#58-電話1本13万円・月収195万円——26歳が業界経験ゼロから始めた副業の型
電話1本で13万円、月195万円。26歳の元保険営業マンが、業界経験ゼロから1年半でたどり着いた数字です。
今日はこの podcast を聞きました。
The Koerner Office 第300回「$20K/Month Helping People Spend Money」
クリス・コーナー(Chris Koerner)が、無名の副業オーナーをスタジオに招いて、月収・営業手段・原価まで丸裸にする一人ビジネスのインタビュー番組です。
ゲストは26歳のコリン・ストラウド(Colin Stroud)。屋号は「Go Somewhere」。仕事を一言で表すと、「他人のクレジットカード明細を眺めて、もっと得な使い方を教える」 だけ。たったそれだけで、1年目で年商231,000ドル(約3,460万円)。2026年4月時点で、すでに今年だけで89,000ドル(約1,335万円)を売り上げています。経費は年間40,000ドル(約600万円)程度で、ほぼ全部が利益。
しかも本業を辞めたきっかけは、副業で月13,000ドル(約195万円)を超えた瞬間の「もう本業要らないな」という直感だけです。
「業界20年のプロが副業を商品化する」話ではありません。逆です。業界経験ゼロでも、半日ChatGPTかClaudeを叩けば上位1%になれるくらい狭いニッチを選ぶ。それだけで、価格をつけて売れる。コリンの数字は、その極端な実例です。
「専門家になる」のハードルが、AIで一晩に縮んだ
コリンが副業で扱っているのは「クレジットカードのポイント」です。日本でいう楽天ポイントやANAマイルの最適化に近い。
これは別に、彼が金融工学の天才だから扱えるテーマではありません。本人もこう話しています。
「もし週末を1〜2日、いくつかのポイント系ブログとClaudeに費やしたら、世界の90%、いや99%の人より、クレジットカードのポイントについて詳しくなれます。誰でも今日から始められる」
これは「あなたにもできますよ」というお世辞ではなく、ビジネスとして冷静な観察です。ポイントの世界は、好きな人は本気で詳しい一方で、興味のない人は本当に何も知らない。中間がほとんどいない。だから「ちょっと詳しい人」と「全く知らない人」の知識差が、そのまま課金の根拠になる。
そしてこの構造は、クレジットカード以外にも山ほどある。確定申告のソフト設定、税制優遇のNISA活用、生命保険の見直し、Adobe Creative Cloudの最安サブスク構成、AmazonのFBA手数料の落とし穴、SNS広告の最適化単価、メルカリのカテゴリ別売れ筋——。「知っている人にとっては当然のこと」が、知らない人には10万円払ってでも教えてほしい知識になっている領域は、いまも全領域に散らばっています。
コリンが見せてくれたのは、「専門家として10年積んでから売る」型ではなく、「狭いニッチに張って、半年で90%の人より詳しくなり、その差分を売る」 という、もう一つの型です。
仕組み: 75分の電話1本に、13万円の値段がついている
まず、コリンの商品設計を分解してみます。
メイン商品(コンサルパッケージ)
価格: 875ドル(約13万円)の買い切り
内容: 20分のヒアリング → 45分の事前調査 → 75分の本番コンサル電話 → フォローのメール・テキストサポート
「次の旅行を1回プランニングします」を後日特典として付与
サブ商品(旅行リサーチサービス)
価格: 50ドル(約7,500円)の保証金 + 案件規模に応じて200〜500ドル(約3万〜7.5万円)
内容: 「貯まったポイントで、ヨーロッパ行きビジネスクラスを家族4人分」のような旅程を、最安マイル数で組み立てる作業を代行
90%は外注の2人のリサーチャーが処理
裏で回っている収益源
クレジットカードのアフィリエイトリンク
コリン曰く「プレミアムカードに1人サインアップさせれば、1枚あたり400ドル(約6万円)が入る」
3つを足すと、月13,000ドル超のサイドハッスル(副業)が、年商231,000ドルの一人事業になる構造が見えます。
ポイントは、「875ドルを払う人は、875ドルの価値を電話の75分で求めているのではない」 ことです。彼らが本当に欲しがっているのは、「自分は毎月60,000ドルもカードに突っ込んでいるのに、その1%しか戻ってきていない」という、もう何ヶ月も心の奥に引っかかっていた違和感の解消です。
実際、コリンは番組内で、自分のお父さん(個人開業医)の事例を話しています。月に40,000ドル(約600万円)をローカル銀行の1%キャッシュバックカードに流していた。コリンが Capital One と Chase に分けて2枚体制に組み替えた結果、お父さんは1年で100万ポイント以上を獲得し、ドミニカ共和国のオーシャンフロント・スイート(執事付き)にポケットマネー0ドルで泊まった——というのが事例の中身です。9,000ドル(約135万円)相当の旅行が、ほぼタダ。
875ドルというのは、この体験に対する値札であって、75分の労働対価ではない。これが、コリンが価格を75ドル → 300〜400ドル → 875ドルと、1年で10倍以上に上げられた理由でもあります。
なぜ彼は、業界経験ゼロでこの値段を出せたのか
