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#59-他人のモノで週末120万円——在庫ゼロ副業の型

他人の家の納戸にしまわれていた古い銀食器ひと揃いが、わずか1週間のネット入札で60万円超に化ける。そして、その家まるごとの片付けに入った副業者には、週末2回ぶんの仕事で約120万円が振り込まれる——仕入れもゼロ、自分の在庫もゼロ、ただ「他人のモノ」を写真に撮ってネットに並べるだけで、です。

今日はこの podcast を聞きました。
The Side Hustle Show 第739回「$5k in a Weekend Selling Other People's Stuff」
副業の実践者を毎週ゲストに招き、ホストのニック・ローパー(Nick Loper)がビジネスモデルを写真撮影や手数料率まで分解していく番組。

ゲストは、ニューヨーク郊外で家まるごとのオークション代行をしているスー・アンティノーロ(Sue Antinoro)。auctionmastery.com で自分のサービスを案内し、eBay歴25年。今は別の仕組みに乗り換えて、自分の在庫を一切持たず、依頼主から預かったモノだけで売上を作っています。

副業で月10万円を稼ぎたい。でも、メルカリで売れる自分の不用品はすぐ底を突く。仕入れる元手もない。在宅で完結したい——そういう人に向けた、「自分はモノを持たず、他人のモノを売り捌く」副業の型を、Podcast 60分の音声と、矢野経済研究所など日本側の一次情報まで突き合わせて整理しました。


「自分でモノを持たない」副業が成立する理由

副業の定番は3パターンです。

  1. 家の不用品を売る(メルカリ)

  2. 仕入れて売る(せどり・転売)

  3. 自分の制作物を売る(ハンドメイド・noteなど)

どれも、自分が「在庫」か「制作物」を持つ必要があります。仕入れには元手がかかり、制作には時間がかかる。だから多くの副業者がここで止まります。

スーがやっているのは、まったく別の流派です。

彼女が動くのは、引っ越しや終活、相続で家を片付けたい人の家。本人や遺族は「もう捨てたい」「業者にまとめて引き取らせたい」と思っている。そこに「捨てる前に、1週間だけネットオークションに通させてください」と提案して入っていく。

預かるのは家にあるモノ全部、ただし運び出さない。現地で撮影して、ネットで売って、買い手が直接取りに来るタイミングで初めてモノが動く。スーは家に2〜3日通って撮影とラベル貼りをし、オンライン上で1週間の入札を回し、最後の引き取り日にだけ立ち会えば、仕事は終わります。

依頼主が受け取るのは、ふだん「廃棄費用」しか出ていかないはずだったモノの売上の半分。スーが受け取るのは、もう半分。お互いの取り分が大きいので、依頼主は「もう全部やってもらえばいい」と判断する。

これが、在庫ゼロ・仕入れゼロで成立する副業の正体です。

数字で見る——週末2回で約120万円

スーが番組で語った直近の数字を並べていきます。1ドル=150円で概算。

  • 直前に終わった2部構成のオークションで、売上は約17,000ドル(約255万円)。家1軒に「2回に分けないと載らない量」のモノが詰まっていた

  • 取り分は依頼主とほぼ半分ずつ。スーの手取りは約120万円。要した工数は「週末2回ぶん」と本人が要約

  • 銀食器ひと揃いがオークションに出ると、ほぼ毎回4,000ドル(約60万円)超で落ちる。先月だけで4〜5セットすべて4,000ドルを超えた

  • 1800年代の信号ラッパ(軍楽用のbugle)1本に、2人の入札合戦が数時間続き、約5,000ドル(約75万円)で決着

  • リンゴ・スター(Ringo Starr)のサイン入りビートルズLPは、額装ごと配送料込みで1,500ドル(約22万円)

  • 古い児童書1冊で5,000ドル(約75万円)に化けたこともある

  • 銀・金製品だけは依頼主への取り分が65%(スーは35%)。それ以外は50/50

「銀食器が60万円」「ラッパ1本が75万円」と聞くと、特別な家に行っているように響くかもしれません。スーは「全然、そんなことはない」と言います。家1軒ぶんなら、ほぼどんな家庭でも5,000ドル(約75万円)の売上は出る——これが彼女の経験則です。

そして、出品はすべて1ドル(約150円)スタート。リザーブ(最低落札価格)は付けない。これがオークションの鉄則です。理由は次の章で。

なぜ「1ドルスタート」で売れるのか

直感的には、1ドル開始は怖いです。「銀食器を150円で落とされたらどうするんだ」と思う。

でも、Auction Ninja というオークション専用プラットフォームには、入札そのものを楽しむ層が常駐しています。スーは番組でこう話しています。

「リザーブを付けると、見た人は『どうせ届かない』と思って入札しなくなる。1ドルから始まると『私が1番手だ』と入札してくれる。そこから2人が競り合うと、勝手に値段は上がっていく」

