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霧の奥の姿

夜明け前の空気はまだ色を持たず
世界の輪郭が静かに息を潜めている

その沈黙の中で胸の奥がかすかに揺れ
水面に落ちた光のように
理由もなく広がっていく

人は見た目で決めつける

少し近寄りがたい空気をまとった子が
帰り道で子猫をそっと抱き上げることも
誰も知らないまま
ただ雰囲気だけで悪いと呼ばれてしまう
その手が誰よりも優しいこともあるのに
その優しさは
霧の奥に隠れたまま気づかれない

霧の中に立つと世界の音が遠ざかり
心の声だけが淡く響きはじめる
触れようとすればすり抜けるのに
確かな温度だけが胸に残り
その温度が
見た目では測れないものの存在を
静かに知らせてくる

遠くで水がひとすじ流れ
忘れていた記憶をそっと揺らす

名前のない想いが胸の奥で形を変え
光にも影にも属さないまま
ただそこに留まり続ける
誰にも見せない優しさのように

私はその揺らぎを抱えたまま
まだ色のない空を見上げる

霧の奥にある姿は
目に映る形とは違うことを
静かに思いながら
胸の奥の灯りが
ゆっくりと息をするのを感じている





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