消えてしまいたい
利き手矯正は、周りからの圧力と
私自身の左手への罪悪感と
右利きにならなければのプレッシャーと
どもってしまう恥ずかしさと恐怖が合わさり、
緊張と不安でクタクタだった。
夜は、寝ているとうなされるようになり
恐怖で 何度も目が覚めた。
食欲も落ち、体調を崩した。
右利きにならなければ
この世界で生きていけない焦りと
左利きでいたい本音との間で、
悩み苦しみ 追いつめられていった。
表向きは、
少しずつ 右手で鉛筆を持ち、箸や先割れスプーンを使えるようになっていた。
それなのに、利き手の矯正を勧めた先生も、
それに同意した親も、
喜びもせず 褒めもせず 認めもしなかった。
まるで始めから、
そんな話など無かったかのような態度だった。
虚しかった。悲しかった。
今までの必死の努力は、なんだったのか、、、
右利きの世界で、
私が 鉛筆と箸が右利きになったトコロで
無意味なのかも知れない。
だって、
完璧な右利きにはなれていないのだから。
次は、
完璧な右利きになれない自分を 責め続けた。
誰かのいるトコロでは、右利きの仮面をかぶり、
ひとりになると、仮面を外し 左利きの私に
なった。
やがて本当の私自身は、
仮面を被った右利きの私なのか。
それとも、仮面を外した左利きの私なのか
わからなくなっていった。
この頃、
無いはずのモノが見えたり、
人ではないモノが話しかけてきたり、
現実の上に、別の世界が重なるようになったり、、、
幻覚と幻聴に振り回され、私は、私自身と戦っていた。
頭のどこかで、とうとう狂ってしまったのかも
知れないと思いながら。
私は、
必死で普通を装いながら 神さまに祈った。
神さま どうぞ私を殺して下さい。
シャボン玉がパチンと割れるように、
私を消して下さい。
私が、この世界に 始めからいなかったように
全ての人の記憶から 私を消して下さい。
…でも、消えなかった。消してもくれなかった。
パチンとも割れなかった。
私は、今ここに生きている。
小学生の私は、
本当はこの世界で ありのままの自分で
生きたかったのだ。
右利きの世界で、
左利きのまま幸せになりたかったのだ。
右利きのみんなと笑い 仲良くなりたかったのだ。
この世界で、
左利きのままで 役に立ちたかったのだ。
どもりのままで、
楽しくおしゃべりしたかったのだ。
そして、
右利きでも 左利きでも どもりでも、
どちらでもいい♪と誰もが思える世界を
みんなと一緒に 創りたかったのだ。きっと。
