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掌編小説|Amazon(4)

次々と流れてくるダンボールをカートに積み込んで、トラックのルート表示がある所までカートを転がす。
それを半日やって、午後からはピッキングをした。この仕事に好きも嫌いもない。一日中カート積みでもいいし、ピッキングでもいい。本当に別にどっちでもいい。
定時の十八時三十分になったら、優しい感じの音楽が倉庫内に流れる。フロアマネージャーが残業できるかどうか聞いてくる。
俺は今まで一度も残業すると言ったことはない。それなのにマネージャーは今日も聞いてくる。断る。
倉庫から駅まで五分くらいだ。そこから電車に乗る。最寄駅からアパートまでは結構距離がある。
もう辞めようかな、と一か月くらい前から思っている。辞めてそのあと何やるのかも決めていないから何も行動していない。
片側二車線の道に出る。いつもはスーパーに寄って、何がしかの食材を買うのだが、彼女が死んでからは面倒になって寄っていない。
街灯は等間隔に一直線に伸びている。
それは俺を前から照らし、上から照らし、後ろから照らす。街灯は俺が歩くたびにそれを繰り返した。
植え込みが歩道と車道を明確に分けている。そのせいで歩道がやや狭くなってしまっている。向こうから来る人を俺は避けずに歩く。
だが、すれ違うのは女性や老人ばかりで、俺みたいな若い男はやって来ない。
強い男の肩にぶつかって、殴られたりしないかなと期待している。そのとき俺は殴り返さないつもりだ。
そういう幼稚な妄想に甘えながら歩いている。
薄汚いアパートが見えてきた。
この建物はこの界隈で一番汚いと思う。すぐ近くに吉野家がある。どぎついオレンジ色。いい匂いがする。でも寄らなかった。
そろそろ肉を食べないと力が出なくなる頃だろうと思った。ダンボール箱を持ち上げられなくなれば、仕事に行かなくて良くなるんじゃないかと思った。
鉄骨階段をカンカンカンと登る。必要以上に響く。201号室の電気が点いている。その前を通り過ぎる。
俺の部屋の前の植木鉢の土はカチカチで、そこからリウマチの手みたいな枯れたトマトの茎が伸びている。
『202』と表示されたドアのポストからワイヤーが延びていて布製の宅配BOXに繋がっている。俺が最近置いた。
宅配BOXの南京鍵を開けると、中にAmazonのダンボールが入っていた。

部屋の中は誰もいない。電気も点いていない。
ダンボールを開けると2リットルの水ペットボトルが八本入っていた。
その一本を取り出してそのまま飲んだ。
冷凍庫を開ける。訳アリ品、という売り文句のAmazonで買った冷凍食品。それを一個取り出して電子レンジに入れた。
またダンボールだらけになってきた。
ダンボールゴミは資源物だから坂の下中学校まで持っていかないといけない。
俺はダンボールを解体した。部屋が少しだけ広くなったような気がした。
ゴミ捨てに行こうと思った。
ユニクロのルームウエア上下のまま、白のコンバースの踵を踏んづけて玄関に出た。
前にゴミ捨てから戻ってきたときに、彼女が部屋にいたことを思い出した。

(終わり)

#なんのはなしですか

今回は浮世之介さんの記事からインスピレーションを得て書いてみました!👇

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