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#27-元手45万円で始める副業——「小さく当てて次に行く」3つの法則


75社以上を立ち上げて、今も7つの事業を同時に回している男がいる。

クリス・コーナー(Chris Koerner)氏。テキサス州ダラス・フォートワース在住の連続起業家で、現在動かしている事業の合計評価額は約$25million(約37.5億円)。3エーカーの自宅で4人の子供を育てながら、投資家と組んで月に1〜2件のRVパークを買い、世界最大のBuc-ee's非公式オンラインストアを運営し、採用率1%未満のスタートアップ・インキュベーターを動かしている。

しかし彼のスタートは華々しいものではなかった。シングルマザーに育てられ、ビジネススクールの学費を稼ぐために刑務所で働いていた。23歳のとき、大学在学中にiPhone修理店を開業。18カ月で4〜5店舗まで拡大し、地元の競合に売却した。※店舗数はソースにより4店舗と5店舗の記載がある。

ここで彼は全米チェーンを目指す道を選ばなかった。売却して得たキャッシュと、1つの手応えを持って次に進んだ。大きく育てるより、小さく当てて次に行くほうが自分に合う——この最初の成功体験が、その後の75社の原型になる。失敗もそこから生まれる打席の数であり、致命傷を避ければ何度でも振れる。コーナー氏の事業観は、この時点でほぼ決まっていた。


「面白いビジネス」の見つけ方

コーナー氏は毎月4万語のニュースレター・SNS投稿とPodcast「The Koerner Office」で繰り返し語るテーマがある。月間リーチは2,000〜3,000万人。ニュースレター購読者だけで7,000人を超える。※リーチ数・購読者数はPodcast内での発言。一次ソースでは該当データ未確認。

「自分で需要を作るな。すでにある需要を見つけろ」

Texas Snaxがその典型だ。2020年11月、コロナ禍でアメリカ国内のロードトリップが急増し、Buc-ee'sに立ち寄る観光客と、立ち寄れない遠方ファンの落差が一気に広がっていた時期。彼はBuc-ee'sの店舗に足を運び、$3,000分のスナック菓子を買い込んだ。ドメインを取り、Shopifyで開店する。商品写真を撮って並べる。やったのはそれだけだ。派手な資金調達も、事業計画書もない。

ここで背景を補足しておくと、Buc-ee'sはテキサス発の巨大コンビニチェーンで、1店舗あたりの売り場面積が5,000〜7,000㎡にもなる。ジャーキー、ナッツ、自社ブランドのスナックに加えてアパレルや雑貨も扱い、テキサスを象徴するロードトリップの定番として熱烈なファンがいる。ところがBuc-ee'sは自社でECサイトを運営していない。2026年時点で全米54店舗にまで拡大し、2026〜2031年に少なくとも17店舗の新規出店を計画中だが、商品を手に入れるには物理的に店舗へ行くしかない。

コーナー氏はこのギャップに気づいた。テキサスから離れてBuc-ee'sに行けないファンが、すでに大量に存在していた。需要は最初からあった。彼はそれを見つけて、届けただけだ。

初月の売上は$161,000(約2,400万円)。実際にThe Hustleの取材記事でも同規模の売上が確認されている。

2024年時点で、Texas Snaxは月商$250,000〜$300,000(約3,750万〜4,500万円)、累計10万件以上の注文をさばいている。取扱商品は約1,200種類。オンライン市場でのシェアは約90%。利益率は約16%。年間売上は$5million(約7.5億円)に届く勢いで、前年比30〜70%の成長を続けている。※月商と利益率はコーナー氏の発言に基づく。

「ただの転売」に見えて、実はニッチ市場を丸ごと押さえるビジネスだ。Buc-ee'sに行けない人は全米にいる。しかも店舗が増えるほどファンも増えるのに、EC販路は存在しない。ファンが増え続ける一方で、オンラインで供給する人間がいない。その空白を1人で埋めている。


同じ型の繰り返し — LCDcycleの場合

このパターンはTexas Snaxだけではない。コーナー氏が2013年に立ち上げたLCDcycleも同じ構造だ。

iPhone修理店を経営していた頃、壊れた画面はバックヤードに積み上がる廃棄物でしかなかった。処分にも手間がかかる。ある日、リサイクル業者から1本の電話が入る——「壊れたiPhone画面を買い取りたい」。その瞬間、コーナー氏の頭の中で計算式が書き換わる。修理店側にとってのゴミが、別の業界にとっては原材料だった。自分が捨てていたものを、他の誰かは金を払って欲しがっていた。

