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ダンマパダ136

『ダンマパダ』の教えが、20年という果てしない歳月を経て、逃れられない因果の結末として現れる物語です。

20年目の因果(カルマ)

第1章:2004年、闇と豪雨のなかで

20年前の2004年。まだ世の中に折りたたみ式の携帯電話が主流だった頃、男は若く、そして傲慢だった。
激しい雨が激しくフロントガラスを叩く夜、男は片手で携帯電話を耳に当て、笑いながら通話をしていた。前方の視界などろくに見ていなかった。車が横断歩道に差し掛かった、その瞬間――。
「ドン!」「ガシャァァン!」
鈍い衝撃音とともに、車のフロントが何かを激しく撥ね飛ばした。
ヘッドライトの光の中に一瞬だけ映ったのは、悲痛な声をあげて激しい雨のアスファルトに倒れる、薄茶色の小さな犬の姿だった。
「チッ、ついてねえな……」
男は周囲に誰もいないことを確認すると、携帯電話を握りしめたまま、アクセルを強く踏み込んだ。苦しむ犬を暗闇のなかに置き去りにして、そのまま何事もなかったかのように逃げ去ったのだ。
愚かな者は、自らが犯した悪い行いの重さに、その時は決して気がつかない。

第2章:2024年、20年の月日を経て

それから20年という長い月日が流れた。時代は変わり、折りたたみ携帯はスマートフォンへと姿を変え、街を走る車の形も変わった。
男は白髪の混じる年齢となり、過去の罪など綺麗さっぱり忘れて平穏な日々を送っていた。あの雨の夜の出来事は、彼にとって「なかったこと」になっていた。
ある晴れた日の昼下がり、男がスマートフォンの画面を見つめながら駅の改札を出た時のことだ。
「見覚えがある。あの夜、あの男だ」
背後から、低く鋭い声が響いた。
男が驚いて振り返ると、そこには革ジャンを着た20代の鋭い眼差しを持つ青年・カイトが立っていた。カイトは真っ直ぐに男を指差し、怒りと確信に満ちた声をあげた。
「お前……誰だ? 人違いじゃないか?」
男は動揺し、スマートフォンを持つ手を震わせた。
「人違いなものか。20年前のあの雨の夜、携帯を片手に僕を撥ね、そのまま見捨てて逃げ去った男の顔を、忘れるはずがない」
「何を行っているんだ、20年前だと……!? まさか、あの時の犬だというのか!?」
カイトの言葉に、男の脳裏にあの2004年の激しい雨の夜が、鮮烈に蘇った。カイトはあの夜に命を奪われた犬の生まれ変わりであり、20年の時を経て、男に因果の報いを受けさせるために現れたのだ。
「どうして、今になって……!」
男は激しい恐怖に襲われ、その場から逃げ出そうとしたが、足がすくんで動かなかった。

第3章:魂を焼き尽くす業火

その日を境に、男の日常は完全に崩壊した。
夜、ベッドに横たわると、男の肉体を異常なまでの「熱」が襲うようになった。
「熱い……! 熱い……!」
それは目に見える炎ではない。20年前に自分が犯した罪、すなわち「業(カルマ)」が、内側から魂を焼き焦がしているのだ。
暗闇のなかで男が頭を抱えて悶絶していると、部屋の隅の影が、不気味に揺らめきながら男を見下ろしていた。
「あの犬……! あの夜……!」
浅はかな愚者は自分自身のしたことによって悩まされる。――まさに、火に焼きこがれた人のように。
男は20年前に自分が冷酷に踏みにじった命の痛みを、20年後の今、自らの肉体と精神で完全に追体験させられていた。どれほど時間が経とうとも、悪行の報いからは決して逃れられない。男は消えない業火に身を焦がされながら、果てしない後悔の闇へと沈んでいくのだった。

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