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紙のウチュウ◇布施知子 ORIGAMI 紙の鼓動展@ヤマザキマザック美術館

こんにちは、はくれぽ!です。
今回は、名古屋市にあるヤマザキマザック美術館 で「布施知子 ORIGAMI 紙の鼓動」展(会期:2024年11月29日(金)〜2025年03月23日(日))のレポートです。


【展覧会概要】
日本人に身近な素材「紙」。
また折り紙など、いつかどこかで触れる機会のある素材の「紙」。
42回折ると月に届くとか届かないとか言われたこともある「紙」(出典不明)。
そんな無限の可能性を秘めた紙を様々に折った作品を作っている折り紙のスペシャリスト・布施知子さんの展覧会です。

美術館は市営地下鉄東山線「新栄町駅」1番出口と直結


今回の展覧会は、なにはさておき、紙ってそんなことになるの?!という驚きの連続に満ちた刺激的な展覧会でした。
それでは、作品を見ていきましょう!



ガンダム?いいえ《般若》です。

布施知子さんが折り紙に出会ったのは、幼い頃に入院ことがキッカケでした。
その後、折り紙への興味は続き大学生の頃、折り紙の「マスク」をライフワークとしている先生と出会い作られたのがこれらの作品です。
とても立体的な面ですが、ユニットで組み立てられているわけではなく一枚の紙から折られているそうです。

能面や舞楽の面がモデル
《般若》1976年頃
一瞬ガンダムかと思いました…


モバイル枯山水

「無限折り」という、半分折ってまた半分折って…と同じ形を繰り返して折るという方法で作られた枯山水。
無限折りの作品は展示には広い場所を必要としながら、移動にはコンパクトに折り畳み持ち運びできることから、まさにモバイルだなと思いました。

《枯山水 in 葵》2024年
規則正しい静謐さ
繰り返しの美
上に方にあるのが繋ぎ目。ここから外して畳むことができます。


折りの宇宙

折り方には様々な方法があり、今回の展覧会ではその技法別に各作品が展示されています。

らせん折り
通常は長方形の紙で折っていたものを台形にしたらどうだろう?と思いつき折ったところ誕生した、らせん折り。
こういうものってめちゃくちゃ計算されて作られているのだと思っていたので、そんなことある?!と驚いてしまいました。しかし、布施さんは常に折り紙を持ち歩いているらしく、ことあるごとに思いつきこんなのできた!となる人だということで、それはもう研究者の発想では・・・と思いました。
浮かんで展示された”らせん”は、まさにそんな科学の世界(理系音痴の感想です)。

上:《らせん折り①》2005年(2016年再制作)
下:《ねじれ多重塔五角形》2011年(2023年再制作)
螺旋はなぜこんなに美しいのでしょう
生命の根源を感じる(理系音痴の感想です2)

ユニット折り
比較的簡単なユニットの組み合わせから作られる、ユニット折り。
のりもハサミも使わないので、解体して違う形状を作ることも可能だそうで、とある企業の方々が見学された際に、この展示がことのほか興味をひいていたそうです。わかる人にはわかる、ということなんでしょう。

《アリ地獄》(480枚組)2019年
中のくるくる。どうすればこういうことを思いつくのでしょうか。
《ジグザグ編み正二十面体》2006年
The理系

無限折り
紙を半分に折り、それをまた半分、それをまた半分・・・と延々と繰り返す、無限折り。
無限折りは、先の《枯山水in葵》と同じ技法で、折り畳み可でコンパクトに収納できます。ここでの展示方法は裏側も見られるようになっていました。

博物的な雰囲気
《ねじれ多重塔五角形》2011年(2023年再制作)


繰り返し折り
折り方自体は単純であってもそれを繰り返すことで、その群れの迫力が増していく無限折りの一種である、繰り返し折り。
コンパクトに見える作品が多いですが、繰り返して折るということはそれだけ大きな紙が必要となるわけで、これらの技法を使える紙は白や茶色など限られた色のものとなるそうです。雰囲気的に和紙なのかと思っていましたが、洋紙が多いそうです。
茶色の紙は、薄い張りがありよく見るとうっすらと筋目が入っていました。なんとなくどこかで見たことがあるような気がします。

