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掌編小説|ごみすて(1)

部屋中でAmazonのダンボールが不適な笑みを浮かべている。それらをすべて解体してビニール紐で縛った。古くて狭い六畳間がいくらかマシになった。
俺はユニクロのルームウエア上下に、ダウンコートを羽織り、玄関で白いコンバースの踵を踏んづけたまま、ダンボールを小脇に抱えて、アパートの202号室から出た。
無数のひび割れが走るコンクリートの外廊下。右側には90リットルの灯油タンクとその脇には空のポリタンクがふたつ。真正面には植木鉢があって、カチカチになった土が入っている。そこから枯れたトマトの幹がリウマチの指みたいに伸びている。
腰高くらいの高さの波板はプラスチック製で、完全に紫外線にやられているから触れないようにしている。
錆だらけの鉄骨階段を降りるとカンカンカンと必要以上に響いた。住人は苛立っているだろう。アパートの前は片側二車線の道路で、車がひっきりなしに行き交う。
アパートの脇にゴミ集積場はあるのだが、ダンボールは資源物なので捨てられない。
『ダンボールゴミは坂の下中学校資源物置き場へ 鍵番号→0000』
という貼紙まで貼ってある。
俺はそんなことはどうでも良いからここに捨てさせてほしいと思った。ここの住人はクセの強い奴しかいないが、そのあたりの意見は一致していると思う。まあ、そんなことを考えても仕方ないので資源物置き場まで歩く。
アパートの脇道から裏手の住宅地の方に入ると、細い一本道が真っ直ぐに続いている。軽自動車も入れないほどの狭い道の狭い庭には軽自動車が置かれている。どうやって入れたのかは不明だ。
少しずつ道は坂道になり、最後は石段になっている。そこを登り切ると、坂の下中学の裏門に突き当たる。
裏門は鉄パイプで組んだような扉に自転車用のワイヤーロックがぶら下がっているだけだ。鍵ナンバーを『0000』に合わせると鍵が開いた。中学の敷地に入ってすぐ左に曲がったところに物置が並んでいる。その中で一番古い物置の引き戸を開ける。レールと扉の寸法が歪んでいるため、すぐに扉は脱線して外れた。俺は扉を完全に外して脇に置き、ダンボールを中に放り投げた。最後に回収に来たのはいつなのかと疑いたくなるほどダンボールはうず高くそびえていた。
扉を元通りの位置にはめ直して、中学の敷地から出た。鍵ナンバーを『0001』にしておいた。石段を降りて下り坂を歩く。アパートの裏手に近づいて来る。昼間晴れていた分、放射冷却が芯から寒い。ダウンコートのポケットに手を突っ込む。空を見ても建物の屋根や電柱や電線などがごちゃごちゃして月は見えない。
アパートの正面に回り、鉄骨階段をカンカンカンと登る。201号室の電気はまだ点いている。そういえば鍵を掛けずに出掛けてしまった。
部屋の電気を消したはずなのに、電気が点いている。ドアを開けると部屋の真ん中に置いてあるテーブルの右側に彼女が座っていた。スマホの画面をすりすりしている。
「おー来てたの」と俺が言うと、彼女は俺のことを一瞥して、またスマホの画面をすりすりした。

(終わり)

#なんのはなしですか

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