地下に咲く華 ー黒の女王ー
## 1.
法と秩序が及ばない地下深くに建造された、すり鉢状の秘密闘技場。
天井から吊り下げられた無数の水銀灯が、リングを白日のように照らし出している。
ここは、ギブアップという概念が存在しない、完全決着のデスマッチ・リング。相手が完全に戦闘不能な状態へと破壊されるまで、ゴングが鳴ることはない。
「今夜のメインイベントを行います。 まずは、挑戦者。」
スピーカーから機械的なアナウンスが響き、金網の扉が開かれた。
現れたのは、身長百九十センチ、体重百十キロの均整の取れた肉体を持つ男だった。
彼の名はヤマト。世界的プロレス団体におけるスーパースターで、反則を一切許さず、常にストロングスタイルを貫く「正義の象徴」としてファンから絶大な支持を集めているレスラーだ。
ヤマトの瞳には、怒りと使命感が燃えたぎっていた。小さな団体のレスラーが秘密裏に拉致され、この非合法なリングで使い捨ての玩具のように殺されていることをヤマトは知っていた。この地下闘技場の存在を許せず、自らこの悪の温床を叩き潰すためにマネージャーや支配人の静止を振り切り単身乗り込んできたのだ。
観客たちの嘲笑と下劣な野次に目もくれず、ヤマトはリングの中央で静かに構えをとった。無駄な脂肪のない、鍛え上げられた分厚い胸板と丸太のような腕。己の鍛錬と正義を信じる、揺るぎない立ち姿であった。
「本日の挑戦に対し……今回は特別に闘技場の主宰の1人がお相手いたします。」
リングに緊張が走る。
暗闇の中から、一人の女が姿を現した。
漆黒の長髪を揺らし、装飾を一切排した極めてシンプルな漆黒のビキニスタイルのレスリングウェアを纏っている。彼女の名は、アスカ。
華やかな美貌と、漆黒のビキニからこぼれんばかりの豊かな胸、そして張りのある弾力を持ったヒップライン。
歩を進めるたびに、無駄のない大腿四頭筋が滑らかに隆起し、腹直筋の深い溝が影を作る。肩から腕にかけては、女性特有のしなやかさを残しながらも、鋼のワイヤーを束ねたような恐るべき筋繊維が詰まっていることが、一目でわかった。
それは、「美しさ」と「死」を連想させる、極限まで研ぎ澄まされた暴力の結晶だった。
「あなたが、この野蛮な見世物の主犯か」
ヤマトが、鋭い視線でアスカを睨みつける。
「俺は表のリングの誇りにかけて、お前を倒す。こんな狂った闘技場は、今日で終わりにしてもらうぞ」
正義感に満ちたヤマトの宣言を聞き、アスカは漆黒の瞳を細め、冷たく、そして妖艶に微笑んだ。
「正義……誇り。いいわね、そういう真面目な男が絶望で泣き叫ぶ顔、私、一番好きなの」
試合開始を告げる、鈍いゴングが鳴り響いた。
## 2.
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