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毎週ショートショートnote|勘当ガイドブック
「手を離せ」と父が言った。
僕が手を離すと父はここから落ちて闇の中に吸い込まれるのだろう。
ここから見える窓の数はざっと数えただけでも十枚はある。つまり少なくとも十階の高さがある、ということだ。
僕は父に虐げられて育って来た。
背中の傷が疼く。二の腕には灰皿代わりにされた根性焼きの跡が無数にある。
「勘当だ!」と父が言った。
繋いでいる右腕が痺れる。
手を離したらどんなに楽だろうか。
でも僕は手を離さない。
これが親子の絆だと思うから。
左手のナイフで、すーっ、と引いてみる。
白い脂肪が一瞬見えて、その後に血がどくどくと出た。
「早く手を離せ! いたぶるな。一思いに殺せ!」
「あー。どうしょっかな〜。」
「母さんを殺したのは俺だ! それで良いんだろ!」
小指を切り落としてみると、父は苦痛に呻いた。
「僕たちの苦痛は、こんな一瞬じゃ、なかったんだよ。」
僕は父の手を離した。
父はどこまで落ちるのだろう。
知らない。
だってここはガイドブックのない世界なんだから。
(416文字)
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