FKAツイッグスについて論考を書きました。
FKAツイッグスのキャリアを、アルカ、ニコラス・ジャー、コアレスという3人のプロデューサーを通して考察しました。去年のチャーリーXCXの大活躍や、昨今のイギリスのクラブ事情と絡めながら、新作『EUSEXUA』にウェイトを置き、この希有な才能をキャプチャーした論考です。
チャーリーXCX『BRAT』をはじめ、ここ数年イギリスでクラブ・ミュージックをフィーチャーした良質な新作が数多くリリースされている一方で、クラブ・カルチャーが衰退しているという矛盾がもたらす軋みについて考えながら『EUSEXUA』を聴くことに意味があると思い、こういう構成になりました。
また、FKAツイッグスについての総論を書きたいと思ったので、彼女の音楽的変遷の中で重要な役割を果たしてきた、3人のプロデューサーにフォーカスすることで、彼女のサウンドを再確認しようと思いました。FKAツイッグスを含め、彼らは全員、2010年代初頭にキャリアをスタートさせた人たちです。
この論考はつまり、FKAツイッグスを通したアルカ論、ニコラス・ジャー論、コアレス論になっています。特にコアレス=『EUSEXUA』のパートについては彼のインタビュー記事を引用しながら、彼のもたらした音楽的影響についてじっくり考えています。コアレスは凄い音楽家なので、ぜひ注目してほしい。
2010年代のほとんどの間、ぼくは20代だった。その時代に音楽シーンに現れ、音楽シーンを塗り替えていったFKAツイッグスやアルカ、ニコラス・ジャーはぼくにとって同世代でもある(コアレスの年齢はわからない)。同世代の人間として彼らについて書かなければいけない、という想いもありました。
最期のパートで、FKAツイッグスがデビュー時から今日に至るまで一貫して使用している機材の話をして、この論考を締めました。これはFKAツイッグスの音楽家としての一貫性を示したかったから。今回の文章では、彼女を支えたプロデューサーたちの話をしたから、彼女自身の話は少なかった。
ぼくはそのまま文章を終わらせたくなかった。それは彼女の音楽家としての才能を矮小化しているようにも映るし、彼女自身がインタビューで女性音楽家が認められにくいという話をしていたこともあるからだ。そのことは真摯に受け止めなければいけないと強く思った。だからこういう構造の文章になった。
『EUSEXUA』のリリースから約4か月経過しているけれど、十数年以上前の情報もあれば、今年4月以降の状況もあるので、射程の長い論考になっています。FKAツイッグス入門としても読める内容になっているので、ここから彼女のサウンドについて聴いてくれる方がいると嬉しいな。よろしくお願いします。
ぼくがwebメディアで音楽について書く時は、引用音源/引用文献を多めにした原稿を書くようにしていてるので、そちらの引用元もぜひチェックしてほしいです。ぼくは昔から、1つの原稿から無数の世界への扉が開かれているフォーマットが大好きだったので、自分でもそれをやっています。
海外アーティストについて書かれた日本語の論考が減っていくのは避けられないかもしれないけど、そんな状況のなかでも、ぼくは先人から受け継いできたこの文化を絶やさないように、今後もしつこく書き続けるつもりです。情報量が多く、面白い記事を読んだときの快感は他に代えがたいものがあるから。
マイナー/メジャーを問わず、面白い音楽をキャッチアップして、そのサウンドについてじっくり書いて、なおかつちゃんと読まれるような文章を書くのはとても難しいです。ぼくも毎回、すごく悩みながら書いてる。それでも、ぼくは自分がこれまで先人たちから受け取ったものを、別な形で返したい。
先人たちから受け取ったもの、と書いたけれど、ぼくは現在進行形で色んな人たちから受け取っているんですよ。商業媒体でも、非商業媒体でも、そこで書かれたものから受け取った情報で知的好奇心が満たされて、刺激になるわけで。その人たちには心から感謝してるし、ぼくが書いたものでお返ししたい。
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