《ダブルファン》2015年

多重折り
繰り返し折りが横・水平へと伸びるのに対して、縦・垂直の方向に折重ね、繰り返した積もったように見える、多重折り。

《立浪/6山》2011年

平折り
一枚の紙を、切ったり貼ったりせずにさまざまな模様を折り出す、平折り。
ここでは常設展されているアール・ヌーヴォーの作家達によるガラス工芸と家具調度品のコレクションとのコラボレーションとなっていました。
そもそもヤマザキマザック美術館には企画用の展示室がなく、今回の企画展も同館のコレクションとのコラボが可能であると考えられたものから生まれたそうです。

調度品と絵画のように壁に展示された平折り作品。後ろから光を当てる演出。
《重ね渦》2019年
通常の平折り
《三重の渦折り》2005年(2016年再制作)
《話ふたつ》2016年


アール・ヌーヴォーとの競演、金の蛇・銀の蛇・赤い蛇

今回の展示のメインビジュアルとなっている、《ゴールデン・スネーク》《シルバー・スネーク》《レッド・スネーク》は、アール・ヌーヴォー時代の寝室や食堂が再現された3つの部屋に展示されています。
いつもは静謐な展示であることが想像される室内に、3つの蛇が配置され有機的な動きが感じられる不思議な空間となっていました。

《ゴールデン・スネーク》2024年 / ルイ・マジョレル《食堂用家具》1900-05年
テーブルの上には小蛇が
《シルバー・スネーク》2024年 / ルイ・マジョレル《寝室用家具》1900年頃
猫が見守る
《レッド・スネーク》2024年 / ポール・アレクサンドル・デュマ《食堂用家具》1902年頃


本日のお気に入り

最後に今回の私的お気に入りをご紹介。
《無限折り切り株》です。
初めは他の作品より地味に見えたのですが、よく見ると円の中への無限感にひときわの美しさを感じました。
切り株ということは円柱状なので、いわばどこまでも無限に延びることも可能で、無限の無限・・・そしてどこを切っても同じ形状・・・無限金太郎飴・・・

《無限折り切り株》2015年
側面も美しい


おわりに

普段、平面作品を見ることが多いのでそれも相まってか、奥行きやさらにその無限さに見ている間ずっと興奮しっぱなしで、視覚が喜ぶ眼福な展覧会でした。

また常設展室内での企画展といったアイデアは素晴らしく、新鮮な発見でもありました。フロア自体はそれほど広くないと思いますが、狭さが感じられなかったのも布施さんとの世界観の相性の良さがあったのかも知れません。

布施知子さんが折り紙の道に入ったキッカケには最初の出会いから節目節目の出会いが大きく関係していて、現在を作り上げてきました。なんでもそうですが、0からなにかの生み出すのは容易なことではなく、先人の知恵がありそれを展開して新しいものが生み出されることが多くあります。布施さんの折り紙もまさにその積み重ねが顕現したものと言えるかも知れません。

私たちは折り鶴などの折り方を知っています。それには初めて考えた人の設計図があり、私たちはその設計図のおかげで正確な折り鶴を再現することができます。
美術作品は一点ものが尊ばれ価値があるもの、と思いがちですが(現代美術はまた別として)、今回の展覧会では折り鶴のような再現性、螺旋のように無限に繰り返し再現される美というものに触れたような気がしています。

儚くも美しい、という言葉がありますが、儚くも美しい強固な永遠とはこういうものかと思いました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

追記

布施さんの作品を見るまですっかり忘れていたのですが、展示室に入った瞬間「なんか見覚えがある…」と思っていたのですが、記憶と画像を探したところ、2017年に長野県で開催された北アルプス国際芸術祭で見た作品の中にありました。
この時も無限折り枯山水の作品があったようですが、芸術祭は広範囲に及ぶのでそのエリアは多分見てなかったようです(あの作品なら見ていたら絶対覚えてる)。

北アルプス国際芸術祭はアートディレクター北川フラムさんのもと、長野県大町市の大自然と各国のアーティストがコラボして街や自然の中で作品を見るとても素敵な芸術祭で、また行ってみたい芸術祭のひとつです。

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