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hiiro_archive153
武器屋の、あくまでも餌付け(#毎週ショートショートnote)
「いつも頼りになるよ、うちのパーティーに欲しいぐらいだ。」
「言ってるだろう、俺は武器屋。どんな奴にも武器が売れりゃあそれでいい。死の商人だ。勇者様みたいな清らかな心は持ち合わせちゃいねえんだよ。」
勇者のマルスがうちの武器屋に来るたび、もう挨拶代わりのようにこんな会話を交わしていた。マルスはいつも白い小さな毛玉みたいなモンスターを連れている。その毛玉はキュウと鳴いて俺の足にまとわりついてくるのが常だった。
ある日、マルスが神妙な面持ちで言った。
「悪い…ちょっと頼みがあるんだ。」
「お、なんだ?武器の相談か?」
「実は…これからある危険なミッションに行く。しばらくの間…君に、彼を預かって欲しいんだ。」
マルスは毛玉に目をやった。
「俺がか?モンスターの世話なんてしたことないぞ?」
「いいんだ、彼は人を見てる。世話なんて思わなくていい、飯を少し分けてやってくれないか。礼は必ずするから。」
マルスは背を向けて出ていった。
それが俺の、勇者を最後に見た姿だった。
嵐の夜になった。外で吹き荒ぶ風が、武器屋の扉をガタガタを揺らした。
毛玉は俺の膝に乗ってきた。俺は、食べていたパンをちぎって少し毛玉の口に運んだ。
「勇者様よぉ、さっさと帰ってこいよ。俺ができるのは、あくまでも餌付けだ。」
(了)533文字
たらはかに(田原にか)さんの「 #毎週ショートショートnote 」に参加しています。今回のお題は「 #武器屋の餌付け 」(「 #月夜の寝ぐせ 」の裏お題)でした。
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