毎週ショートショートnote|左右研究
「上の右側にあるから取ってきて」
私は倉庫へ赴き、其れらしきボール箱を取つて來た。
「え?コレ左になかった?
もー。右と左も分からないの?」
と明美は言つた。
私は立腹した。
「向かつて」右、と言はぬから間違うので有り、寧ろ自身の指示の至ら無さを反省して呉れ、と思うた。
まあ仕方が無い。
紙片に三掛三、九分割の野球のストライクゾーン然とした表を記載し、尚且つ、一〜九の番号も添ゑた。
此れで指示受け時に透かさず「此の表で言ふと何番かな?」と聞くのだ。
「真ん中の左にあるから。分かった?左、だよ。」
來た來た。
「此の表で言ふと何番かな?」
「表?何これ?左が茶碗を持つ方!右が箸を持つ方!表とかいいから左と右くらい覚えて」
私は益々混亂した。
私は左利きで有る。
安心感から「向かつて」の有無も聞き逃した。
眞ん中の左、と言って居たやうな?
其れは中段、の事だらうか?
或いは中心よりやや左、やも知れぬ。
抑、何の箱かは教へて呉れぬのだらうか?
腑に落ちぬ儘倉庫へ赴くと、『左右硏究』なる本が有つた。
つい夕刻迄、讀み耽つて仕舞うた。
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