実際、入札のほとんどは終了直前の数時間に集中する、とスーは言います。終了直前5分以内に入札が入るとタイマーが5分延長される仕組みもあり、「最後の30秒だけ参加しよう」というスナイプ戦略は通用しません。

スーが「リザーブをかけない」と言い切る根拠も具体的でした。ある依頼主が家具5点に最低落札価格を設定したら、結局1つも売れなかった。第2弾オークションで全部を1ドルからに戻したところ、全部売れた。

オークションは、出品者ではなく、買い手の「勝ちたい」という感情で値段が決まる場所。「Aさんが諦めたらBさんが入る」という設計に身を委ねた人が、最終的に取り分を最大化している——これがプラットフォームを使い倒した実践者の結論です。

写真8割、文章2割——副業の時給を決めるもの

スーがこの仕事で1番時間を使っているのは、商品撮影です。番組で繰り返したのもこの一点でした。

「写真をちゃんと撮れるかどうかで、この副業は全部決まる」

具体的にやっていることはシンプル。

  • 撮影は依頼主の家の中で行う。モノは動かさない。光源と背景だけ持ち込む

  • 黒い泡材ボード(ホームセンターで買える)は、ガラスや銀器の背景に

  • 白いボードは、暗い色の器具や置物の背景に

  • 上下左右4方向+アップで合計5〜10枚

  • 欠け・擦れ・キズは必ず接写で1枚入れる(返品クレームを未然に消す)

  • 大きさが伝わりにくいモノは、横に人を立たせるか、メジャーを置く

副業の時給は、写真の腕で決まる。これは、銀食器1セットも、児童書1冊も、ラッパ1本も同じ。商品の良し悪しが分からなくても、写真が良ければ価格は上がるし、写真が悪ければ落札ゼロで終わる。

正体不明のモノに当たったときは、その場で Google Lens を使う。スマホで写真を撮ると、似た商品や型番候補が出てくる。これでタイトルと商品説明を埋める。スーの番組内のひと言が刺さりました。

「分からないモノはAIに聞けばいい。それで30分の調査が30秒で終わる」

なぜ今、日本でこのモデルが効くのか

ここからが、日本側の話です。なぜ「今」、なぜ「日本」でこの仕組みが効くのか。3つの数字で説明します。

1. 終活・遺品整理市場が拡大している

矢野経済研究所が2025年に発表した「終活関連ビジネスに関する調査」では、身元保証と生前整理を合計した市場規模が2025年度に前年比109.7%、約257.3億円と予測されています。さらに、鎌倉新書が同じく2025年に出した別の調査では、遺品整理を含めた広義の市場規模は5,000億円超とされている。

ここでいう「市場」のほとんどは、ゴミ処理・運搬・廃棄物処理の業者が握っています。「個別に1点ずつ売ったらいくらになるか」を真剣にやっている人は、まだほとんどいない

2. ヤフオクの手数料・出品体験が個人向けに整った

ヤフオクは2025年6月の改定で、落札手数料を一律10%に統一しました。LYPプレミアム会員と一般会員で分かれていた料率が一本化され、月額会費を払わなくても出品が継続できます。

加えて、AI出品アシスト機能が搭載され、スマホで写真を撮るとタイトル・カテゴリ・説明文の候補が自動で埋まる。1出品あたり、慣れれば3分。さらに Yahoo!フリマと同時掲載が可能になり、入札に慣れた層とフリマ慣れした層の両方にリーチできます。

ここに、ジモティー(地域の大型家具引き取り)・メルカリ(汎用フリマ)・ハードオフや買取王国(その場で現金化)を組み合わせれば、ほぼ家1軒ぶんのモノは「個別出品」で売り切れます。

3. 多死社会と空き家——タイミングの追い風

厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)」によれば、2024年の年間死亡数は160万5,378人と過去最多を更新。前年比で約3万人増、4年連続の増加です。1日あたり4,400家分の「家の中をどうするか」を考える家庭が生まれている計算になります。

そして、その家族の多くは、東京や大阪で働く息子・娘世代。地方の実家を1週間かけて片付けに帰る時間はない。だから今、業者を呼んで一括で運び出す。でもその「一括運び出し」の前段に、写真と出品の工程を挟んで取り分を残せる人がいたら——という空白が、ここに生まれています。

