#30-副業月20万円を超えた人が、静かにやめた3つのこと
副業で月5万円まではいく。でも、そこから先が伸びない。
これ、副業あるあるです。ランサーズで案件をこなす。ココナラでスキルを売る。週末にSNS運用を代行する。がんばれば月5万〜10万円にはなる。でも20万円の壁がどうしても越えられない。稼働時間は増えるのに、時給換算では下がっていく感覚すらある。
一方、海外には「会社員をしながら月20万円どころか50万円、100万円を副業で稼ぐ人」がゴロゴロいます。しかも、週80時間働いているわけではない。むしろ稼働時間は減っている。本業を終えた平日夜の1〜2時間と、週末の半日だけで、日本のサラリーマン平均年収を1カ月で稼ぐ人たちが一定数います。
では、彼らは何が違うのか。
答えは「やったこと」ではなく「やめたこと」にあります。月5万円で止まる人と月20万円を超える人の差は、新しいスキルを身につけたかどうかではなく、いくつかの古い習慣を捨てられたかどうかでした。
今回は海外の実践者の発信——Side Hustle NationやThe Hustleなどのニュースレター、Lenny's Podcastでのインタビュー、YouTubeでの本人の語りを直接あたって、「月20万円を超えた人が何をやめたのか」を3つに整理しました。
月20万円の壁は「時間」の壁
副業の収入が頭打ちになる理由は、ほぼ一つに集約されます。
時間を売っているから。
時給5,000円で週10時間働けば月20万円。計算上は成り立ちます。でも現実には、本業が忙しい週は稼働できない。体調を崩せばゼロになる。案件が途切れれば収入もストップする。しかも、副業の時給は競争で下がることはあっても上がることは少ない。クラウドソーシング上では世界中の低価格の労働力と同じ土俵で見積もられるからです。
つまり時給型は、構造的に月20万円前後で天井に当たる設計になっています。壁があるのではなく、設計上そこで止まるようにできている。壁を越える唯一の方法は、「時間で計るモデル」から「成果で計るモデル」に乗り換えること。
海外の副業実践者たちが共通して語るのは、「時給型から仕組み型に切り替えたとき、収入のステージが変わった」ということです。仕組みを1回作れば、その後の1時間は10時間分、100時間分の価値を生むことがある。月20万円を超える人たちは、例外なく、どこかでこの乗り換えをやっています。
やめたこと① 「時間の切り売り」をやめた
Small Business Big AI(Podcast)に出演したベッキー(Becky)氏は、元Big 4(大手会計事務所)コンサルタントで、レイオフをきっかけに独立しました。彼女が選んだのは「フラクショナルCOO」——複数の中小企業の非常勤COOとして、経営業務を請け負うモデルです。
——フラクショナルCOOとは、週に数日だけ来てくれる外部の経営参謀のこと。フルタイムで雇うには予算がない中小企業と、1社に縛られたくない経験豊富な元エグゼクティブの間で、ここ数年アメリカを中心に急拡大している働き方です。
ポイントは、1社に100%の時間を捧げるのではなく、3社と同時に月額顧問契約を結んでいること。AIツール(ChatGPT、Notion AI、Make.com)を駆使して、かつて6人のチームでやっていた仕事を一人でこなしています。Podcastでベッキー氏が語っていたのは、「請求単位を時間から案件に変えた瞬間、月収が倍になった」ということ。同じ時間働いているのに、売るものを変えただけで収入が跳ねたわけです。
ベッキー氏によると、年間$360,000(約5,400万円)の収益を、週35時間の稼働で実現しているとのことです。※Podcast内での発言。一次ソースでは該当データ未確認。
これは「時間を売る」のではなく、「成果を売る」への転換です。何時間働いたかではなく、何を解決したかに対価が発生する。この切り替えが、月20万円の壁を越える最初のステップになっています。
やめたこと② 「自分でやる」をやめた
Side Hustle Nation(Podcast)の創設者、ニック・ロパー(Nick Loper)氏は、2013年から副業情報を発信し続けている人物です。登録者10万人超のニュースレターとPodcastを運営し、これまでに600回以上のエピソードで副業実践者へのインタビューを続けてきました。
ロパー氏がPodcastで繰り返し強調するのは、「成功者は全部自分でやろうとしない」ということ。
