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思想つよめのスーパー

コンソメを買い足さなければならないことに買い物の途中で気づくのは奇跡に近い。大抵は会計後か、帰り道か、調理中に気づくのだから。

しかし、コンソメがスーパーのどこにあるのか。それが問題だ。

「スパイス」のコーナーを見た。ない。
まあコンソメはスパイスではないよな。

なんでスパイスだと思ったのか。それはコンソメが粉で、味付けの時に使うからだ。スパイスのくくりに入れてもいいではないか。確かに。スパイスとはそもそもなんなのか。スパイスに辛味が必要だというのなら、バジルはスパイスのくくりに入らないではないか。

いや、そもそも目的が違う。スパイスは料理のアクセントになるものだが、コンソメは料理の土台になるものだ。コンソメはスープの最初に入れる。出汁のようなものだ。

そうだ、だし。だしコーナーに行こう。

しかし、だしコーナーには和風のだしや昆布、鰹節のほんだしが並んでいるだけで、コンソメはなかった。だしではないらしい。そもそもだしとは何か。肉や魚の旨みを抽出したものなのであれば、だしコーナーに入れてやってもいいではないか。

いや、違う。和風だしは土台になるけど、コンソメは入れただけでスープになる。コンソメは、スープだ。

そうだ、スープ。スープコーナーに行こう。

しかし、スープコーナーにはコーンスープの素や即席みそ汁のもとがあるだけで、コンソメはなかった。

スーパーの真ん中で、考え込んでしまった。
コンソメとは、いったいなんなのか。
この、スーパーの売り場担当者は、コンソメをなんだとみなしているのか。

スーパーには、売り場担当者の思想が色濃く反映される。
なんのくくりのコーナーに入れるかに、売り場担当者の価値観が現れてくるのだ。

何をなんのくくりにするか、物事をどう整理するか。それは一見事務的な作業に見えて当事者の意識が反映されてしまう。

コンソメとはなんなのか。
カレーは飲み物なのか。
食虫植物は植物なのか、動物なのか。

その人の中にある、定義が浮かび上がってくる。

売り場担当者さん。
いったい、あなたにとってコンソメとはなんなのか。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」みたいな問いが生まれてきてしまった。
「人生です」とか言われたらどうしよう。
じゃあスーパーに人生コーナー作っといてください。

そんなことを考えながら歩いたけれども、コンソメは見つからない。
仕方なく、中華コーナーで「鶏ガラスープのもと」を買った。

私の思想だと、「和風だし」「コンソメ」「鶏ガラスープのもと」は同じくくりだ。自分がスーパーを作るならそうする。

コンソメを探して、いろいろ回ってるうちにちょこちょこカゴに買う予定のないものを入れてしまった。

なるほど……それが狙いか。
思想つよっ。

(了)


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