風の中のふたり
風が通り過ぎるたび
世界は少しだけ
ふたりを置いていくように見えた
ざわめきの中で
不安が小さな肩を揺らしたとき
もうひとつの影が
そっと隣に立った
言葉よりも静かな
ひとつの気配
ひとつのまなざし
ひとつの「ここにいる」という温度
風はふたりの間をすり抜け
影を揺らし
涙の気配を運んでいったけれど
その小さな勇気だけは
風に流されず
ふたりの足元に
やわらかな灯りを落とした
時が流れ
影は伸び
声は変わり
歩幅はいつの間にか
追い越されてしまったけれど
あの日
風の中で寄り添った
ふたりの静けさだけは
胸の奥で今も
そっと息をしている
成長とは
大きくなることでも
強くなることでもなくて
風に揺れながらも
誰かのために
そっと立ち止まった
あの瞬間の優しさに
ひっそり宿っていたのだと
今ならわかる
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