翌日、コーナー氏はLCDcycleを法人登記した。壊れたiPhone画面を全国の修理店から買い取り、リサイクル部品として卸す事業だ。初月の売上は$28,000。翌月は$86,000。3カ月目には$152,000。わずか17カ月で累計売上$4million(約6億円)を突破し、月商$600,000超のペースに達した。初年度で$2.1million(約3.15億円)、2015年には年商$8.8million(約13.2億円)。最終的に年商約$20million(約30億円)規模に到達し、2019年に売却した。※初年度〜2015年の売上データはNathan Latka Podcast EP 462での発言に基づく。17カ月時点の累計売上と$600K月商はEmpact Showcase 2014公開データおよびコーナー氏公式サイトでの発言に基づく。最終的な年商規模はコーナー氏のニュースレターでの発言に基づく。

ここでも「需要が先」だ。コーナー氏は新しい商品を発明していない。すでにあった取引のギャップに立っただけだ。修理店は壊れた画面を捨てている。リサイクル業者は部品を欲しがっている。その間に立って、両方から手数料を取る。仕組みは単純だが、気づいた人間が最初に動いた。そして一番に動いた人間だけが、17カ月で累計売上$4millionを手にした。


コーナー氏の「型」 — 小さく始める3原則

彼の事業を横断して見ると、共通する考え方が浮かび上がる。この3原則は、75社以上の立ち上げ経験から蒸留されたものだ。

原則1: 需要が先、商品は後

「こんな商品があったらいいな」から始めない。「この人たちは何にお金を使っているか?」から始める。

RVパーク投資もそうだ。キャンピングカーの所有者は駐車場所を探している。その需要は季節を問わず存在する。コーナー氏は自身のRVパーク私募ファンドで累計$50million(約75億円)以上を運用し、過去6年間で約50カ所のパークに関与してきた。直近では、モンタナ州フラットヘッド湖のラグジュアリーRVリゾートを$5.5million(約8.25億円)で取得。これがファンド全体で26番目の物件だ。※取得額と物件数はコーナー氏のX投稿(2024年11月)に基づく。

RVパーク業界全体のキャップレートは7〜14%。とくに地方のバリューアッド物件なら12〜14%が見込める。マルチファミリー住宅やセルフストレージと比べて150〜300ベーシスポイント高い利回りだ。コーナー氏が「なぜRVパークか」を聞かれるたびに答えるのは、需要が季節を問わず存在し、運営コストが低く、初期投資が比較的小さいからだ。ホテルを建てるのではなく、すでにある土地に電源と水道を引くだけでいい。

原則2: 複雑にしない

Texas Snaxにオリジナル商品はない。RVパークにレストランやプールはない。「場所と接続」を売っているだけ。

この原則が最も端的に表れているのが、Fast Tree Careだ。2023年夏にダラス・フォートワースで立ち上げた樹木の手入れ事業で、自社でチェーンソーを1台も持っていない。

仕組みはこうだ。ドメインを取得し、Google広告とローカルSEO、不動産エージェントからの紹介で集客する。問い合わせが来たら見積もりを出し、実際の作業は信頼できる外注クルー4チーム(さらに6〜8チームが待機リスト)に回す。コーナー氏の言葉を借りれば「うちはリードジェネレーション工場にトラックがついたもの」だ。

実績として、初月の売上は$17,000。4週目だけで売上の半分を稼ぎ、純利益は$2,300。対面での見積もりの成約率は77%、電話での成約率は52%。月次で20%ずつ成長し、初の$20,000ウィーク(週売上$20,000)を達成している。※売上・成約率はコーナー氏のX投稿(2023年9月)に基づく。

コーナー氏がホテル業に手を出さないのは、サービスが複雑になるからだ。樹木を切る技術も不要。集客と発注管理だけに集中する。

原則3: 一つで完結させない

75社以上を作ってきた人間が、今も7つの事業を並行で走らせている。一つの事業に人生を賭けない。小さく当てて、回るようになったら次に行く。うまくいかなければ、損失が小さいうちに撤退する。

現在のポートフォリオを見ると、この原則がよく分かる。

  • Texas Snax — EC(スナック・雑貨の転売)

  • RVパーク私募ファンド — 不動産(月1〜2件の買収)

  • CoFounders.com — インキュベーター(月1,100件以上の応募、採用率1%未満)

  • Fast Tree Care — ホームサービス(リードジェネレーション特化)

  • Mining Syndicate — 暗号資産マイニング

  • TKOwners — 起業家コミュニティ(会員750人以上、年会費制)

  • The Koerner Office — メディア(Podcast+ニュースレター)