既存の遺品整理業者と、なぜバッティングしないか

「すでに遺品整理業者がいるのに、副業者の入る余地はあるの?」と感じるかもしれません。ここは、Podcast 内のスーの説明と日本の業者構造を重ねるとよく見えてきます。

既存の業者の収益モデルは、運搬・処分費を依頼主から取ること。買取は「ついでに」やる扱いで、二束三文の古道具屋目線が基本です。家具1点500円、食器1箱まとめて1,000円、というレベル。

一方、副業者がやるのは「個別に1点ずつ、本気で売る」だけ。たとえば、家具1点を1ドル開始でヤフオクに乗せて1週間放置すれば、平均で3,000〜8,000円で落ちる。同じモノを業者が500円で買い取って引き取るのと比べて、依頼主の手取りが6〜16倍になる計算です。

だから副業者は、業者と争うのではなく、業者の手前に立ちます。

  • 不動産仲介と組む:築古一戸建てを売る前に、中身を空にしたい家主が常に存在

  • 介護施設の生活相談員と組む:入居前に荷物の選別がいる

  • 引っ越し業者と組む:運ぶ前に減らしたい依頼が来る

  • 遺品整理業者と組む:処分前に「売れるモノ」だけ抜きたい依頼

スー自身、現地のリアルター(不動産仲介)と、住宅ステージングをやっている女性(売る前の家を装飾する仕事)の紹介で多くの依頼を受けている、と話していました。日本に置き換えれば、これは町内の不動産屋・地域包括支援センター・引っ越し業者・介護施設の生活相談員にあたります。

スー自身が抜け出した1つの「思い込み」

スーは番組で、こう振り返っています。

「私はeBayで25年、自分でモノを仕入れて、売って、保管して、発送して、というのを延々と続けてきた。倉庫スペースと、キャッシュフローと、ずっと戦っていた」

転機は、引っ越しに追われた女友達のひと言だったそうです。

その友達は、新しい家がなかなか見つからず、引っ越し期限が迫っていた。最終手段として「ゴミコンテナを1台借りて、全部捨てるしかない」と泣きついてきた。

スーが言ったのは、こう。

「コンテナはやめて。私に1週間預けて。ネットで売らせて」

結果、捨てる予定だったモノが売れて、コンテナレンタル費を払わずに済んだうえに、現金まで手元に残った。「自分の在庫を持たなくても、他人の在庫で売上は作れる」——25年eBayをやってきた人が、このときようやくその構造に気づいた、と本人が話しています。

「これは、もう自分の家で在庫を抱えなくていいモデルなんだ。仕事中ずっと、保管スペースとキャッシュフローのことを気にしてきた25年に、別れを告げる瞬間でした」

ここに、日本側の副業者にとっての一番の解像度があると思っています。「いいモノを安く仕入れる」が副業の本質だと思い込んでいた25年を、スーは1週間で書き換えた。書き換えた本人が、いま教育コンテンツの準備に入っていて、米国市場でこの「教える側」が広がり始めたばかり、というのが、2026年5月時点の現在地です。

日本側はそれよりさらに手前。スーが10年20年かけて掘った市場が、ほぼ空白のままある

出品して詰む人と、続く人の境目

スーが番組で語った失敗パターンは、副業者にとっての地雷一覧でもあります。

1. 100点に届かない出品で公開する

オークションは「在庫が薄いと、買い手にスルーされる」。スーが言ったのは「最低100点なければ、まず見てもらえない」。家1軒からなら100点は楽勝で集まりますが、自分の不用品だけで始めるのは難しい。だから後述の「集める段階」が要ります。

2. 高値想定の5点を上位に並べない

ヤフオクでも、出品ページの「上位に何が並ぶか」で滞在時間が決まります。スーは Auction Ninja の機能でいう「Pick 5」(おすすめ5点)と、最初の20点の並び順を毎回手作業で並べ替えていると話していました。日本のヤフオクでも、おすすめ枠とサムネ順は出品後に編集できます。「サムネで止めるモノ」を意識的に上位に置くだけで、ページの直帰率は変わる。

3. リザーブを設定する

前述の通り。1ドル開始(日本なら100円スタート)で売れないリスクは小さく、リザーブで売れ残るリスクの方が大きい。

4. 接写・スケール写真を入れない

商品紹介に欠けの写真がないと、必ず後日「届いたら欠けていた」のクレームになる。スーが言うのは「写真をたくさん入れる人が、結局返品率が低い」。

5. シール跡を残す

骨董品やヴィンテージ品の表面に出品ラベルの粘着剤が残ると、価値が落ちる。低粘着のラベルか、紙のタグを紐で結ぶ。番組でスーが「私もアンティーク木箱でこれをやって、自分が欲しかった商品を傷つけた」と笑って告白していました。