記事を書く、SNSに投稿する、問い合わせに返信する、帳簿をつける、請求書を送る、ドメインを更新する——これを全部自分でやっていたら、いくら時間があっても足りません。副業が月5万円で頭打ちになる人の多くは、本業の合間にこの雑務が積み上がって、肝心の「稼ぐ活動」に時間が回らなくなっています。
月20万円を超えた人たちに共通しているのは、「自分しかできないこと」と「仕組みに任せられること」を分けた点です。
AIツールを使えば、記事の下書き、データ分析、メール返信の定型化、請求書発行、顧客対応の一次返信など、かつて人を雇わなければできなかったことが個人でも自動化できるようになりました。完璧でなくていい。60点の自動化でも、自分の時間が空くならそのほうが価値がある。100点を目指して手動でやり続けるより、60点の仕組みを先に作って空いた時間を稼ぎに回すほうが、月20万円の壁は圧倒的に早く越えられます。
やめたこと③ 「すぐ稼ぐ」をやめた
元ZocDoc・PatientPop幹部のジャスティン・ウェルシュ(Justin Welsh)氏は、2019年にコーポレートキャリアを離れ、LinkedInを拠点に一人で発信するソロプレナーの道を選びました。現在は年商約415万ドル(約6.2億円)、利益率約86%、従業員ゼロ、教育コンテンツとニュースレターを中心に事業を回しています。※収益はウェルシュ氏のLinkedIn投稿および各種インタビューで公表されている数字。
ウェルシュ氏が繰り返し強調するのは「最初の12カ月は、誰も聞いていなくても発信し続けろ」というメッセージ。彼自身、最初の半年はLinkedInの反応がほぼゼロだったと語っています。1,000フォロワーに到達するまでに数カ月、最初の有料コースを出すまでに約1年。その間ずっと、無料の知見を淡々と発信し続けていました。
「やめたのは、数字を見て焦ることだ」と彼はPodcastで語ります。見る相手を「今日の反応」から「12カ月後の残像」に切り替えた瞬間、発信の内容が変わり、読者の質も変わった、と。
The HustleやSubstackで成功しているニュースレターも、共通のパターンを持っています。最初の12〜24カ月は広告もマネタイズもせず、読者数が数千〜数万人に達してから初めて課金を始める。読者との信頼残高を先に積み上げる戦略です。
月20万円を超えた人たちは、最初の3〜6カ月を「信頼構築期間」と割り切っています。すぐに稼ごうとしない。まず価値を提供して、「この人は有益だ」と思ってもらう。有料化はその後。
急いで収益化すると、読者や顧客との信頼関係がゼロの状態で売ることになり、結局売れない。遠回りに見える「まず無料で価値提供」が、実は最短ルートだという共通認識があります。
ウェルシュ氏は別のPodcastでこうも言っています。「毎週土曜日にニュースレターを送り続ける。最初は100人、1年経ったら10,000人、3年経ったら100,000人。同じ作業なのに、規模がゼロを1つずつ足していく」。1年目の努力は10万円分にしか見えないかもしれないが、3年目には同じ努力が3,000万円分に変わる。この非線形性を信じられるかどうかが、月20万円の壁のもう一つの正体です。
「時給型 → 仕組み型 → 資産型」の成長パス
これらを整理すると、月20万円を超えた人の多くが同じ成長パスをたどっています。
ステージ1: 時給型
自分のスキルを直接売る。ライティング、デザイン、コンサルティング。即金性が高いが、スケールしない。ここで止まる人が大半。
ステージ2: 仕組み型
一度作れば繰り返し売れるものを作る。有料記事、テンプレート、オンライン講座。月額のサブスクリプションモデルも含まれる。ここで月20万円の壁を越える。
ステージ3: 資産型
仕組みそのものが資産になる。読者リスト、コミュニティ、ブランド。ロパー氏のニュースレターは10万人超の読者という「資産」を持っている。The Hustleは最終的に2021年にHubSpotに買収され、現金分だけで1,720万ドル(約26億円)、株式分を含めた合計ではそれ以上の資産価値を持つまでに成長しました。※金額はHubSpotのSEC提出書類およびTechCrunch報道より。
多くの成功者は、ステージ1で資金と実績を作り、ステージ2で仕組みを構築し、ステージ3で資産に転換しています。いきなりステージ3を狙う必要はない。まずステージ1で「稼ぐ感覚」をつかむところから始められます。