ジャンルはバラバラだが、構造は同じだ。すでにある需要を見つけ、複雑にせず、小さく始める。CoFounders.comのドメインは$65,000で取得した。コーナー氏いわく「残りの人生で使うアイデアの器として、全額の価値があった」。ドメイン1つにこれだけ投じるのは、人によっては高く見える。だがホテルを1軒建てるよりはるかに安い。そして毎月1,100件以上の応募が来る。


日本で「ギャップ」はどこにあるのか

コーナー氏の事業リストを見ると、Texas Snax、RVパーク、ドメイン投資、樹木の手入れと、一見バラバラに見える。でも共通点がある。全部、特別なスキルがなくても始められる商売だということ。

日本では「副業=スキルを売る」という思い込みが強い。プログラミング、デザイン、ライティング、翻訳。でもコーナー氏のアプローチは違う。スキルではなく「需要と供給のギャップ」を売っている。

日本でも同じギャップは存在する。まだ誰も「翻訳」していないだけだ。以下で具体的に見ていく。

ギャップ1: 地方限定商品のEC販路 — Texas Snax型

Buc-ee'sが自社ECを持たないように、日本にも「現地に行かないと買えない」商品は無数にある。

北海道の六花亭、白い恋人。福岡の通りもん。京都の阿闍梨餅。店舗かその地域でしか手に入らないが、ファンは全国にいる。実際に「北海道お土産探検隊」というECサイトは、この構造を利用して売上の約半分が海外向けになっている。

ポイントは、メーカーが自社ECを本格的にやっていないこと。ふるさと納税の返礼品として出品されているケースはあるが、「いますぐ買いたい」需要に応えるECサイトは少ない。山形の老舗和菓子店・佐藤屋がコロナ禍にネットショップを開設したところ、オープン1時間で100件以上の注文が入った。需要はあった。供給がなかっただけだ。

始め方もTexas Snaxと同じでいい。現地で仕入れ、Shopifyで売る。資金は仕入れの数万円とドメイン代から。在庫リスクを抑えるなら、予約販売から始めてもいい。

ギャップ2: 「場所を貸す」の日本版 — RVパーク型

コーナー氏がRVパークで売っているのは「場所と接続」だけだ。日本に同じ構造はあるか。ある。

日本RV協会認定のRVパークは、2026年2月時点で全国約600カ所。キャンピングカーの国内保有台数は16.5万台(2024年、前年比+1万台)。キャンピングカー販売市場は2023年に過去最高の1,054億円を記録している。車中泊という行動様式が、日本でも着実に広がっている。

しかしRVパークだけが「場所を貸す」ビジネスではない。

駐車場シェアのakippaは累計会員430万人超。スペースマーケットは会議室から撮影スタジオまで時間貸しするプラットフォームとして成長している。空き家は全国に約900万戸。2025年4月施行の建築基準法改正で、延べ床面積200㎡以下の空き家を民泊に転用する規制が緩和された。訪日外国人は2024年に約3,300万人を突破し、2025〜2026年もその勢いが続く。

つまり「使われていない場所」と「場所を必要としている人」のギャップは、日本では拡大中だ。自分で建物を建てる必要はない。すでにある場所を、すでにいる人に届ける。コーナー氏のRVパークと同じ構造だ。

ギャップ3: リードジェネレーション特化のホームサービス — Fast Tree Care型

Fast Tree Careは自社で職人を雇わず、集客だけを担う。日本にこの構造は持ち込めるか。実はすでに部分的に存在する。

「くらしのマーケット」は、ハウスクリーニングやエアコン掃除など400カテゴリ以上、累計出店者10万店以上の国内最大級マッチングサービスだ。個人事業主がサービスを登録し、消費者が直接選んで依頼する。手数料はサービス料金の20%。

ここに「Fast Tree Care型」の隙間がある。くらしのマーケットは「職人がプラットフォームに登録して待つ」モデルだ。一方、Fast Tree Care型は「自分が集客して、職人に発注する」モデル。主語が違う。

日本でやるなら、たとえば「エアコンクリーニング専門」で地域を絞る。自社サイトを作り、Googleのローカル検索で上位を取り、問い合わせが来たら技術のある個人事業主に外注する。実際に、個人でエアコンクリーニング事業を始めて月間売上90万円に到達した事例も報告されている。

ポイントは、自分が技術を持つ必要がないこと。コーナー氏がチェーンソーを持たずに樹木の手入れ事業を回しているように、集客とマッチングに集中する。初期投資はドメイン代とGoogle広告の月数万円から始められる。

ギャップ4: 廃棄物の仲介 — LCDcycle型

LCDcycleの本質は「ある人にとってのゴミが、別の人にとっての商品」という構造だ。日本にも同じ構造は転がっている。

飲食店の廃食用油は、バイオディーゼル燃料の原料として需要がある。建設現場の端材は、DIY愛好家やクラフト作家にとって素材だ。アパレルの在庫品は、リユースショップやフリマアプリで流通する。

