【エッセイ】#82 仕事に向かうため、毎日していること。これって、異常?
スマホに手を伸ばし、通知を確認する。
ブルーライトは脳を覚醒させてしまうので、寝る前には見ない方がよい。
そんなことを聞きき、逆転の発想で、新しく習慣に取り入れた。
無理やり脳を覚醒させるため、ブルーライトをまどろんだ状態で、敢えて見る。
重たいあたまと、体に、ブルーライトの刺激を叩き込む。
この方法が、適切かはわからない。
だけど、こうして続いていて、朝にきちんと起きられるのだから、それなりの効果はありそうだ。
ベッドの上で、メールをちゃちゃっと確認し、身体を回転させ、転げ落ちるように起きる。
隣ではまだ、妻は寝息を立てている。
昨日も私が寝室に入るときにはまだ、妻は帰宅していなかった。
そんな妻を起こさぬよう、静かに寝室から出る。
私は、靴下やスリッパをはかずにリビングへと向かう。
これも、少し前から試している習慣。
足の裏から直接、フローリングの冷気を感じるためだ。
これで一層、私の脳みそは覚醒していく。
冷蔵庫からウーロン茶を取り出し、マグカップに注ぐ。
朝から、ちょっとテンションが下がる。
烏龍茶の残量がピッチャーの底から、1㎝程度なのだ。
あれほど、「少しだけ残さず、次の人のために作っておいて」と、いっているのに。
まあ、子どもたちからしたら、こんなことも面倒くさく思うのかもしれない。
マグカップに注がれた烏龍茶を一気に飲み干し、煙草に火をつける。
咽喉を急激な冷気が浸食し、さらに、煙によって燻される。
覚醒は、よりはっきりしたものになり、今日のタスクがあたまの中に浮かびはじめる。
それらを否定するため、スマホでSNSのタイムラインを確認する。
みんな早起きだ。
すでに、多くの「おはよう」の投稿が流れている。
私は、それらのいくつかに「いいね」を押すと、浴室へと向かう。
寝間着をすべて脱いだ私のあられもない姿が、洗面所の鏡に映る。
自身の全裸に毎日向き合うのは、最近では苦痛だ。
仕事や家庭の事情に忙しく、筋トレや食事管理ができていない日々が、しばらく続いた。
そのため、筋肉も、脂肪も、ごっそりと落ち、貧弱になった。
そんな、自分を見るたびに自分が今日も嫌いになる。
***
できうる限り、何も考えないようにし、シャワーをあたまから浴びる。
思考をはじめてしまうと、体調の粗探しをはじめ、今日出勤しない理由を探し出してしまう。
だからこそ、何も考えないことを意識し、歯を磨き、洗髪をする。
これで、ほぼ完全にあたまは覚醒。
だが、気を付けなければいけない。
ここで気を抜くと、また、出勤しない「言い訳探し」を私は、はじめてしまう。
意識的に力を込めて、あたまや身体に付いた水滴をタオルでぬぐう。
ここまでくると、完全にあたまは覚醒する。
そのまま、出勤準備をする。
下着と靴下のみの、他人には絶対に見られたくない姿の私が、洗面台の鏡に映し出される。
それだけで、出勤する気が萎えてくる。
いけない。いけない。
この瞬間がもっとも危ない。
鏡に向かっている時間を、少しでも短くしなければならない。
急いでワイシャツとスラックスを纏い、出勤用のリュックにマイボトルと昨日買っておいた、菓子パンを放り込む。
上着に袖を通し、リュックを背負い、左耳だけにイヤホンを差し込む。
ムカつくくらいに、黒光りをしている革靴を履き、きつく靴ひもを結ぶ。
この時点で、思考・思索を巡らせてしてしまえば、今日何度目かの、出勤したくない欲求に支配される。
でも、私は何も考えず、出勤することを最優先にしなければならない。
仕事が、私を求めているのだから。
私は玄関扉に、もたれ込むように身体を預け、ノブを回す。
そうして今日も、クソったれな社畜としての一日がはじまる。