始め方の5ステップ

ここまでが「なぜ」と「何が」の話。ここからは「どう始めるか」を、5段階で整理します。

ステップ1:自分の不用品20点で、出品の型を体感する

メルカリかヤフオクで、家にある不用品20点を出品する。撮影 → 出品 → 質問対応 → 梱包 → 発送 → 評価。1サイクルを20点ぶん回すと、1点あたり何分かかるか、どこで時間が取られるかが体に入ります。「写真8割」のリアルさが、自分ごとになる。

ステップ2:100点の在庫を「自分以外」から集める

親族・友人・近所に「処分予定のモノを2週間預けてくれませんか。売れたら半分お返しします」と声をかける。集まらなければ、地域SNS(Nextdoorの日本版、ジモティー、町内会LINE)に「春の片付けで処分予定の品物、無料で査定し、売れたら半額バックでお預かりします」と1行投稿する。

ステップ3:プラットフォームを2軸に絞る

複雑にしない。

  • 一般商品 → ヤフオク+ Yahoo!フリマの同時出品(手数料一律10%)

  • 大型家具・家電 → ジモティー(地域引き取り、手数料なし、配送費なし)

メルカリ・楽天ラクマは「個別出品プラットフォーム」として優秀ですが、複数立ち上げると管理コストが跳ね上がる。最初はヤフオクとジモティーの2軸で十分です。

ステップ4:パートナーを1人作る

副業として継続させるなら、安定的に依頼が来る経路が要ります。最も入りやすいのは、地域の介護施設の生活相談員。「入居前に処分すべきモノが大量に出るご家庭、ありませんか」と聞きにいくと、ほぼ即答で「あります」と返ってくる。

不動産仲介も同様。築古の戸建てを担当している営業に「中身を空にする工程、巻き取れます」と話を通す。1人と組めれば、そこから紹介で2件、3件と広がります。

ステップ5:1ヶ月で1案件を最後まで通す

家1軒、3〜4部屋ぶんの片付けを、撮影 → 出品 → 引き渡しまで完結させる。途中の工程をすべて写真とメモで残しておくと、次の依頼主への提案資料になる。**「家具1点平均で売値5,000円、業者買取なら500円——10倍の手取りに化けた事例」**を1件持っていれば、提案の説得力は段違いです。

今日できること

  • ヤフオクの個人出品ページで、自宅にある「処分予定のモノ」を3点だけ撮影して出品する。Yahoo!フリマと同時掲載のチェックを外さない。1週間の入札と、写真の難しさを1度体験すれば、この副業の「時給はどこで決まるか」が体感で分かります

  • 地域SNS(ジモティー・町内会LINE・Nextdoor日本版)に「春の片付けで処分予定のモノ、半額バックで売り捌きます。査定無料」と1行投稿する。反応が0なら、次は地域の介護施設1軒に電話で同じ提案を伝える


このnoteは、英語圏のビジネスPodcastを一次情報として、海外マイクロビジネスの最新事例を日本語に翻訳して届ける場所です。


参考情報

  • Podcast: The Side Hustle Show 第739回「$5k in a Weekend Selling Other People's Stuff」 ホスト:ニック・ローパー(Nick Loper)/ゲスト:スー・アンティノーロ(Sue Antinoro / auctionmastery.com)。引っ越し・終活・遺品整理の現場でオークション代行を行う米国の実践者へのインタビュー。 https://www.sidehustlenation.com/estate-sales/

  • 公的データ/調査: 矢野経済研究所「終活関連ビジネスに関する調査」(2025年) 身元保証+生前整理の市場規模が前年比109.7%、約257.3億円と予測。 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3807

  • 公的データ/調査: 鎌倉新書調査(2025年)——遺品整理を含む広義の市場規模は5,000億円超と報告。 https://www.zaikei.co.jp/article/20250520/811144.html

  • 公的データ/調査: 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」 2024年の年間死亡数160万5,378人。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/index.html

  • プラットフォーム: Auction Ninja(米国のオークション専用SaaS、月額19.19ドル+落札額の2.35%)。 https://www.auctionninja.com/

  • プラットフォーム: ヤフオク(落札手数料一律10%、AI出品アシスト、Yahoo!フリマ同時掲載)。 https://auctions.yahoo.co.jp/

  • プラットフォーム: ジモティー(地域引き取り、手数料無料の地域マッチング)。 https://jmty.jp/

  • ツール: Google Lens(商品の正体特定、無料)。

  • ※ 為替は1ドル≒150円で概算


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