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#60ー元パスタ職人が月52万円——他人のAIに看板を付け替える副業の作り方


ニコさん。元はニューオーリンズの家族経営レストランでパスタを茹でていた人です。プログラミングは1行も書いたことがありません。そんなニコさんが、今は月3,500ドル(約52万円)の継続収入があるソフトウェア事業を、たった7ヶ月で立ち上げました。

今日はこの podcast を聞きました。
The Koerner Office 第301回「12 Simple Online Side Hustles Anyone Can Start」
クリス・コーナーが「ソロでも回せる海外の副業ネタ」を実例ベースで連発する、米国の副業特化podcastです。

ニコさんのカラクリは「自分でゼロから作らない」こと。Apifyという海外サービスから、誰かが作ったスクレイパー(≒Webサイトのデータを自動で集めてくる仕組み)をひとつ"借りて"きて、自分のサイトに看板を付け替えて売る——それだけです。

クリス・コーナー(Chris Koerner / The Koerner Office Podcast)はこの仕組みを「APIアービトラージ」と呼んでいます。直訳すれば「他人の機能を仕入れて、自分の店で売る商売」。倉庫を持たない卸売りのソフトウェア版、と言ったほうが感覚は近いです。

そして、ここがいちばん大事なのですが——この商売、今までは「コードを書ける人だけの特権」でした。それが、AIで自然言語からアプリが組めるvibe codingの登場で、コードを書けない人にも開放されました。窓は2〜3年前に開いたばかり。クリスさんの言葉を借りれば「あと数年で誰もが知る手口になる」、まさに今が動くタイミングです。

「ゼロから作る」は、もう時代遅れ

副業でソフトウェアを作ろうとする人の多くは、こう考えます。

「便利なアプリを思いついた。プログラミングを勉強して、半年かけて作って、世に出す」

しかしクリスさんは、podcastの中でこう言い切っています。

「あなたは何も発明しなくていい。ただ、誰かが作ったものに自分のリムを履かせて、自分の顔を貼るだけです」

リムを履かせる、顔を貼る。要するに——他人が苦労して作った機能の上に、見た目の良い看板を付け替えて売るだけ。それで月数十万円が立つ、というのが今のソフトウェア副業の現実です。

これは「Craigslistの解体」とまったく同じ構図です、とクリスさんは話します。Craigslist——1998年から見た目が変わらない、青いリンクだらけのあのクラシファイド広告サイト。あの1枚のページにある「住居」「人材」「中古品」「マッチング」「議論」の各列が、それぞれZillow(住宅検索)、Airbnb(短期賃貸)、Indeed(求人)、Tinder(マッチング)、Reddit(掲示板)として独立し、巨大企業になりました。

時価総額もすさまじい。クリスさんはpodcast内で「Zillowは120億ドル、Airbnbは800億ドル、Tinderは100億ドル、Reddit IPO時点で70億ドル、Indeedは年商30億ドル超」と話しています。すべて「Craigslistの1ブロック」から生まれた、というのが彼の主張です。

そしてクリスさんいわく、これと同じことが今、AI関連のプラットフォームで起きている——OpenAIもAnthropicも、Apifyも、Zapierも、Clayも、ぜんぶ「機能の詰め合わせ」だと。中の機能をひとつだけ抜き取って、清潔な看板を立てて、特定の人たちにだけ売る。これが2020年代後半のソフトウェア副業の「正解」だ、と。

ニコさんが7ヶ月でやったこと

ニコさんは、もともとレストラン業界一筋でした。コロナ禍に4日間の旅行のつもりでメキシコのプラヤ・デル・カルメンに行き、ノートPCで仕事をしている人たちに出会って衝撃を受けます。「あなたたち、ビーチで働いていて、しかも6桁の年収?」——脳が壊れた、と本人は言っているそうです。

そのまま6ヶ月メキシコに居座って、アメリカに戻ったときには決めていました。レストランは辞める。

最初に就いた仕事はSDR——営業の前段階で、商談アポイントを取る役割。テック企業向けのコールドメールとコールドコール係です。ここでニコさんは、Clay.com というツールに出会います。Clayは、人の名前から会社・LinkedIn・メールアドレスを補完してくれる「営業データの仕入れ屋」のようなサービスです。

「これがテックの力か」と、また脳が壊れます。2024年末に営業を辞め、AIのvibe codingツール(自然言語で指示するだけでアプリが組めるツール群)を触り始めました。本人はClaudeとCodexを使い、コードが詰まったときだけ技術系の友人に助けてもらう体制で、最初のサービスを作ります。

中身はシンプル。Webサイトの検索欄に「テキサスのジム」と入れると、その地域のジムの一覧(電話・メール・住所)がスプレッドシートで返ってくる、というGoogleマップ系のスクレイパーです。バックエンドはApifyの既存スクレイパーをそのまま使い、見た目の画面とStripe決済だけ自分で組みました。