コリンの経歴は本当にシンプルです。
大学卒業後、保険会社に就職
「あんまり情熱を持てなかった」(本人発言)
その後、非営利の資金調達担当を2社で経験
結婚して、子供が生まれて、もう一つの仕事が必要になった
ここまで、いわゆる「副業のキラキラ起業家」のキャリアはどこにもありません。本人もハッキリ言っています。
「結婚が早くて、すぐ赤ちゃんができて、なんとかしないとと思った」
そんな彼が、なぜクレジットカードに行ったか。きっかけはLinkedIn上で、似たことをやっている人を見つけたことでした。コリンはこう話しています。
「保険の仕事で退屈していたとき、LinkedInでこれをやっている人を見つけた。コーホート教育と1on1コンサルと旅行プランニングをセットでやっていた。バズっていて、みんなが『これは凄い、私こそ必要だ』とコメントしていた。僕は本質的に、その人を完コピしました」
業界経験ではなく、「先に誰かが市場の存在を証明してくれていた」 という事実を確認してから、彼は動いている。これは大事なポイントです。ゼロから市場を作っていない。すでに反応している市場に、1人増えただけ。
そして最初の客は、お父さんです。
「お父さん、これ僕に見せてくれない?」と頼んで、月40,000ドル・1%キャッシュバックの状態を見つけ、家族でやってみた。これが「最初の事例」になり、最初の数字になり、最初のLinkedIn投稿のネタになった。
ストラウドのスタート地点は、ここから先の副業を考えている人にとって、けっこう希望のある場所だと思います。
バイラルポストの正体: 5時間の徒労を、世界に見せた
コリンの転機は、最初の月の投稿でした。
LinkedIn開設からまだ1ヶ月、フォロワーは1,000人もいない。コリンは、ターキッシュエアラインズ経由でユナイテッド航空のハワイ行きフライトを、激安のマイル数で取れる「裏ルート」をたまたま見つけました。
5時間かけて電話オペレーターと粘り、最終的に予約直前まで漕ぎ着けて、結局は予約しないまま電話を切った。そして、その経過と発見を投稿した。
結果、その1投稿で約100,000インプレッション。1,000人いないアカウントで、です。
「あの投稿自体ではほとんど稼げなかった。でも、そこからの数ヶ月、エネルギーが切れずに続けられた。『あ、本当にみんなこれを求めているんだ』と確信できたから」
副業を立ち上げる初期に、何より必要なのは「市場が反応する瞬間」を自分の目で見ることです。コリンの場合、それが「予約しなかった架空の旅行案件」というのが面白い。実際に商売を回さなくても、リサーチプロセスそのものが、ニッチでは「面白いコンテンツ」になり得る。
実際、これは日本でも応用できる発想だと思います。「ふるさと納税で15万円分の返礼品を組んでみた、決済はしないけど」「楽天SPAでポイント22倍を組んでみた」「Adobe CCを最安にしたら年間4万円浮いた」——個人事業主や副業オーナー向けに、こういう「やってみたが買わなかった」シミュレーションの解説を、LinkedInやnoteに毎日載せる。これだけで、コリンが踏んだ道はかなり再現できそうです。
「LinkedInに張る」という、地味だけど効く戦術
コリンの集客は、ほぼ全部LinkedInです。アウトバウンドのDMも、Google広告も、メタ広告も、何もやっていません。
ポストの頻度は、1日1〜2回、週6日。これが1年半続いている。
「アウトバウンドはやったことがない、ゼロ。クライアントは全員、毎日勝手に受信箱に届く」
日本にいると「LinkedInで毎日投稿」と聞いた瞬間、「あれ日本で動いてないでしょ」と一旦シャットダウンしがちです。確かに、日本のLinkedInのアクティブ率は、北米と比べると桁違いに低い。でも、コリンのモデルから学べる本質は「LinkedInで」ではなく、「自分のターゲット顧客がいる場所を1つ選んで、毎日張る」 という挙動です。
日本の副業オーナーや個人事業主にとって、それは多くの場合 X(旧Twitter)になるでしょう。あるいは、Instagramのリール、TikTok、note、YouTube Shorts、最近だったらBlueskyや Threads、業種によってはFacebookグループ。
コリンが言っていた1点は、強烈です。
「クレジットカードについての投稿で、僕は LinkedIn以外には何もやっていない。1個のプラットフォームに張り続けるだけで、紹介と検索流入で、勝手にクライアントが増えていった」
副業を本気で1年続けると、文章のテーマも、語り口も、ストーリーの引き出しも勝手に育っていきます。コリンの場合、最初の数ヶ月は「クレジットカード豆知識」を投稿し、後半は「お父さんが、米島の執事付きスイートに無料で泊まった」みたいな具体的事例の投稿に変わっていった。地味な毎日投稿の中で、自分のコンテンツの当たりパターンが見えてくる。
これが、副業を独立させるときの本当の勝ちパターンです。広告予算ではなく、毎日の積み上げ。
海外の「ポイント文化」と、日本の「ポイント文化」の温度差
日本にも、楽天、Yahoo!、PayPay、d払い、auPAY、ANA・JALマイル、Tポイント、Vポイント、dポイント、Pontaという、海外と同じくらい肥大した「ポイントの森」があります。
