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gon87
【毎週ショートショートnote】郷に入ったおしゃれ
「拓哉ー。タバコ取ってー。」
拓哉はもう、静香に魅力を感じていない。
*
拓哉がまだ駆け出しだった頃、静香は絶対的なアイドルだった。茶色い髪を立ち上げ、紫の肩パット入りスーツで歌う姿に度肝を抜かれた。
そんな静香に少しでも近づこうと、拓哉も髪を伸ばした。不思議なことに髪が伸びるに従い、拓哉の人気も不動のものになっていった。
「拓哉ー。ワタシと結婚しないのー。」
デコトラの運転席の様なラブホテルで静香は出しぬけに言った。
拓哉はドギマギしてしまった。
静香は先輩で、何か言える立場ではない。
「ワタシと結婚しなよー。」
拓哉は身震いした。
今言える言葉は「はい」か「分かりました」か「畏まりました」か「承りました」の四種類しかない。
拓哉は一番皮肉っぽい「承りました」を選択した。
*
静香は今日も茶髪を立ち上げ、肩パット入りスーツで出掛けて行く。
拓哉は、この世界にはこの世界のルールと言うものがあるのだ、と自分を納得させた。
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