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Telecaster「なんちゃってMalcolm」を作ろう~①ボディ総剥離編~ 

1 リフィニッシュ計画発動前夜…

Fender Telecaster American Standard Natural 2004model

【このギターについて】
 モノはFender USAのAmerican Standard(いわゆるアメスタ)の2004年モデルでmodel Noは011-8402-721(model Noの8402はフィンガーボードがメイプル(8400だとローズウッド)、721はボディカラーがNatural finishであることを示す)
 2008年ころに市内のHard〇ffにて中古で捕獲したものである。当時はアメスタの定価が約18万円(USでは$1477.99)くらいで、この個体はたしか8万円くらいだった。ケースや付属品も全て揃っていたが、使用期間の割にはフレットがかなり摩耗していたので、前のオーナーはちゃんとギターを弾きまくる人だったんだろう。

 ボディの素材はSwamp Ash。
 トップ及び裏から見たときの木目は1枚物のように見える。ネット上では、アメスタのナチュラルフィニッシュのアッシュボディは1ピース、という記述が散見され、テレキャスでUSAなら当然1ピースだろう、くらいに思って使い続けていたのであるが、今回の作業開始にあたって詳細に確認をしたところ、テールのストラップピンのあたりにはくっきりと継ぎ目が…ネックポケットにも…どうやら2ピースのボディの表面及び裏面に薄い突板をラミネートしている模様である。
 まあ、3ピースとか5ピースのギターだってあるんだし、そもそも1ピースではないことに15年以上気付いてもいなかったんだから、たいした問題ではない…
 それでは、今回、なぜリフィニッシュ作戦を発動するに至ったのか…まずこちらをご覧いただきたい(閲覧注意)

うわぁ…クリア層がペリペリと…

【クリア層剥離事件】
 今年(2025年)の函館は例年にない暑さだった…アンプを置いてある部屋にエアコンはない。部屋弾きに使っているアンプは、これまたHard〇ffで格安で調達したMarshall Haze15。こいつが、とても15Wとは思えない爆音小僧なのである。部屋の窓を開け放って下手くそなリフをご近所にお聞かせすることは憚られるが、締め切った室内では自分が辛いし、アンプに電源を入れると室温が上がる勢い…そんなわけで、テレキャス君はこの夏をハードケース内で過ごすことになったのである。
 そして、10月のある日のことである。ようやく涼しくなってきたからギターでも触るか、とテレキャスをケースから出してみると、ネックポケット周辺のボディに一筋の線キズが…ん?なんだこれ、こんな傷あったかな?と、傷に爪を当てた瞬間、「ぺりっ」とクリア層が剥がれた!線キズかと思ったのは、クリア塗装に生じたクラック!この夏の保管状態が悪かった?あるいは生産から20年以上経過したポリウレタン塗装の寿命?ラッカー塗装のクラックなら「ウェザーチェックだぜ!ビンテージだろう?!」と強弁できようが、こいつはいったいどうしたものか…大切にしていたUSAが…
 しかも、動揺のあまり、剥がれたところからクリア層をペリペリと剥き続けてしまったため、気が付いたら部分補修できるようなレベルではなくなっている…
 見なかったことにしよう……
 そして、テレキャスは再びハードケースに納められ、その重い蓋はそっと閉じられたのである。

【シンクロニシティ】←誤用
 ハードケースに納められたテレキャスは、そのまま永い眠り(放置ともいう)につくかと思われていたのであるが、2025年12月18日に事件は急展開を迎えることになる。

 多趣味な私であるが、自動車もその一つである。自動車評論家に福野礼一郎さんという方がいる。高校時代のその著述に触れて以来(カーグラフィックだったか、古本屋で買ったTipoだったか…)、その真摯な論評姿勢に魅了され、ずっとその評論を追い続けてきた。氏の「極上中古車を作る方法」は私にとっては聖典であり、同書を参考にしながら何台もの中古車を「極上中古車」にしようとしては挫折する人生を送ってきたくらいである。その福野さんはこの秋にnoteのメンバーシップをスタートした。当然すぐにメンバーシップに登録したのは言うまでもない。過去記事アーカイブを読み込んだり、掲示板をひたすらROMるだけでも十分に楽しい。
 そのメンバーシップで実施された自腹読者プレゼント企画に応募したところ、なんと、電動サンダーが当選したのである!
 近年の記事やメンバーシップ掲示板の情報によれば、福野さんはGibson Les Paulの1956をベースに1959Burst(しかもピックアップは本物のPAFダブルホワイト?!)にコンバージョンしたりしているとのこと。このタイミングでの電動サンダーの当選は、これを活用して己がテレキャスをきっちりリフィニッシュせよ、ということに違いない!!これぞシンクロニシティ(←誤用である)!

