完璧なマニュアルは、誰の「面倒」を避けるためか
「あの件、どう進めればいいですか?」 「イレギュラーが起きたんですが、どうしますか?」
忙しいときに限って飛んでくる、若手からの質問。
「前にも似たようなこと教えたよね……」 と、心の中で深いため息をつきながら、 結局、手取り足取り答えを教えてしまう。
そして週末にこっそり、完璧なFAQとマニュアルを作り込む。
「これさえ見れば、もう聞かれないはず」 そうやって先回りして準備を整えながら、 ふと、言語化できない虚しさに襲われることがあります。
「私、なんでここまでやってるんだっけ?」
「失敗してもいいから自分で考えて」と言いながら、 本音を言えば、いちいち教えるのが面倒くさいのです。
待つのはしんどいし、尻拭いをするのも自分。 だから、彼らが立ち止まらないように答えを全部用意してしまう。
これって、超高性能な「カーナビ」と同じだと思いました。
目的地を入力すれば、迷わず最短ルートで連れて行ってくれる。 運転手は何も考えなくていいし、 助手席の私も、いちいち道を聞かれなくて済む。
でも、カーナビに頼り切って運転した道は、 いつまで経っても自力で走れるようにならないんですよね。
登山の世界で言えば、 「ヘリコプターで山頂まで連れて行く」ようなものです。
確かに、ケガもさせず、最速で絶景を見せてあげることはできる。 でも、自分の足で岩場を登り、息を切らして道を探した経験がない人に、 「次の山は自分で登ってね」と言っても、登れるはずがありません。
心理学には「認知的倹約家(にんちてきけんやくか)」という言葉があります。
少し難しい響きですが、要するに 「人間はできるだけ脳のエネルギーを使わず、ラクをしようとする生き物だ」 という意味です。
「自分で考えるのが面倒な部下」と、 「いちいち教えるのが面倒な上司」。
実はどちらも、「ラクをしたい」という全く同じ心理で動いていたんです。
私がFAQを充実させていたのは、部下の成長のためではなく、 ただ自分の面倒を省きたかっただけなのかもしれない。 その事実に気づいたとき、少しだけ恥ずかしくなりました。
効率を求めて先回りすることは、決して悪いことじゃありません。 でも、その「親切すぎるカーナビ」が、 結果的に相手から「道を覚える機会」を奪っているとしたら。
あなたが今、良かれと思って用意しているその答えは、 一体、誰の「面倒」を避けるためのものでしょうか?
あなたはどうですか?
えっ!?それなら、どうやったらもっと早く新人教育ができるのだろうか?
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