【超絶掌編小説】『誰の心にも刺さらない物語』
ページがある。
以上。
※本当に時間が無駄になるだけなので
この先は自己責任でお読み下さい。
第1章:はじまりの前
————誰からも期待されず、誰にも読まれず、誰にも思い出されることのなかった一冊の本があった。
それは図書館の奥の奥、埃まみれの棚で、ページが黄ばみ、文字はかすれ、存在すら忘れ去られていた。
その本の主人公は「誰でもない」少年。
名前は与えられず、家族もなく、過去も未来もない。
ただ、歩く。
音のない世界を、色のない空の下を、意味のない会話を交わしながら。
物語の終わりには何もない。
感動もない。
救いもない。
伏線も、どんでん返しも、教訓もない。
読者の心を動かす何かは、最初から意図的に取り除かれている。
ただ、ひとつだけあるのは——「存在していた」という事実だけ。
そして白い。—————
ただ、それだけだった。
誰も探さず、
誰も失わず、
誰も読まず、
誰も語らなかった。
静かで、空っぽで、やさしくもなく、冷たくもない。
そこに意味を求める者はいない。
ページの隅に、かすれたインクの染みがひとつ。
それは、たぶん「血」だった。
誰のものかもわからない。
なぜそこにあるのかも、もうわからない。
乾いて、黒ずんで、紙にしみついていた。
それだけが、この物語のすべてだった。
第2章:物語の否定
「この物語は、間違って存在してしまった。」
——— 完 ———