 そんなわけで、テレキャスは惰眠から叩き起こされるやネックを外され、ハードウェア類もすべて取っ払われたボディ単体の姿で玄関の前で正座してサンダーの到着を待つことになったのである(勢いに任せて作業をしたため、リフィニッシュ前の直近の画像がない…)。

2 リフィニッシュの方向性の検討

 【脱いだら凄いんです…】
 さて、どうしようか…できればサンダーが到着するまでにポリウレタン塗装の剥離まではやってしまいたいところである。ネックを外してピックガードを外したら…

なんだこの大穴はっ!!

 
なんと、ネックピックアップ部分には、ハムバッカーが入るほど大きなザグリが!なんならセンターピックアップもつけれるね…
 アメスタは、ハードウェアの構成も含め、いわゆるビンテージ系ではなくむしろモダン指向のモデルであるとは認識していたが、ここまで汎用性が高いボディになっていたのか…テレキャスターといえばそのプリミティブな構成が魅力の一つであり、このボディの加工は正直残念な感じである…
 いや、待て!!このネックのザグリ…大きな加工しなくてもネックにハムバッカーが入るんじゃないのか?!

【Keith Richardsのテレキャスター!!】
 異論はあろうが、テレキャスター使いといえばやはりKeith Richards!Keithのテレキャスターといえば、ネックにPAFを逆付けし、サドルをモダンな6wayにしたうえで6弦を取っ払った5弦オープンGのMicawberやMalcolm! 
 手元にあるアメスタは、そのモダン指向がゆえに、最初からトラディショナルな3連ブリッジではなく6wayサドルが標準装備されている!
 「おまえさんがKeithの大ファンだって聞いてたぜ。だからテレキャスターなんだろ?どうせ、いつかはKeith仕様にしたいとか思ってたんだろうよ。その日のためにザグっておいたんだぜ!え?センターピックアップのザグリ?そいつはおまけだ!」とサムアップするFender USA工場のナイスミドルの笑顔が目に浮かぶようである…
 カリフォルニア州コロナの工場からの時空を超えたサムアップに、応えないわけにはいかないだろう。
 リフィニッシュの方向性としては、キースのテレキャスターを目指すことに決定っ!そうこうしているうちに、丁寧に梱包された電動サンダーも自宅に到着!! 

3 作業方法の検討

【アイロンを用いた剥離】
 リフィニッシュの方向性は決まった。電動サンダーも到着した。作業の第一歩は今の塗装(ポリウレタンの分厚いクリア)の総剥離である。
 自然に剥離してしまった部分を取っ掛かりにパリパリ剥がしていくという方法はボディへの攻撃がほとんどないが、いくら時間があっても終わりそうにない。第一、ちょっとやってみた程度でも爪と指へのダメージが大きすぎる。
 調べてみると、紙やすり(耐水ペーパー)や電動サンダーでゴリゴリ剥がしていくという方法や、アイロンで塗装面を暖めて塗膜を剥いていくという方法があるようだ。もう手元には電動サンダーが到着し、自分の出番を待ち構えてくれているが、平日の作業は夜しかできないから騒音の点でどうかなぁ…
 アイロンかぁ…我が家のアイロンは、ピンク色の可憐な見た目にそぐわず、古くはスモークフィルムのフィッティング(古の時代には、車をスモークガラスにするのに自分でフィルムを張ったりしていたのですよ…プライバシーガラス?なんのこと?)、近年ではエフェクター自作の際の基板・アルミケースのエッチングの原稿の貼り付けなど、目的外使用に大活躍している歴戦の猛者である。
 まずはアイロン法を試してみることに決定!

4 剥離作業

⑴ 作業1日目 (2025.12.23)
【ボデイ裏面】
  作業がうまくいかず、やらかしてしまった場合のダメージを最小限にすべく(失敗前提なのがなんとも…)、まずはボディの裏面から作業を開始してみる。

歴戦の猛者の出陣!なぜ鋏の片割れが??

