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港町の記憶【額に入った夕暮れ】

 「サユミの事が好きだ。」

 踊り場で、俺はユウゴに打ち明けた。

 「サユミ?」

 ユウゴは変な顔をしている。

 「普段女の話なんかしないのに、どうしたんだ突然。」

 「ああ。でも俺はサユミの事が好きなんだ。オマエには言っておきたくて。」

 「誰だよ、サユミって?」

 「…え?いつも三人で遊んでるじゃないか。」

 「俺とオマエと"サユミ"の三人で?
 本当に分からないよ。"サユミ"?…」

 「何言ってんだよ!塾も一緒だし、先週もベイエリアで遊んだだろ。」

 「オマエ勉強のし過ぎだよ。少しは寝ろよ。妄想と現実がごっちゃになってるんだよ。」

 俺は、分からなくなった。

 サユミは港町の中学で、俺たちは山の中に住んでいて。
 「ベイエリア」は間違いなくあって、でもそこにはどう行くか分からなくて。
 サユミの顔も声も髪の香りも、打ち明けるまでは覚えていて。

 俺は…確かに誰かのことが好きだった。

 踊り場に飾られた絵は、港町の夕暮れを描き出していた。



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