ロングドライブになった日
朝起きて、銀行に行くという本日のノルマをこなした。
その帰り道、ふらりとジョイフルに寄ってモーニングを食べる。
コラボ中の「ミルキー」の誘惑に勝てず、自分を甘やかす名目でパフェまで注文してしまった。
スマホでパチリと撮って、友達に送信。実食。うまー。
すぐに友達から返信があった。
「今日空いてるなら、ランチしない?」というお誘い。
リクエストは、「天気が良いから海が見たい」、そして「車を出して」。
「当然。良いよー。今から向かうけん」
友達をピックアップして、さあ、出発。
女二人のロングドライブ、道中に沈黙はない。近況報告に次ぐ近況報告。
話の腰も、ドライブのゴール地点も、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。散らかったり収束したりするのがまた楽しい。
往路と復路でルートを変えることにして、まずは行きの海景色を楽しんでもらう。
「唐津に行こうか」「伊万里まで行こうか」。そうして辿り着いたのは、松浦市。
目的の食堂へ到着。
刺身定食、一人千円。おばちゃんに注文を告げて先にお会計を済ませ、テーブルにつく。
そこにあるのは、あたたかみしか感じられない食堂の空気。
ピークを過ぎた店内に、客は私たちだけ。
とっておきの穴場を教える優越感に浸りながら、料理を待った。
運ばれてきたのは、決して着飾った料理ではない。
漁師のおばちゃんが作ってくれた、素朴な刺身の盛り合わせとアジの唐揚げ定食。
けれど、この鮮度とボリュームは、都会ではこの金額ではまずありえない。
「都会で食べたら一体いくらするだろう」と、無意識に値踏みしてしまう自分に気づき、都会の風に毒されているなと、ふと嫌気がさした。
食後、出航していくフェリーの姿が見えた。
誘われるように港へ寄り道し、桟橋に立って、フェリーが辿る航路を地図でなぞってみる。
防波堤には釣り客がちらほら。ふと岸壁に目をやると、潮がずいぶん引いている。
「今日は新月なんだね。だから大潮か」
都会のスピードでは見落としてしまう、自然の営みに気づく。
「思えば、遠くまで来たね」
どちらからともなくそんな言葉が漏れる。
夕方のラッシュに巻き込まれないよう、時間を気にしながら家路についた。
帰り道もまた、往路とは違う海沿いの道を。
沈みゆく陽光と潮の香りを追い越しながら、女二人の長い一日は、ゆっくりと幕を閉じていく。
……はずだった。
自宅に着き、後部座席に置いたお土産を部屋に運ぼうとした、その時。
そこには、彼女が買ったお土産も、当然のように残されていた。
「あ、忘れてる……!」
すぐに連絡を入れ、「今から向かうけん!」と再びハンドルを握る。
さっきまでの静かな海沿いの道とは一変、目の前には宝石を散りばめたような都会の光。
夜景が煌めく中、彼女の家へと車を走らせる。
無事にお土産を渡して、今度こそ、本当の解散。
一人で帰る道すがら、フロントガラス越しに広がる街を眺めて、ふと思う。
「福岡の夜景って、やっぱりいいよね」
昼間の素朴な海も、夜の少し派手な街の光も。
毒されているなんて毒づいたけれど、結局はこの街の美しさに、私は生かされている。
そんなことを思いながら、女二人の長い一日は、今度こそ静かに幕を閉じた。
<゜)))彡ランチをいただいた食堂さんは、こちら→『海の里食堂』さん
