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『星ヨミ樹の世界』 第2話 星ヨミの残骸場

#創作大賞2026  #ファンタジー小説部門

第2話 星ヨミの残骸場

星ヨミの森をナビエルは歩いていた。
腕の中には小さな少女フィオナ。

フィオナは、少しだけ顔を上げた。

「……どこへ?」

ナビエルは答えない。
ただ、まっすぐ森の奥へ進んでいく。
やがて、森がひらけた。

そこは、奇妙な場所だった。
光を失った鉱石のようなもの。
砕けた透明の球体。
星の名残のような白い欠片。
それらが、無造作に
降り積もっているように見えた。

フィオナは小さくつぶやく。

「……ここは?」

ナビエルはようやく口を開いた。

「星ヨミの残骸場」

フィオナは、あたりを見回した。
積もった残骸のあいだには、
まだかすかな光を残したものもある。
けれど、それはほんの一部だけだった。

ナビエルは、フィオナをそっと下ろした。
足裏が触れた途端、ひんやりとした。

フィオナはぼんやりとナビエルを見つめた。
ナビエルはそのまま背を向ける。

「星ヨミ樹の根元から
これだけ離れていれば、
さっきの反応は弱まるはずだ」

それだけ言って、歩き出す。
そのとき、後ろで小さな音がした。

パキ、パキ。
ナビエルは足を止める。

振り返ると、
フィオナがふらつきながら
立ち上がっていた。
そのまま、残骸場の奥へ歩き出す。
小さな足が、白い欠片を踏む。

その瞬間――

足元の欠片のうち、
いくつかがふっと灯った。

ナビエルは無言のまま、観察していた。

フィオナは、また一歩進む。

また、足元の欠片が
ゆっくりと淡く輝きはじめる。
まるで、小さな星が息を吹き返すように。

けれど、残骸場のすべてが
光りだすわけではなかった。
反応するのは、彼女の近くにある、
ごく一部の欠片だけだった。
眠ったように光を失っていたものが、
彼女のそばでだけ、
かすかに息を吹き返している。

フィオナは、
そのことに気がつかず、
ただ、何かに引かれるように、
さらに奥へ進んでいく。

その先には、崖があった。
底は見えない。
白い殻片や星の欠片が、
音もなく落ちつづけている。

フィオナは、その崖を見つめた。
小さくつぶやく。

「……ここなら」

一歩。
また一歩。

「やっと、消えられる」

ナビエルの青い瞳が、わずかに見開かれた。
フィオナの足元で、
淡い光がまたひろがった。

そして、フィオナの体が前へ傾いた。
その瞬間、ナビエルの体が音もなく動いた。

ただ、空気を滑るように、
フィオナのそばへ移動する。

次の瞬間、
フィオナはナビエルの腕の中に
抱き戻されていた。

「……え?」

フィオナは驚いたように
ナビエルを見る。

美しい白銀の髪が、
さらりとフィオナの頬に触れた。
ナビエルは腕の中のフィオナを見つめる。

「……君は何者だ?」

少しの間をおいて、
ナビエルは言った。

「……面倒だ。
だが、少し調べる必要がありそうだ」

ひどい言い方だった。
けれど、フィオナを抱える腕は
少しの荒さもなかった。

フィオナは息を止めた。
ナビエルの胸に触れた瞬間、
かすかに懐かしい香りがした。

白銀の樹の気配。
星の胞子の名残。
夜明け前の空にひそむような、
透明で凛とした香り。

胸の奥が、ほんの少しだけ痛くなる。
どうしてだろう。
知らないはずなのに、
どこか懐かしい感じがする。

ナビエルは何も言わないまま、
フィオナを抱いて森の奥へ歩き出す。

その先にあったのは、
天文台のような、
ドーム型の建物だった。
天井は高く、
大きな窓からは星ヨミ樹が見える。

ナビエルの住処であり観測舎だった。

扉の向こうで、
小さなふたつの影がひそひそ話していた。

白い毛に、
マリンブルーの瞳の兎。
シロル。

灰色の毛並みに、
エメラルドグリーンの瞳の猫。
ミロ。

「エル、帰ってくる!」
シロルが長い耳をぱたぱたさせる。

「……何か抱えてる」
ミロがしっぽを揺らした。
扉が開いた。

ナビエルが、無言で入ってくる。
腕の中には、小さな少女。

「えっ」
「……」

シロルとミロが、同時に目を見開く。
ナビエルは短く言った。

「星ヨミ樹の根元で拾った」

沈黙。

「えええええ!?」

第3話「二杯のスープ」に続きます。

♪おまけ♪
第2話「星ヨミの残骸場」イメージイラスト

残骸場の崖の縁へ進んだフィオナを、
ナビエルはこの世界へ引き戻した。

※物語の設定をもとに、 AIを活用して制作しました。
世界観・設定・監修:Lunavi / minamiayako

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