#08 どん底で気づいた「書くこと」の力
♦ 鼠径部の動脈からカテーテルを入れ,
造影剤で脳の裏側まで調べる検査
一人でトイレに行くことさえ許されない、不自由で心細い毎日。
そんな中で提案されたのは、鼠径(そけい)部の動脈からカテーテルを入れ、造影剤を使って脳の裏側まで詳細に調べる検査だった。
検査時間は1時間以上。
説明を受けるたび、胸の奥がじわじわと冷えていく。
同意書を前にした私は、ペンを持ったまま動けなくなっていた。
♦ 絶望と希望の間で揺れる心
合併症。
後遺症。
血管損傷。
最悪の場合――。
淡々と説明される言葉が、頭の中で重く反響していた。
不安で心がポキリと折れそうになる瞬間が何度もあった。
「私は生かされたんだ」
そう自分に言い聞かせる。
急変して死ぬわけにはいかない。
絶対に、生きなければいけない。
その一方で、
もしこのまま悪化して、家族に一生迷惑をかけ続けることになったら――。そんな弱気な考えが、ふと頭をよぎることもあった。
♦ それでも、私は書き続けた
そんな「生」と「死」の境界線のような時間の中で、
私を繋ぎ止めてくれていたものがあった。
息子が買ってきてくれた、計算ドリル。
そして、震える手で続けた字の練習だった。
たとえ鏡文字になっても。
一桁の計算に指を使っても。
それでも私は、書くことをやめなかった。

書くことをやめたら、
自分自身まで消えてしまいそうで怖かった。
つづく