ここで重要なのは、ステージを飛ばさないこと。ステージ1をスキップしていきなりニュースレターを書き始めても、書くべき内容が手元にありません。現場で顧客と接して得た具体的な悩みが、ステージ2の商品設計の素材になり、ステージ3のブランドの中核になる。ステージ1の3〜6カ月は、後から振り返ると副業全体の出発点になっている人がほとんどです。
逆にステージ1で止まる人の共通点は、ステージ2への「乗り換えの一歩」を踏み出さないこと。毎月同じ案件を受け続けると安心感があるのは事実ですが、その安心感が月20万円の壁の正体でもあります。
日本でも同じ構造が使える
この成長パスは、日本でもそのまま適用できます。
日本の副業市場の現在地
総務省の就業構造基本調査(2022年)によると、日本で副業をしている人は約305万人(5年前比+60万人)、副業を希望しているがまだ実行していない追加就業希望者は約493万人(同+93万人)。両者を合わせると約800万人が「副業している/したい」層にいます。パーソル総合研究所の調査では、副業を認める企業は全体の約60%にまで増加しました。コロナ禍以降、働き方改革と人材確保の観点から、大手企業でも副業解禁が一気に進んでいます。
一方、副業の平均月収は5〜10万円が最も多い層です。月20万円を超えている副業者は全体の10%未満とされています。つまり、月20万円の壁は確かに存在し、それを超えることは「上位10%に入る」ことを意味します。しかも、この上位10%の顔ぶれは特別な才能の持ち主ばかりではありません。その多くは、単に早い段階で「時給から仕組みへ」の乗り換えを始めた人たちです。
日本のプラットフォーム比較
| プラットフォーム | ステージ | 向いている人 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| ランサーズ / クラウドワークス | ステージ1(時給型) | スキルを直接売る | 5〜20% |
| ココナラ | ステージ1→2の橋渡し | テンプレートや商品化しやすいスキル | 22% |
| note有料マガジン | ステージ2(仕組み型) | 文章が書ける人 | 約15% |
| LINE公式アカウント | ステージ2→3 | 顧客リストを持ちたい人 | 月額固定+従量 |
| Stripe直接課金 | ステージ3(資産型) | 自前の販売サイトを持てる人 | 3.6% |
手数料の差が長期的な利益を大きく左右します。ステージ1ではプラットフォームの集客力を借りる価値がありますが、ステージ2以降は自前の顧客リストとStripe決済に移行するほうが有利です。ココナラで月20万円売り上げている人が、Stripe直接課金に移すと、手数料差だけで月3万円以上が手元に残る計算になります。年間で36万円。この差を無視して20%の手数料を払い続けるのが、月20万円以上を長く続けられない理由の一つです。
フラクショナルワーク——日本でも可能性がある
ベッキー氏の「フラクショナルCOO」というモデルは、日本でも「顧問」「外部参謀」という形で実現可能です。特に中小企業のDX推進、マーケティング、財務管理は、外部の専門家に月10万〜30万円で依頼するケースが増えています。
日本のフリーランス協会の調査でも、フリーランスの一定割合が「複数社と顧問契約」を主な収入源にしていると回答しています。時給5,000円で週10時間働く「時給型」から、月額20万円で3社と顧問契約を結ぶ「成果型」への転換は、月60万円という収入レベルを現実的にします。しかも週10時間の稼働時間は変わらない。変えるのは請求単位だけです。
副業で言うならば、中小企業のマーケティング顧問を月額5万円で3社、SNS運用のフラクショナル担当を月額8万円で2社——こうした組み合わせで月31万円という売上ラインは、個人の営業活動と既存ネットワーク経由で十分に到達可能です。求人サイト「プロの副業」や「Another works」に登録するだけでも、企業側からの引き合いは増えています。
足りないのは「やり方」の情報です。海外では副業の仕組み化ノウハウがPodcastやニュースレターで毎週のように共有されていますが、日本語ではほとんど流通していません。だからこそ、英語圏の一次情報に一度触れた個人と、日本語の副業本だけで戦う個人の間には、情報の非対称性がそのまま収入差として現れます。
月20万円を超えるための30日アクション
