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あの花火が、私たちの始まりであり終わりだった

これは、夫婦最後のデートの話。

暗闇のなか、
勢いよく打ち上げられた時のキラキラ、
役目を終えたように
しんみりと散っていく火花、
鼻にツンとくる火薬の匂い。

──私は、花火が大好きだ。


結婚して8年が経ったある夏の日。

「花火見に行かない?」
と夫を誘った。

「いいよ!」って、
すぐに返事をくれて、私は嬉しかった。

久しぶりのデート。

でも本当は、離婚を考えていた。

最後にもう一度だけ、
二人でちゃんと向き合いたかった。
わたしへの気持ちを確かめたかった。

思い切って誘ったのが、その花火大会だった。

当日、会場に着いて少し経った頃、

「先輩が働いてるところ、覗いてみてもいい?」

「いいよ〜!」
と私は、すぐ返した。

結局その先輩は見当たらず、
私たちは、一緒にいた。

諦めたかと思っていたら
まだその先輩を探していた。

見えにくい場所から
変な態勢になりながらも。

もうすぐ花火が始まるのに…。

「早く一緒に花火を見に行こうよ…」
心の中でつぶやきながら、トイレへ向かった。

トイレから戻ると
夫は、その先輩と楽しそうに話していた。

いつもなら気にならない光景。

でもその瞬間、何故かすごく悲しかった。

というよりも
自分がそんなふうに
感じてしまったこと自体が悲しかった。

これが最後のデートになるかもしれない──

そう思っていたからこそ、胸に突き刺さった。

少しだけでいい。
あの頃に戻れたら…と願っていた。

でも、あの夜ではっきりしてしまった。

もう私たちは、
あの頃の二人には戻れないのだと。


初デートは、花火だった。

私が花火好きだったから
いろんな土地の花火大会へ
よく連れていってくれた。

夜の空に打ちあがる花火を、
横に並んで見て、
「きれいだね」「すごいね」って
同じ気持ちで楽しんでいた。

今は違う。

私はあの頃の二人を取り戻したかった。

夫はきっと、
ただの夏のイベントとして楽しんでいただけ。

もう、心の温度が違っていた。

帰りの車の中、私は自然と涙が溢れた。
一言も話せなかった。

でも不思議と、
心の中のモヤモヤは晴れていた。

「もう、離れよう」
そう、決めることができたからだ。

そう思わせてくれたから、
あの夜に、少し感謝したい気持ちすらある。

でも離れようと決意した瞬間は
やっぱり、すごく、悲しかった。

二人の楽しかった思い出が
こんな形になるなんて
わかっていたはずなのに。

最後になってもいい。
二人で一緒に花火を観たかった。

あの夜の花火の光は、きっと一生忘れない。

もう“二人の花火”ではないけれど、
私にとっては
大切なさよならの景色だった。


最後まで読んでくれてありがとうございます☺️

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