価格は月35ドル(約5,250円)。面白いのは、解約してもクレジットが残るようにした点です。「9ヶ月後にまた使いたくなったら、残りのクレジットでスクレイピングできる」——サブスク疲れの読者心理に正面から答えました。

そして7ヶ月、現在の月次経常収益(MRR)は3,500ドル(約52万円)。広告費はゼロ。営業時代の友人に勧めたら、そこから口コミで広がりました。粗利率は95%超。本人いわく「サポートはほぼゼロ、セルフサービスで回る」状態で、毎月二桁%で伸び続けています。

"他人の機能"を借りられる場所は、もう揃っている

ニコさんの仕入れ先はApifyというサイトです。ここで何が起きているかを少し見ておきます。

Apifyは「アクター(actor)」と呼ばれる、誰かが作ったスクレイパーやAIツールが並んでいるマーケットプレイスです。クリスさんはpodcast内で「30,000以上のアクターがある」と話しています(公式ストアでもInstagram・LinkedIn・Facebookグループ・Reddit・Google Maps・Amazon・TikTokなど、思いつくサービスはほぼ網羅されているのを確認できます)。料金はスクレイプ1,000件あたり数セントから、というレベルです。

つまり、こういうことです。

  • Apify側に月数十〜数百ドル払って機能を仕入れる

  • 自分のWebサイトでは月35〜100ドルで売る

  • 売価ー仕入れの差額がほぼ全部こちらに残る

クリスさんが番組で挙げた具体例を、日本語の感覚に落として並べておきます。すべて「30,000個のうちの1個」のラッパー(≒既存機能の上にかぶせた皮)です。

ジャンル特化のGoogleマップ収集
歯科医院だけ、屋根工事業者だけ、テキサスの中小企業だけ、弁護士だけ——範囲を絞れば絞るほど、B2B営業の人たちに刺さります。月35ドル・クレジット制で売る。クリスさんは「LinkedInの452人のフォロワーに告知するだけで充分」と話しています。

Amazonレビューの自動分析ツール
競合のAmazonページのURLを貼ると、直近500件のレビューを集めて、ChatGPTに通して「褒められた点・不満点・改善要望」をA4一枚にまとめて返す。コストは1レポートあたり数十円、価格は月50〜100ドルか、1レポート19ドル。買い手は数百万社いるShopifyブランドとAmazon物販オーナー。

カスタマーサポート自動返信(Zapierだけで作れる)
ECサイトのカスタマーサポート受信箱に問い合わせが来たら、過去メールとFAQページから学習したAIが下書きで返信する。Zapier代が月29〜59ドル、売値は1店舗月100ドル、粗利95%。「Shopifyオーナーでカスタマーサポート好きな人を見たことがない」というのがクリスさんの主張です。

マイクロインフルエンサー検索
フォロワー5,000〜10万人のInstagram・TikTok・YouTubeアカウントだけを集めて、ジャンル別に整理して売る。フィットネス特化、ママ特化、フード特化など、ニッチを絞るほど刺さる。

ニッチZillow(特定カテゴリの不動産マーケットプレイス)
住宅向けにはZillowがありますが、コインランドリー専用、コインパーキング専用、自販機ルート専用——こういう「Zillow for ◯◯」はほぼ空白です。BizBuySell(米国の事業売買サイト)などから対象カテゴリだけスクレイプして、見やすい一枚絵に並べる。

挙げ始めるとキリがありません。クリスさんはpodcast終盤で「これを5個同時に作って、1個ずつ100ドルの広告で試して、当たったやつだけ伸ばせばいい」とまで言っています。

なぜ「今」なのか——窓は確実に閉まる

クリスさんのpodcastで、いちばん心に残ったのが次の一文です。

「グロースハック(成長手法)の効きやすさは、その手口の寿命と反比例する。よく効くほど、寿命は短い」

例として、2010年のコールドメールは100通送れば15通返事が来た。今は同じ反応を取るのに10,000通必要。2005年のGoogle広告は1顧客あたり2ドルで買えた。今は40ドル。2014年のFacebook広告も2020年のTikTokも、同じ道をたどりました(数字はpodcast内での発言です。広告コスト上昇のトレンド自体は業界レポートでも一致しています)。

そしてvibe coding × APIアービトラージは、その「効きやすさのピーク」が今、来ています。クリスさんの体感では「7〜10年スパンの、まだ2〜3年目」。あと2〜3年は誰でも参入できますが、5年もすれば「ジムの連絡先スクレイパー」みたいなニッチも完全に飽和します。

ここで一度、自分に当ててみてください。あなたが「副業で月5万円ほしい」と思ってから、何年経ちましたか。何回、ChatGPTを開いて、何かいいアイデアないかな、と検索して、結局3時間が溶けて何も残らない、を繰り返したでしょうか。

