「公益信託って何?」と聞かれて、うまく答えられなかった──公益信託の話①
Hello!ニュータウン!! 泉北のまちから、宝楽陸寛です。
2026年4月、公益信託の新しい法律が施行されました。
れらすべての記事をまとめる形で、「これから地域に関わってみたい」と思っているあなたに向けて、実践的なヒントを書いてみようと思います。
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2026年4月、公益信託の新しい法律が施行されました。
大正11年にできた制度が、百年ぶりに大きく変わった。僕はこの改正がすごく面白いと思っていて、あちこちで話をしているんですけど、正直に言うと、まだうまく伝えられていない。弁護士さんに「一緒に公益信託やりませんか」と声をかけたら、10人中10人に「専門じゃないんで」と言われた。NPOの仲間に話したら「それ、公益法人で全部できるスキームやん」と返された。
なので、今日は「公益信託って何なの」というところから、できるだけ分かりやすく書いてみます。
まず自己紹介──公益信託お兄さん
僕は公益財団法人泉北のまちと暮らしを考える財団の代表理事をやっています。泉北ニュータウンを拠点に、子ども食堂の支援や空きテナントを使ったマーケットイベントのコーディネート、コミュニティスペースの運営など、地域に根ざした活動をしています。もう一つ、全国に約35あるコミュニティ財団のネットワークの会長もやっています。
で、今、自称「公益信託お兄さん」として活動しています。
NPOとかソーシャルセクターの人たちが全然ついてきていない。43歳はお兄さんじゃなくておじさんに近いんですけど、まあ相対的にお兄さんということで、現場の立場からこの制度を広げようとしています。
信託ってそもそも何
信託は「信じて託す」契約です。
自分の財産を、信頼できる誰かに預けて、管理・運用してもらう仕組み。一般的には、資産防衛で使われたり、相続のときに財産を保全しながら順番に渡していくために使われたりしています。
登場人物は3人。財産を託す「委託者」、預かって管理する「受託者」、利益を受け取る「受益者」。金融の世界では、信託銀行が受託者になって、受益者にお金を届けるのが基本の形です。
公益信託は何が違うのか
公益信託は、この「受益者」を設定しない。
財産の行き先が、特定の家族や個人ではなく、「社会のため」「公益目的」に設定されている。育英資金として使うとか、研究開発の助成金に使うとか、環境保全に使うとか。
つまり、自分の財産を、公益目的のために信託する契約です。
百年ぶりの大改正で何が変わったか
大きく変わったのは3つです。
1つ目。担い手が広がった。
これまで公益信託を扱えたのは、事実上、信託銀行だけでした。今回の改正で、法人でも個人でも受託者になれるようになった。営利企業でも、NPO法人でも、公益財団でも、誰でも扱える。例えば、子ども食堂を運営してコツコツ寄付を集めている団体が、公益信託として財産を預かって事業に生かすということも、理論上はできるようになった。
2つ目。信託できる財産の種類が広がった。
これまでは現金しか扱えなかった。今回から、土地、建物、山林、株式、有価証券、再生可能エネルギーの収益──お金に換算できるものなら何でも信託できるようになった。
これは大きい。僕らのところにも「空き家を社会のために役立てたい」「山林をなんとかしたい」「株式を寄付に使いたい」という相談がある。でも、遺贈寄付で不動産を寄付しようとすると、ほとんどの寄付先が「お金に換金してから持ってきてください」と言う。それで諦めて普通に相続しちゃう人が多い。公益信託なら、不動産のまま信託できる。
3つ目。窓口が一つにまとまった。
以前は、田んぼをお金に変えて農業振興で使いたいなら農林水産省に聞くのかな、みたいな感じで、分野ごとに担当する省庁がバラバラだった。今回から、公益認定等委員会に一元化された。相談先が明確になった。
遺贈寄付と何が違うのか
僕らの活動で大きな財源の一つに、遺贈寄付があります。亡くなってから寄付する仕組みです。
遺贈寄付は、亡くなる前に「寄付する」と決めておくか、相続人が「この財産を寄付しよう」と思った時にしか発生しない。遺言書を預かるということは、言い方を選ばずに言えば、「亡くなるのを証明書として持っておく」のに近い。僕らとしても少し気が引けるところがある。
公益信託は、生きている間から信託できる。 自分の財産が社会のためにどう使われているか、見届けることもできる。
もう一つ大きな違いは、委託者の思いを契約で縛れること。遺贈寄付だと「法人にお任せします」になりがちで、受け取った側が倒産したらそのお金はなくなる。公益信託は契約行為なので、「こういう目的で使ってほしい」と信託目的で指定できる。信託が終了しても、残った財産は同じような公益目的の法人か公益信託に贈与しなさいというルールがある。委託者の思いが制度的に守られる仕組みになっている。
寄付の世界は広がっている
日本の寄付市場はこの10年でかなり広がっています。個人の寄付は2014年と比べて倍以上。企業の寄付も増えている。京都にある地域創造基金という公益財団が、上場前の株式を上場時に寄付して70億円の財源を作った、なんて話もつい最近ありました。
日本の年間相続財産は約50兆円。そのうち20%、約10兆円が遺贈寄付に使われる可能性があるという調査結果がファンドレイジング協会の寄付白書に載っています。一方、信託の世界は再委託を含めて1532兆円。20%が公益に使えたら306兆円。桁が違う。
皮算用に近い話ですけど、可能性の大きさだけは伝わると思います。
次回予告
次の記事では、公益信託を実際にやろうとしたら何が必要なのかを書きます。
受託者、信託管理人、行政庁の三層構造。弁護士さんの前で制度を語った時に出てきたリアルな質問。「全くイメージがわかない」と言われた話。筑後川のコミュニティ財団が設計した、不登校児のためのフリースクール奨学金の事例。
制度の話だけじゃなくて、「実際にやるとどうなるの」というところを書きます。
さあ、今日も現場へ。いってらっしゃい。
宝楽陸寛 公益財団法人泉北のまちと暮らしを考える財団 代表理事
【お知らせ】 財団では「大阪 新・公益信託相談センター」を開設しています。使っていない不動産や株式を社会のために役立てたい方、まず話だけでも聞いてみたい方、初回相談は無料です。詳細はこちら → https://semboku-fund.org/osaka-shintaku-center
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