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覇王別姫・・『国宝』的要素少なめ、芸に呪われた義兄弟

映画「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993)カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作

このところ映画「国宝」の感想がSNSをにぎわしているが、こちらもアマプラで無料で観れるようになったのでとても興味深く鑑賞した。

「覇王別姫」は、古代中国の武将・項羽と愛妾・虞姫(虞美人)の悲恋を描いた京劇の代表的な演目。四面楚歌の中で運命を受け入れた項羽と、彼に付き従い自刃する虞姫の哀話は『史記』に記された史実を元にしている。

京劇の世界で生きる義兄弟=程蝶衣(小豆子)と段小樓(石頭)の絆と運命を描いていて、同じ伝統芸能の世界に生きる義兄弟がモデルという点で「国宝」との共通点はあれど、彼らには血か才かという争点はない。でも華やかな舞台で生きる者たちが芸に呪われているということは同じかも。
中国では京劇は「国(の)宝」どころか卑しい大衆芸能として扱われ、看板役者は権力者の慰み者にされ・・・
中国3000年の悠久の歴史の中で常に時代や権力者の庇護がなければ存続できない悲しい運命を背負っている。
日中戦争、その後の共産主義への転換・・なかでも今までの芸術や文化をすべて否定する「文化大革命」の脅威はすごかった。
チャン・イーモウ監督の「赤いコーリャン」などコン・リー主演映画をいくつか見たが、この映画のコン・リーも程蝶衣(小豆子)と段小樓(石頭)の絆を決裂させるファム・ファタール菊仙の役で、相変わらずすごい女優さんだなと思う。山口百恵と鈴木京香をたして2で割ったような清純派な容貌ながら。

物語冒頭で遊郭の母親が息子(小豆子)を京劇学校に入門させようと連れてくる。
そのときに母が彼の指を切断したのはなぜ?指を落としたらそれこそ神経まで切断してしまって役者になるのに支障をきたすのでは?あれは何のためだったかわからなかったが。

あとで聞くところによると、もともと小豆子には6本指があって(多指症というらしい)。そんな奇形指では京劇の役者になれないと入門を断られたかららしい。それと6本目の指は男茎の象徴らしく、それを切断する(去勢)意味もあったらしい。多指症というのはさほどめずらしいものではなく、『羊たちの沈黙』のレクター博士も原作小説では両手共に均整のとれた六本指だったそう。

それにしても我が子の指を切断するなんてえげつない母親。でも娼婦である母にとってはそれが息子が生きられる唯一の方法だったのかも。
ちなみにこの娼婦を演じていたキレイな女優さんは、上川隆也主演のNHKドラマ『大地の子』(1995)で陸一心(上川隆也)の妻・江月梅を演じていた蒋雯麗さんらしい。

それにしても序盤は厳しい修行-体罰の嵐で今の時代では考えられない(奴隷よりひどい)扱いに眼をそむけたくなる。それでもその辛い下積みを経て舞台で輝く彼らのなんと美しく気高いことか。

レスリー・チャンは2003年4月1日、香港のマンダリン・オリエンタル香港の屋上から転落し死亡した。享年47歳だった。エイプリルフールに伝えられた訃報だったこともあり多くのファンは「まるで嘘のようにこの世を去った」と言っている。
本作が、ゲイである彼自身の人生が劇中の蝶衣の生きざまとオーバーラップし、多くの人の記憶に刻まれる映画になっていることは間違いない。

私はもちろんレスリー・チャンの美貌もさることながら、少年時代の子役も美しい子を選んでいるなぁと思った。

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