そして、海外と同じ問題が、日本でも起きています。ほとんどの人は、自分が貯めたポイントを、損な使い方で使い切ってしまっている。
例えば、ANAマイルを国内線の特典航空券に使うのは、1マイルあたりだいたい1〜2円程度の価値です。一方、同じマイルを国際線ビジネスクラスのプレミアム期に使うと、1マイル6〜8円相当まで跳ね上がります。3〜5倍の差です。これは、Podcast内でコリンがアメリカの事例として話していたのと、構造はほぼ同じ。Web上のマイル系ブログ(陸マイラー、ANAマイル研究所など)でも同じ計算が公開されており、論点としては既に確認できる事実です。
つまり、日本で副業として狙うなら、こういう設計です。
ニッチを「ANAマイル × 個人事業主の経費」「PayPayポイント × フリーランス」など、さらに狭い切り口に絞る
X や note で、自分が試した「貯め方→使い方→いくら浮いた」を、1日1〜2本のペースで投稿する
半年で、その狭いニッチの「上位1%」と思われる立ち位置をX上で取りに行く
プロフィールに「マイル最適化30分相談 5,500円」程度の入り口商品を置く
反応が出てきたら、コリンと同じく75分のコンサル電話 + 1回の旅行プランニングで1.5万〜3万円程度の単価に上げていく
ここまでが、半年〜1年の現実的なロードマップに見えます。
失敗パターンも、いくつか見えています
コリン自身が話していたNGポイントと、海外の同業のサイドハッスル相談記事から見えてくる失敗のパターンを、3つだけ。
「churning(チャーニング)」に手を出す。何枚もカードを発行してはサインアップボーナスを刈り取る手口は、銀行から嫌われる。コリンも「銀行のアフィリエイトで稼ぐビジネスモデルとは噛み合わない」として完全に避けています。日本でも、短期間のカード乱発はカード会社のブラックリスト入りリスクがあり、本人発信の信頼性も損なう。
「ポイントは貯めるが、使わない」客に過剰に時間を使う。Podcast内でコリンも自嘲しています。「875ドル払って、結局1回も旅行を依頼してこないお客さんもいる。最初は嬉しいけど、リピートしてくれた方が、結果的に紹介と評判が増える」。消費者の認知のうち、貯める側ではなく使う側にスイッチさせる教育が、ビジネスを伸ばす。
「AIで全部代替されるんじゃないか」を理由に始めない。コリンはClaudeやChatGPTを毎日使っているし、seats.aero というマイル検索特化のAIツール(ChatGPTがバックエンド)も活用している。それでも、人がやる仕事はちゃんと残っている。「人は最終的に、人と話したい。専門家、ファイナンシャルアドバイザー、医者と話したいのと同じ」と本人が言っています。
今日できること
自分が普段使っているクレジットカード明細を1ヶ月分、開いてみる。「いくら使っているか」「何%還元か」「年間でいくら浮くか」 の3つだけ電卓で出す。これが、コリンが全クライアントに最初にやっている作業の原型です。たぶん、思っているより損していることに気付きます。
X か note で、その計算結果を1本投稿してみる。「個人事業主が楽天カードからAmazonビジネスカードに変えたら、年間○万円浮く」みたいな、自分の事例を1本だけ、まず外に出す。コリンの最初の投稿も「予約しなかった旅行」でしたから、ハードルは思っているより低いです。
このnoteは、英語圏のビジネスPodcastを一次情報として、海外マイクロビジネスの最新事例を日本語に翻訳して届ける場所です。
参考情報
Podcast: The Koerner Office「$20K/Month Helping People Spend Money - Ep. #300」 一人ビジネスのオーナーをスタジオに招き、月収・営業手法・原価まで丸裸にするインタビュー番組。 https://podcasters.spotify.com/pod/show/thekoerneroffice/episodes/20KMonth-Helping-People-Spend-Money---Ep--300-e3jdgfj
ホスト: クリス・コーナー(Chris Koerner)
※ 同番組ホスト クリス・コーナー本人の事業論は #14「副業7つで月100万円——AIを"道具"にした人の稼ぎ方」、#40「AIに飲まれない4つの副業——元手ゼロで月10万円を超える型」で別途取り上げている。今回はゲストの個別事例を深掘りした回。
ゲスト: コリン・ストラウド(Colin Stroud)/屋号「Go Somewhere」
ツール: seats.aero(マイル特化フライト検索) https://seats.aero
裏取りメモ:
月40,000ドル使う個人事業主が1%キャッシュバックから2〜3%還元へ移行できる構造、ポイントの「earn and burn」(貯めたら早く使う)原則は、米国の代表的なポイント系ブログ(The Points Guy、One Mile at a Time など)でも同様の説明が確認できる
売上の具体数値(231,000ドル、89,000ドル、875ドル、40,000ドル経費)は、Podcast内でコリン本人が発言した数字。一次決算資料はないため、※Podcast内での発言として記載
※ 為替は1ドル≒150円で概算
