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「法務で決めろ。」じゃねえよ。契約の当事者は誰なんだ。

契約審査をしていて、一番イラッとする言葉がある。

法務で決めてください。」

……いや、何を言ってるんだ。

法務は契約書レビューし、法的リスクを分析し、リスクを可視化する部署だ。

だから、

「この条項には〇〇というリスクがあります。」
「この責任範囲は通常より広いです。」
「このまま締結すると△△の損害が発生する可能性があります。」

という説明をした上で、

「このリスクを踏まえて、事業として受け入れるかどうかはどうしますか?」

と確認する。

すると返ってくる。

法務で決めてください。」

思考停止にもほどがある。

◾️法務は経営判断を代行する部署ではない

法務が判断できるのは、

違法かどうか」
「どんな法的リスクがあるか」
「契約上どんな不利益があるか」

までだ。

しかし、

* この取引が利益になるのか
* この顧客を失いたくないのか
* 売上目標達成のためにリスクを取るのか
* 他社との競争上多少譲歩すべきなのか

これらは法律問題ではない

経営判断であり、事業判断だ。

現場しか分からない情報が山ほどある。

◾️法務は「リスクを説明する医師」であって、「人生を決める人」ではない

医者に例えれば分かりやすい。

医者は、

「手術には成功率90%ですが、合併症のリスクがあります。」

と説明する。

そこで患者が、

先生が決めてください。」

と言っても、

最終的には患者本人の意思確認をする。

なぜか。

人生の責任を負うのは患者だからだ。

契約も同じである。

利益を得るのも事業部

損失を受けるのも事業部

それなのに、

責任だけ法務に押し付ける。」

こんな組織が機能するはずがない。

◾️法務に「決裁責任」を押し付ける組織は弱い

法務がOKと言った。」

この一言で責任逃れをしたい人が一定数いる。

しかし、本来の法務の回答は、

「法的リスクはこの程度あります。許容するかは事業判断です。」

である。

この回答に対して、

「じゃあ法務が決めろ。」

と言う人は、

要するに、自分で責任を負いたくないだけだ。
法務を責任回避の盾にしているのである。
強い事業部は違う
優秀な事業担当者は、
リスクは理解しました。」

利益とのバランスを考えて、この条件で進めます。」

あるいは、

そのリスクは許容できないので再交渉します。」

と、自分で判断する。

法務を「判断材料を提供する専門家」として使う。
だから意思決定が速い。

一方で弱い組織は、

法務が決めろ。」

責任だけ丸投げ

だから契約も進まない

元社内弁護士として言いたい

社内弁護士は万能ではない

未来予知もできない

事業の採算も知らない

営業戦略も知らない

だからこそ、

法務リスクを説明する。

事業部利益とリスクを比較して決断する。

この役割分担が組織として最も健全だ。

◾️法務に経営判断まで押し付けた瞬間、その会社では誰も責任を取らない文化が生まれる。

そして最後に何か問題が起きれば、

「法務がOKと言ったから。」

と責任転嫁が始まる。

それは法務の失敗ではない

意思決定を放棄した組織の失敗である。

契約審査とは、法務が事業部に代わって答えを出す仕事ではない。

リスクを見える化し、そのリスクを受け入れるかどうかを事業部が主体的に判断するための仕事だ。

法務で決めろ。」

その一言は、責任を専門部署に押し付ける文化を象徴する言葉であり、組織の意思決定能力の低さ自ら露呈しているだけなのである。

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