大国主命⑭
爾に、其の神の髪を握り、
其の室の椽毎に結ひ著けて、
而して、五百引石にて、
其の室戸を取り塞へ、
其の妻、須世理毘売を負ひ、
即ち其の大神の生大刀と、
生弓矢と、及び其の天詔琴を取り持ちて、
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そこで大穴牟遅神は、須佐之男命の髪をつかみ、
その髪を部屋の梁ごとに結びつけました。
さらに大きな岩で部屋の戸をふさぎ、
須勢理毘売を背負って、
須佐之男命の持っていた
生大刀(霊力ある太刀)、
生弓矢、そして天詔琴まで持って、
逃げ出しました。
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須佐之男が眠っている間に逃走を試みるシーンです。
まず、須佐之男の髪を部屋の屋根を支える木材に結びつけます。
髪は以前見たように、力・つながり・霊的な流れのようなものです。
その髪を梁に結びつけるというのは、須佐之男の力そのものを、一時的に場へ固定するということでしょう。
正面から打ち倒すのではなく動けないようにする知恵を使っています。
五百引石で戸を塞ぐというのも同じです。
根の国の出口を、一瞬こちら側に確保するための二重の手立てなんですね。
力ずくの勝利ではなく、時間を稼ぐための配置です。
そして、須勢理毘売を背負います。
一緒に逃げるだけではなく、背負うのは
須勢理毘売という縁と、根の国で得た知恵そのものを背負って出るということなのでしょう。
その時に、生大刀・生弓矢・天詔琴を持ち出します。
これは持ち逃げしたのではなく、大穴牟遅が、須佐之男の世界から三つの力を継いで出る場面なんだと感じます。
生大刀:切り開く力・近くを処理する力
混沌を整理して、道を開く力。
生弓矢:遠くへ届かせる力・働かせる力
距離を越える力、将来へ向けて届かせる力。
天詔琴:神意を響かせる力・見えないものを動かす力
神意の媒体、見えない秩序を場に響かせるもの
これらを、まとめて持って出ます。
太刀と弓矢だけなら「武」の神、琴だけなら「祭祀」の神になりますが、大穴牟遅は三つ持ち出し武と祭祀の両方を持つ神になります。
大国主らしいなと感じます。
