毎週ショートショートnote|変身磁器
即身仏の肉叢上人が小型ランチャーで打ち上げられたのは三か月ほど前の話だ。
在りし日の上人は常に即身仏を願っていた。私たち弟子は生きた上人の教えを受けたいと訴え続けた。だが上人は庭先の灯籠を見詰めるばかりだった。私たちの願いも虚しく上人が打製石器で穿った洞穴は完成し、そこにニトリのブラインドが降ろされた。
一度降ろされたブラインドは誰にも上げられない。私たちにできることはブラインドの角度を変えて上人を覗き見するだけである。
ブラインドが降りた日の夕方、上人が喉の渇きを訴えた。小腹が減った、とも言っていたように思う。だがブラインドを上げることはできないのだ。
それから上人は一か月ほど喉の渇きや空腹、さらに暑さや寒さ、スマホが見たいなどを散々訴え続けた挙句に即身仏となった。
私は決して見苦しいなどとは思わなかった。人間というものの真の姿を見せつけ、教えとしたのだと理解した。
宇宙を漂う上人の身体は、強い磁気を発するようになった。つまり上人は所謂『変身磁器』になってしまったのだ。
それは宇宙通信を阻むため、来月私たちはそれの処理に向かう予定だ。
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