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ガシャポンがアメリカで爆売れしている件——「高いのに売れる」を支えるビジネスの仕組み


テキサスのモールに、バンダイ公式のガシャポン専門店がオープンしました。最近ショッピングモールによく見るようになったので、深堀りしてみました。


日本人の感覚だと思わず二度見する価格設定です。1トークン$3、つまり1回最大$9=約1,350円。日本の相場(200〜500円)と比べると2〜4倍以上である。
それでも店内では、アメリカ人がトークンを何枚も何枚も投入してガシャポンを回し続けていた。回しているのはどちらかというと、ナード系の人が多いが、老若男女様々。
なぜこんなことが起きているのか。最近Presents Onlineのポッドキャストでバンダイのガシャポン急成長が取り上げられていて、その内容がビジネス的にあまりにも面白かったので、現地の写真とあわせてまとめてみます。

こちらがPodcast。面白かったので視聴をおすすめします。


現地で確認した価格

日本人目線では「高い」。でもアメリカ人からすると「このクオリティでこの値段なら安い」——そのギャップがあるようだ。
実際こちらのこの価格帯のおもちゃのクオリティは高くない…というか存在してないんですよね…

大体2トークンとか3トークン
1トークン3ドルです。
すごい流行ってます。これ、アメリカです。

10ドル以下のフィギュアのおもちゃって本当にない。

問屋モデルが抱えていた致命的な問題

もともとガシャポンは「問屋経由の展開」だった。バンダイがおもちゃを問屋に渡し、問屋が各場所に配置・補充する構造でした。
これには根本的な問題がありました。
何が売れているかが分からない。
補充は週1回が基本。業者が巡回して空になっていれば補充する。でも「半日で空になった」のか「7日かかって空になった」のかは分かりません。売れ行きのスピードが完全にブラックボックスです。
誰が買っているかも分からない。
購買データはバンダイに届かず、問屋のフィーリング頼み。メーカーとして致命的な情報格差があった。
そして、大ヒットすると問屋に嫌われる。
特定の機種だけ売れすぎると、その補充のためだけに臨時対応が必要になる。普段は週1回の確認で済むところを、その機種だけのために毎日補充に来なければならない状況が生まれる。問屋からすると迷惑な話で、反感を買うという逆説的な構造があったらしいです。
「売れれば売れるほど、サプライチェーンに摩擦が生まれる」
——これはメーカーにとって根本的な矛盾です。

直営化がもたらした「データ革命」


podcastの中身を抜粋しますと、2010年代後半、バンダイは「ガシャポンをお店として捉える」という発想転換を始めました。
最初は苦戦しました。でもコロナ禍が思わぬ追い風になる。
接客できない時代に、ガシャポンの「無人」という特性が輝いた。 さらに、ガシャポンは動力に電気を必要としない。維持費が低く、人手もいらない。一気に市場が拡大しました。
そして直営化によって、バンダイは初めて「自分の顧客を知る」ことができるようになった。
購買データを分析した結果、20〜30代女性の購買比率が想定外に高いことが判明。「子供向け」という先入観とは全く異なる実態が浮かび上がった。
このデータをもとに、池袋の乙女ロードへ大型店舗を出店。これが大ヒットでした。売上は右肩上がりになった。

テキサスのモールで目撃したこと


実際に店内に入ると、買っているのは主に20代前後の若者たちだ。髪を緑に染めていたり、ピアスをたくさんつけているような、いわゆるオタク・サブカル系の層でした。彼らがトークンを何枚も何枚も投入して、ドラゴンボールや怪獣8号のカプセルを次々と回していた。
日本人の自分が「高い……」と思う価格を、彼らは全く気にしていないように見えた。
アメリカでこの価格帯で買える「このクオリティのもの」が他にないからだ。 日本基準で「高い」と感じる価格が、アメリカの文脈では「バリュー」に映ります。
店内ではガシャポン公式ソング「ガシャPOP」がループ再生されていて、なんともいえないカオスで楽しいムードが漂っていた。


このビジネスから学べること

① データを持つことで、初めて「自分の顧客」を知る
問屋経由では見えなかった「誰が買っているか」が、直営化で明確になった。データが次の意思決定の根拠になった典型例です。
② 「高い」かどうかは市場によって変わる
日本では割高でも、アメリカ基準では「安い」。価格設定は絶対値ではなく、その市場のコンテキストで決まります。
③ ローテクの強みは「危機」のときに輝く
電気不要・無人・低維持費——コロナという危機がガシャポンの本質的な強みを浮き彫りにしました。
④ ターゲットの「思い込み」を疑え
「子供向け」という先入観が長年あったが、実際は成人女性が主要顧客だった。仮説よりデータです。

問屋モデルの限界→直営化→データ取得→顧客の再発見→海外展開。
ガシャポンの進化は、ビジネスの教科書みたいな話でした。
アメリカでのムーブメント、まだ始まったばかりな気がします。

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