 アイロンの設定はひとまず「高温」「ドライ」に。
 手でパリパリ剝いてしまったところを取っ掛かりにするべく、そのあたりにアイロンを押し当てると、10~20秒でボディと塗膜の間に直径2~3センチの気泡のような浮きがいくつも発生し、塗膜の端っこが少し浮いてくる(端面が浮くと白くなるのですぐわかる)。塗装面が素手で触ると熱いくらいになったあたりで、塗膜の端っこから持ち上げるようにしていくと、分厚い保護フィルム(ビニール)を剥がしているかのように塗膜が剝がれてくれる。暖まった状態の塗膜の感触はまさにビニールであり、これがスルスルと剥がれてくるのはちょっと気持ちいい。
 塗膜とボディ本体を引き離すための補助的な工具として、たまたま机にあったアクリルカッターを使ってみたが、カッターのエッジでわずかに傷が入ってしまった。やはりスクレイパーなどの方が望ましいようだ。作業を開始する前に必要な工具、治具類をちゃんと準備すればよいのに、とりあえず手元にあるもの、手の届くところに置いてあるもので作業を開始してしまうのが若いころからの悪い癖である。このあたりは年齢を重ねるごとに少しずつ改善されてきてはいるのだが、このペースでは、更生より先に寿命が来てしまいそう…

面白いように剥がれる塗膜。しっかし分厚いな…

 ボディ裏面の塗膜は、ものの20分程度で完全に除去できた。剥離作業による傷は懸念したほどはなく、下地処理に苦労するようなことはなさそうである。String Ferrule(ストリングガイド)周囲に少し塗膜が残っているが、無理に追い込まずString Ferruleを取り外したときに処理することに。
 

真っ白素肌が現れる 4弦のString Ferruleが一段低い 

【ボディ前面】 
 想定より短時間でボディの裏面の剥離が終わったので、そのままボデイ前面と側面の作業に入っていく。
 ボディ前面は触った感じだけでも裏面よりもクリア層が厚く強固な感じで、実際にもアイロンを当てる時間を長くしないとなかなか塗膜が柔らかくならない。したがって、裏面の作業に比べると少し時間がかかる。
 この手の作業は慌てるとろくなことはない。深い傷を入れてしまっては後の修正という余計な作業が増える。ボデイの総剥離を経験したことのある悪友からも、塗膜とボデイの表面が一緒に剥がれるといかに悲惨なことになるかという忠告を受けているので、作業継続は翌日以降とした(成長しているな…)。

裏に比べると剥離作業の際の傷が多い…

⑵ 作業二日目 (20251224)
【String Ferrule】
  本日はクリスマスイブ。サンタクロースからうちの子供たちのための下請け業務を依頼されていたため、作業時間はあまりない。
 そのため、剥離作業は行わず、String Ferruleを取り外してみることにする。ネットで調べてみると、ボデイの表側から細いヘックスレンチなどで押し出す(叩き出す?)方法が一般的なようだ。でも、もう時間も遅いしなぁ…ためしに傷が入らないように当て布を巻いたラジオペンチで軽くつまんでみたら、あっさり取り外すことができた。接着剤の痕跡はあるが、いくつかは弦の張力で固定されていたようだ…USA工場のナイスミドルよ、ちゃんと接着しといてくれよ…
 4弦のFerruleが一段下がっているのが気になっていたのだが、取り外してみるとこの1個だけツバ部分が薄かった…ほかの5個はUSA純正として流通しているもの(外径8mm、つばの部分が9.6mm)と同寸法ので、4弦は何かの事情で交換されたのだろうか?
 ビンテージっぽくするならツバ無しにしたいところだが、ツバ無しのブッシュは外径が9.5mmなので、下穴加工が必要になる。ツバが面一になるように彫り込むというのもお洒落だが、1個だけツバが薄いので高さを揃えるのが難しい…1個足りないためにUSA純正ブッシュを1セット調達するのもなぁ…まあ、このあたりは後で考えようか(悪い癖発動!塗装してから加工する方が大変なのに…)

一応接着されていたようだが…

 ⑶ 作業3日目 (20251225)
 【ボディ前面】
 初日の剥離作業では、アクリルカッターを使ったためにボディに小傷が入ってしまった。スモークフィルム用の樹脂製スキージなどがよさそうなのだが、見つからない。そこで、356レプリカのフロアパンやBNR34 のサイドシルの錆取りに使用した金属製スクレイパーをガレージから持ってきた。とりあえずスクレーパーの刃の部分にマスキングテープを3重に張り付けて、ボディ前面剥離作業の再開である。

