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【ショートショート】コバルト

小林はいつもコバルトブルーの長袖シャツを着ている。

クラスメイトが何故いつもコバルトブルーなのか尋ねたが、無口な小林は苦笑いするだけだ。
あだ名も最初は「コバやん」だったが、気づいたら「コバルト」になっていた。

底冷えする体育館。
コバルトがスパイクを決めた。
バレーボールにコバルトブルーの跡が付いた。
コバルトは苦笑いしていたが、クラスメイトは
「コバルトスパイクだ!」
と騒ぎ立てた。

そんなある日、
突然、教室にナイフを持った男が乱入して来た。
先生が腕を切られて尻もちをついた。
そこに男が襲いかかる。
その瞬間、拳が男の顔面を捉えた。
コバルトだった。
男はよろめいて、教室の壁に身体を打ちつけた。
逆上した男は持っていたナイフを投げつけた。
ナイフはコバルトの心臓に突き刺った。
みるみるうちに鮮やかなコバルトブルーの血の海が広がった。
武器を失った男は複数の男子生徒に取り押さえられた。
コバルトは病院に緊急搬送されたが、即死だった。

コバルトの検死が行われた。
死因は出血性ショックと断定されたが、
その血液中にヘモグロビンは存在せず、
代わりに鉄イオンがコバルトイオンに置き換わったような分子が酸素を運搬する役割を担っていたことが分かった。

「軟体動物や節足動物はヘモシアニンという銅イオンが中心になった分子が酸素を運んでいるし、
鉄とコバルトは原子番号が隣同士だから作ろうと思えば作れないこともない。」と法医学者は言った。

コバルトは宇宙人や改造人間の類だったのかも知れない。
でもそれ以上に優しくて勇気のあるクラスメイトだった。

教室に溜まったコバルトの血の跡は空気に触れてピンク色に光っていた。

(終わり)

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