赤い瞳

真夜中の赤信号みたいに
ぼくは、服を着て、箸を持ち、
洗剤を着て、挨拶をした
きみの特別になる、魚の骨が刺さる
ぼくが捌いた絶望が、退屈な巾着袋にしまわれて、
妙に綺麗に結ばれて、おままごとの人助けをする
同じ香りの人間が、たくさんたくさんいる、
そんな孤独はない
たったひとりは、ただのひとりであって、
かたまったひとりは、ただの静寂だ。
寝静まる、真夜中の、赤い瞳


あの水槽が濁るまえに

ずっと他人でいたい、と思うのです
この寂れた町は美しかった
知らない ということ、
それは雛鳥が見た空の青
知る ということ、
それは三次元の惰眠

優雅な礼をした渡り鳥は
翌年の春、わたしを忘れます
荷馬車から落ちたこと
素知らぬふりの午後

妬ましくて疚しい
雨降りの跡に羽が沈んで
町が、酷く、退屈になる
虫籠の湿った土のように
もうすぐ、要らなくなる
それなら、
あなたを、知らず、わたしを、知らせず、
ずっと他人でいたい、と思うのです


かたち

わたしが
かたち
になったひ
ゆきがふった
らしい
しろくやわい
まあたらしい
せかいに
おそろいの
あしあとが
ふたつ、ふたつ
ちいさな
あしあとが
ひとつ、ひとつ
まあたらしい
せかいに
傷跡のように

あじさいに
みずをやったひ
グラウンドの
ネットにもつれて
わたしはころがった
ずっとむかし
地球が赤かったこと
しんじていなかったけれど
しんじることにした
りょうひざのかさぶたは
いつしか
くろくなって
わたしを侵略した

もりのおくのひまわり
むかしの戦を
まだみている、らしい
まちのうらのチャイム
ないているのに
きこえない、らしい
三月の水槽にひび
あふれる、
のみこむ、
濁った、水



いいなと思ったら応援しよう!