【追記】ピノキオのパラドックスをパラドックスたらしめる
前回記事
に補足。この問題はもう2つごく当たり前の前提を加えると、我々が自然に解釈する前提に近づき、かつ本当のパラドックスになる。
前提追加
その1:必要十分条件みたいにする
ピノキオの鼻が伸びるのはピノキオが嘘をついたときのみ、つまり、ピノキオの鼻が伸びたならばピノキオは何か嘘をついている、という条件を加えよう。
$$
G\rightarrow\left(\exists\varphi\; S(\varphi)\land\lnot\varphi\right)
$$
その2:ピノキオの口はただ1つ
彼は口が1つしかないので、一度に述べられることは1つしかない ––– 今回の場合は、「ピノキオの鼻は伸びる」以外のことは同時に発言していないこと ––– を保証する必要がある。
$$
\forall\psi\forall\chi\;S(\psi)\land S(\chi)\rightarrow \psi=\chi
$$
こうすれば、直感の通り、命題は矛盾を導く。
$$
\begin{aligned}
& S(G) ,\quad\forall\varphi\; \left(S(\varphi)\land\lnot\varphi\rightarrow G\right),\\
& \qquad G\rightarrow\left(\exists\varphi\; S(\varphi)\land\lnot\varphi\right),\quad\forall\psi\forall\chi\;S(\psi)\land S(\chi)\rightarrow \psi=\chi\\
& \qquad\qquad \vdash\quad\bot
\end{aligned}
$$
証明図も記しておこう。証明過程は一意ではないこと、また、独自に = の除去規則を作っていることに注意。

爆発律
自然演繹では、証明において、前提の一部を使わずに推論することも可能である。だから、今の前提で以下の証明図を得ることもできる。

一方で、以下の証明図を得ることもできる。

これらの証明図はそれぞれ、以下のことを主張する。
$$
\begin{aligned}
& S(G) ,\quad\forall\varphi\; \left(S(\varphi)\land\lnot\varphi\rightarrow G\right),\\
& \qquad G\rightarrow\left(\exists\varphi\; S(\varphi)\land\lnot\varphi\right),\quad\forall\psi\forall\chi\;S(\psi)\land S(\chi)\rightarrow \psi=\chi \\
& \qquad\qquad \vdash\quad G
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
& S(G) ,\quad\forall\varphi\; \left(S(\varphi)\land\lnot\varphi\rightarrow G\right),\\
& \qquad G\rightarrow\left(\exists\varphi\; S(\varphi)\land\lnot\varphi\right),\quad\forall\psi\forall\chi\;S(\psi)\land S(\chi)\rightarrow \psi=\chi \\
& \qquad\qquad \vdash\quad\lnot G
\end{aligned}
$$
・・・気づいただろうか。同じ前提から全く逆のことが導けてしまうのである。
自然演繹では、実は、矛盾 $${\bot}$$ を導く前提からは、任意の論理項が導ける、とされる。
言い換えると、矛盾 $${\bot}$$ からは何を導いても良いということで、しばしば爆発律と呼ばれる。
例えば、今の前提から、「キリストは実在する」を導いても良い。
自然演繹のもう一つの限界はここで、矛盾に脆弱なのである。
矛盾に満ちた現実世界では、理屈というものは使いようでしかないのかもしれない。
とかまたテキトーなこと言って締めてみましょうか。

