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毎週ショートショートnote|甘噛み県民

「いてててて!」と西岡さんが叫んだ。
電車は県境を超えていた。西岡さんの頬から血が出ていて全然甘噛みなんかじゃない。俺は甘噛み県民らしき乗客を西岡さんから引き剥がした。頬肉は少しこそげて、彼は小さな悲鳴を上げた。
西岡さんは県民の顎下にナイフを突き立てた。県民は焼鳥のように串刺しになり、白目になって、動かなくなった。
「西岡さん。デッキに出ましょう」と俺は促した。
西岡さんは「ゎがった」と言った。頬が剥がれてうまく発音できないようだ。
『本車両は、甘噛み県に入っております。県民による甘噛みにご注意下さい。まもなく甘噛乳首温泉駅〜、降り口右側です』
「アナゥンスおそぃよぉ〜」と西岡さんが呟いた。
デッキに県民が入って来た。西岡さんのリュックを掴んで、客席に戻そうとしている。西岡さんはナイフを出そうとしたが、県民は次々と西岡さんにしがみ付いてきて、彼は客席に引き摺り込まれてしまった。
『甘噛乳首温泉駅〜』
「仕方がない」
俺は西岡さんを見捨てて甘噛乳首温泉駅で下車した。

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