まだステージ1(時給型)にいる人が、ステージ2(仕組み型)に移行するための最初の30日をどう使うか。海外の実践者が共通して勧めるアプローチは以下の通りです。
Week 1: 現在の副業の全タスクを書き出し、「自分しかできないこと」と「仕組み化できること」を色分けする。後者が全体の50%以上なら、仕組み型への移行は十分可能。ここで判定を間違えないコツは、「自分がやった方が早い」ではなく「自分しかできない」で区切ること。この2つは似ているようで決定的に違います。
Week 2: 「仕組み化できること」のうち1つを選び、テンプレート化・自動化する。メール返信の定型文、見積もりのフォーマット、納品チェックリスト、請求書テンプレート等。完璧でなくていい。60点で始める。ChatGPTにプロンプトを1つ用意しておくだけで、毎週1〜2時間は確実に空きます。
Week 3: 仕組み化で空いた時間を「資産になるコンテンツ」の制作に充てる。noteの有料記事、テンプレート販売、ニュースレターの第1号。「一度作れば何度でも売れるもの」を1つ作る。1つ目が完璧でなくてもいい。出すことそのものが、読者からのフィードバックを引き出す装置になります。
Week 4: 作った商品を公開し、最初の1件の売上を目指す。1件でいい。「自分の作ったものにお金を払う人が存在する」という事実が、ステージ2への確信になる。1件売れたあとの動き方が、次の30日を大きく変えます。
今日できること
いま自分がやっている副業のタスクを、全部1枚の紙に書き出す。次に色ペンを1本用意して、「自分しかできないこと」だけを囲む。残りは「仕組み化・外注化できる候補」だ。囲まれなかったタスクが全体の半分以上なら、月20万円の壁は越えられる。まずはそのうち1つだけ選び、今週中にChatGPTかNotion AIに初稿を任せるテンプレートに変える。30分で終わる作業が、30日後の収入を変えはじめる。副業の伸びしろは、新しい案件を増やすところよりも、既に抱えているタスクを捨てるところにある。
海外の流行が日本に届くまで5年——とされた定説は、いま静かに崩れている。このnoteは、英語圏のPodcastや一次情報を日本語に翻訳して届ける場所だ。遅れて知るか、先に知るか。それだけの話。
参考情報
・Side Hustle Nation — 副業実践者のケーススタディとPodcast(ロパー氏運営、2013年〜)
https://www.sidehustlenation.com/
・The Hustle — ビジネストレンドニュースレター(2021年2月HubSpotへ売却。現金分1,720万ドル+株式、Sam Parr氏発言で総額2,000万ドル超)
https://thehustle.co/
・TechCrunch "HubSpot acquires media startup The Hustle"(買収報道、2021年)
https://techcrunch.com/2021/02/04/hubspot-acquires-media-startup-the-hustle/
・Justin Welsh 公式サイト — The Solopreneur Business / The Saturday Solopreneur
https://www.justinwelsh.me/
・ウェルシュ氏 Lenny's Podcast 出演回 — ソロプレナーの構築プロセスを本人が解説
https://www.lennysnewsletter.com/p/a-look-inside-justin-welshs-portfolio
・Small Business Big AI(Podcast)— フラクショナルCOOベッキー氏の事例
・総務省「就業構造基本調査」(2022年)— 副業者数・副業希望者数
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/
・パーソル総合研究所「副業に関する企業実態調査」(2024年)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/
・フリーランス協会「フリーランス白書」(2024年)
https://www.freelance-jp.org/freelance_whitepaper
※ 海外事例の数字は各人物の公式サイト・Podcast・報道記事より。為替は1ドル≒150円で概算。