いずれも「捨てる側」と「欲しい側」が直接つながっていない。その間に立つのがLCDcycle型のビジネスだ。日本では食品ロス削減のTABETEや、余剰食品マッチングのReduceGoなど、近い構造のサービスが出始めている。だがまだカテゴリは限られている。


3原則を日本語に翻訳する

コーナー氏の3原則を、日本の文脈に読み替えるとこうなる。

原則1(需要が先) → 「何を作ろうか」ではなく「誰が何に困っているか」から始める。地方の特産品を欲しい人、空きスペースを探している人、家の掃除を頼みたい人。需要はすでに存在している。

原則2(複雑にしない) → 自分がすべてをやらない。技術は外注し、集客と仕組みに集中する。Fast Tree Careがチェーンソーを持たないように、エアコンクリーニングの技術は不要。

原則3(一つで完結させない) → 1つの事業に全額を賭けない。小さく始めて、回るようになったら次へ。仕入れ数万円のEC転売から始めて、うまくいったら商品ラインを広げる。失敗しても損失は限定的。

コーナー氏は75社以上を立ち上げた中で「本当に大きくなったのは3社だけ」と認めている。打率は高くない。でも1回あたりの損失が小さいから、何度でも打席に立てる。$3,000のスナック仕入れから始まったTexas Snaxが年商$5million規模に育つ一方で、うまくいかなかった70社以上は静かに畳まれている。そのほとんどは、彼のニュースレター読者にも名前を覚えられていない。

ここが肝心だ。失敗1件あたりの損失を小さく保てるなら、打率の低さは問題にならない。1回勝ったときの利益が、10回負けたときの損失を飲み込めるからだ。この非対称性がコーナー氏の型の核心だ。勝つときは大きく、負けるときは小さい。日本で副業を始める個人にとって、これ以上合理的なアプローチはなかなかない。ホームランを狙って三振を続ける打者より、シングルヒットを繰り返して時々ホームランが出る打者のほうが、打席数では勝てる。


今日できること

自分の地域で「現地でしか買えないもの」を1つ書き出す。それがオンラインで売られていないなら、Texas Snax型のギャップがある。まずはメルカリやBASEで同じ商品が出品されているかを確認するだけでいい。出品があっても少ないなら、そこがあなたの入り口だ。コーナー氏がBuc-ee'sの棚の前で$3,000のスナックをカートに入れたとき、やっていたのはそれと同じレベルの確認作業だった。


参考情報
・Chris Koerner 公式サイト — 経歴・事業リスト
https://chrisjkoerner.com
・The Koerner Office(Podcast)— ビジネスアイデアと小規模事業の深掘り
https://chrisjkoerner.com/podcast
・The Hustle — Texas Snaxのビジネスモデル分析
https://thehustle.co/how-one-man-created-a-multimillion-dollar-resale-market-for-buc-ees-snacks
・Fort Worth Magazine — Texas Snax創業者インタビュー
・Nathan Latka Podcast EP 462 — "$8.8M 2015 Sales of iPhone Repair Parts with CEO Chris Koerner"
https://nathanlatkathetop.libsyn.com/ep-462-88m-2015-sales-of-iphone-repair-parts-with-ceo-chris-koerner
・The Startup Storys — "How Chris Koerner Built 75 Businesses (and How He Finds Business Ideas)"(2026年3月)
https://www.thestartupstorys.com/2026/03/chris-koerner-75-businesses-case-study.html
・コーナー氏 X投稿 — Fast Tree Care初月実績(2023年9月)
https://x.com/mhp_guy/status/1697422359068553589
・コーナー氏 X投稿 — RVパーク投資(モンタナ州フラットヘッド湖の物件取得、2024年11月)
https://x.com/mhp_guy/status/1849092280885383270
・C-Store Dive — Buc-ee's全米拡大の追跡
https://www.cstoredive.com/news/buc-ees-growth-us/696454/
・Loan Analytics — "RV Park Industry Outlook 2025: Data-Driven Trends in Occupancy, Revenue & Cap Rates"
https://www.analytics.loan/post/rv-park-industry-outlook-2025-data-driven-trends-in-occupancy-revenue-cap-rates
・日本RV協会 — RVパーク認定施設一覧
https://www.jrva.com/activity/rvpark/
・ネットショップ担当者フォーラム — 「北海道お土産探検隊」越境EC事例
https://netshop.impress.co.jp/node/2076
※ 数字は各公式サイト・報道記事より。為替は1ドル≒150円で概算。

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