではもちろん、アメリカでも知名度の低い画家の講義録がなぜ80数年にもわたって現役の芸術書として読み継がれているのか? その秘密は一読して分かる……つまり本書は「美術家志望の若者にとって体中を電気が走るような体験をもたらす書物」であり、「冷静ではいられなくなるような、親身なアジテーションの書」だからだ。「画家本人が自分のアート観、現場での実践的な教えなどを披歴した書物は少なくないが、美術書としてだけでなく、青春の書、人生の書として読み継がれてきたものはほとんどない。当の書き手の画家としての名声がほとんど沈んで以降も書物は残った。そうした意味で『アート・スピリット』は例のない稀有な存在感を示す」(以上カッコ内は解説[滝本誠]より) 今までなぜか邦訳されていなかった<幻の名著>だが、必ずや日本の若き芸術家たちの魂に響く言葉があるにちがいない。
(公式紹介文より)
