花びらを【#シロクマ文芸部】
花びらを素手でキャッチする。
9回裏、満塁で迎えたチャンス。2階席に飛び込んできたその打球を、ぼくは離さなかった。
そっとひらいた手の中で、笑ったようにひかった。
そんな昨日を思い出して、白い春を、自転車で駆けていく。
湧きあがる歓声が、頭から離れない。
こころが、軽々とペダルを踏みつづける。
車輪に春の匂いが絡みつく。ぼくはスピードをゆるめない。
ここを曲がれば海が見えるんだ。
澄みきった青、大歓声のさざ波。白い鳥が、斜めに滑空してくる。
すぐに、向かい風が吹いてくる。
ぼくにはそれが、愛しいやって思えるんだ。
ペダルを踏みつづける。心地いいリズム。
あと、少し、もう、少し。どんどん進んでいく。
こころには、リズムがあって、
リズムには、花束がある。
砂浜が見えてくる。
誰かの足跡がどこまでもつづいている。
そういえば、球場のグラウンドにも同じ足跡があったな。
お互いを探しているのかもしれない。
遠くから見たらぼくは貝殻だよ。
もし見つけたら、それを小瓶に入れてくれないか。
波に浮かんで、ゆらゆら漂う。
当て所なく、岩礁にぶつかったり、カモメにつつかれたりする。
胸の鼓動をバットが打って、
太陽がボールに見えたと同時に、花びらが舞いこんできたりもする。
だからぼくは、ここに居るんだと思った。