私もそうでした。アイデアが浮かばないのではなくて、「自分はゼロから作れない」と思い込んでいたから、何も始められなかっただけです。

「他人の機能を仕入れて、自分の店で売っていい」と知った瞬間、必要なのはアイデアではなくて、「どの機能に、どんな看板を付け替えるか」を決めるだけになります。

日本でやるなら、入口はもっと狭くていい

クリスさんの12個のアイデアは、そのまま日本に持ってきても通用するものが多いです。Shopifyオーナー向けのカスタマーサポートAIや、Amazonレビューの自動分析は、日本のEC市場でもそのままハマります。

ただ、日本でやるなら、もうひと押し「ニッチを狭く」したほうが効きます。理由は2つ。

1. 日本では「ジャンル特化」のほうが信頼される

「全業種向けのGoogleマップ収集ツール」より、「美容室向け」「歯科医院向け」「司法書士事務所向け」のほうが、最初の5社を取りに行きやすい。日本のスモールビジネスはツール選定の基準が「同業者が使っているか」だからです。

2. 営業がX/LINEに寄っている

クリスさんは「LinkedInの452人のフォロワーに告知するだけ」と言っていましたが、日本ではLinkedInはまだ弱い。代わりに、対象業種のオーナーがいるXのコミュニティや、業界別のLINEオープンチャットを最初の販路にできます。フォロワー数百人の段階から月数件の問い合わせは取れる規模感です。

たとえば「美容室の競合分析ツール」を作るなら——

  • ApifyのInstagram Hashtag Scraperを仕入れる(数千円/月)

  • 「#美容室 + 地名」で投稿数・ハッシュタグ・人気投稿を週次でまとめる

  • VercelやReplitに置いて、月3,000円のサブスクで売る

  • 美容室オーナーが100人いるXコミュニティで、無料7日トライアルを配る

これで最初の10社が取れれば、月3万円。雪だるま式に増やしていけば、半年で月20万円は射程です。ニコさんと違って広告も組めるので、当たれば伸ばすのも速い。

今日できること

  1. Apify.com を開いて、Storeを30分眺める。 業種で検索して、自分の元職場や、知り合いがいる業界に関わるアクターを5個メモする。これだけで「何の看板を付け替えるか」の半分は決まります

  2. vibe codingツールを1つ触る。 無料で始められるReplit、Lovable、Bolt.new あたりで「シンプルな検索フォーム+Stripe決済」のサンプルを写経してみる。半日で「Webサイトを作る恐怖」が消えます

  3. 販路を1つ用意する。 自分が売りたい相手(美容室オーナー、不動産投資家、フリーランス税理士など)がいるXのコミュニティ、もしくは業種別LINEオープンチャットを3つ探して入っておく。「作ってから売る相手を探す」が、いちばん詰まる順番です

クリスさんは番組の最後にこう言っています。「ニコは金持ちの親もMBAも経験もなかった。ただ、やっただけ。月3,500ドルは、いずれ5,000、10,000、20,000ドルになる。それはあなたも同じです」

私はこの言葉、本当だと思いました。あなたにはできます。私も同じ手口で、副業の柱をひとつ増やすために動いてみます。


このnoteは、英語圏のビジネスPodcastを一次情報として、海外マイクロビジネスの最新事例を日本語に翻訳して届ける場所です。


参考情報

  • Podcast: The Koerner Office Podcast 第301回「Forget Big Apps. That Tiny Tools Are Making Millions」(2026-05-19配信) https://podcasters.spotify.com/pod/show/thekoerneroffice/episodes/Forget-Big-Apps--That-Tiny-Tools-Are-Making-Millions---Ep--301-e3jj76p ホストはクリス・コーナー(Chris Koerner / cofounders.com

  • 言及されたツール: Apify(スクレイパーマーケットプレイス)https://apify.com/Clay.com(営業データ補完)https://clay.com/ / Zapier(ノーコード自動化)https://zapier.com/ / Replit https://replit.com/ / Lovable https://lovable.dev/ / Bolt.new https://bolt.new/

  • 公開市場のデータ: Zillow(NASDAQ: Z)、Airbnb(NASDAQ: ABNB)、Match Group(NASDAQ: MTCH)、Reddit(NYSE: RDDT)の時価総額・売上は各社IRページおよび証券取引所の公開情報による。記事中の数値はpodcast内でクリス・コーナーが言及した数字をそのまま記載

  • ※注: Apifyの「30,000アクター」はpodcast内でのクリス・コーナーの発言。公式ストアではアクターの正確な総数は明示されていない(多数のアクターが並ぶことは確認できる)

  • ※注: ニコさんの月次経常収益3,500ドル・成長率はpodcast内での本人発言(一次ソース未確認)

  • ※ 為替は1ドル≒150円で概算

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