金属製スクレイパーを投入

 スクレイパーの効果は絶大である。じっくりと時間をかけて塗膜を暖め、スクレーパーを慎重に差し入れると、ごっそりと塗膜が剥がれる。45分くらいでボディ前面と側面の総剥離が完了した。
 作業前に懸念された深い傷の発生やボディの木部が塗膜に持っていかれるような事態は全く生じなかった。ナチュラルフィニッシュでは、木目を見せる必要上、通常の塗装に比べると足付けをしっかりするのは難しいと思われる。それが塗膜の剥離作業にとっては良い方向に働いたのではないだろうか。

総剥離完了!!


5 まとめ

【塗装の重さ ~自動車とギター】
 剥離作業を開始する前に体重計で簡易計測したボディ重量は「1.9㎏」だったのに対し、総剥離後の重量は「1.7㎏」となり、塗装の重量は約200gである。
 これは、剥離後の重量を基準にすれば約12%である。これを車に例えるならば、例えば車重1トンのユーノス・ロードスターを900キロまで減量したのと同じことである。
 実際にロードスターをから100キロ削るには、フロントフードにトランク、ドアなどのボデイ開口部は全てFRP化、シートは2本ともドライカーボン製フルバケットシートに交換、オーディオ、エアコン、内装カーペット類は全て撤去、パワステは捨て、テンパータイヤも降ろし、バッテリは小型ドライセルに…くらい必要だろうか。そして、ここまで軽くなった車の操縦性は別物であろうことは想像に難くない。ドライブデートに使える乗用車からピュアにドライビングを追求できる真のスポーツカーへのメタモルフォーゼである。

 自動車もギターも、そこに働く物理法則は同じである(え?何そのトンでも理論?)。ならば、テレキャスターは、重たいポリウレタンの外套を脱ぎ捨てることで真のテレキャスターに生まれ変わったということか?
 真のテレキャスターとなった我がテレキャスターの弾き心地は、そして出音はいったいどのような変化をみせるのか?乞うご期待である。
 
【塗膜、ボディカラーに関する若干の考察】
 剥離した塗膜は、かなり黄色味を帯びており、クリアイエローとでもいうべきである。
 塗装面に対する日焼けの影響が顕著であることは、剥離前のボディの写真のピックガードやブリッジに隠れている部分とそれ以外の部分の対比から見て取れる。そうすると、日焼けや経年変化によるクリアの黄変ということだろうか。
 しかし、総剥離後のボディの白さとの対比すると、ピックガードやブリッジに隠れていて日焼けの影響がない部分の塗膜も、決して完全な透明ではなく黄色っぽい。
 ボディ用の木材は、それぞれ微妙に色味が異なるはずである。しかし、工業製品としては、ある程度は塗色が安定している必要があるだろう(「Natural Finish」として販売される一本一本のギターがそれぞれ異なる色味だというようなことは考えにくい、という意味)。
 Fenderが「Natural Finish」の塗装をする際、最終的な色味の調整を色付きクリアでやっていたとは考えられないだろうか?
 そういえば、福野さんの「極上中古車を作る方法」でロールスロイスのウッドパーツの色味の秘密の話があった(書籍中では「秘密は秘密のままに」とされていた)が、あれも、木材そのものを染色するのではなく、色付きクリアで全体的にトーンを整えるということなのではないだろうか。
 ギターならば、せいぜいマッチングボデイ(ボデイとヘッドを同一のカラーリングにすること)の場合に色を合わせる程度だが、自動車のウッドパネルはいくつものパネルがあり、少なくともその1台の車内ではすべてのウッドパネルが完全に同じ色調、トーンでなければおかしくなってしまう。木材そのものを染色して色合わせをするよりも、例えば、薄い着色クリアを何層重ねるかで最終的に見える色をコントロールする方がやりやすいように思える。
 このような考察も全く持って的外れなのかもしれないが、思わぬところで「ロールスロイスのウッドパネルの秘密」を再考する嬉しい機会ともなった。

さて、次回は
 「なんちゃってMalcolm」を作ろう~②ボディ塗装編
である。


 


 

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