「10品を繰り返し作りましょう」(著:ウー・ウェン)を繰り返し読む。
番号が振られたレシピを、順に読むのが好きだ。
でも、文章で書かれたレシピ、料理エッセイはもっと好きだ。
読んでいるうちに「よし、今夜はこれ作ろう」と思わされてしまう。
先月書店で運命の出会いを果たしてから、私が愛してやまない料理エッセイがある。それがウー・ウェンさんの著作「10品を繰り返し作りましょう 私の大事な料理の話」だ。
私はこの本を繰り返し読む。
その中に書いているレシピの一部は、すでに繰り返し作っている。
この本の魅力を、皆さんにお伝えしたいと思う。
「10品を繰り返し」に惹きつけられる。
私がこの本に出会ったのは近所の書店だ。
3歳の息子と一緒に絵本コーナーにいた。子どもがあまりにも絵本コーナーに夢中になっている。絵本はもう物色し尽くしていたので、子どもから目が離れない範囲の料理本コーナーを見ていたところ、様々なレシピ本の間に、その本はあった。
「10品を繰り返し……?」
このタイトルに惹きつけられた。
私は結婚してから7年間、毎日の料理を担当している。けれども、ちっとも上手くなったと思えない。
料理は嫌いじゃない。
でも、時々すごく大変だと思ってしまう。
一番大変だと思うのが、献立の「企画」だ。
冷蔵庫にあるものの中からレシピを探すものの、足りない材料もある。子どもが小さいと自由に買い物も行けないし、そうこうしているうちに賞味期限も迫ってきてしまう。毎日色々作るから、一向に配分を覚えられない。
楽しく料理ができることもある。
けれども、おいしさ、栄養、賞味期限……考えるべき要素が多岐にわたっていて、毎日考えねばならないと思うと、疲れてしまうのだ。
そのような私に、「10品を繰り返し」という言葉はあまりにも魅力的だった。
前書きを読み、本書をパラパラとめくる。
「一品だけを巻く春巻き」「具が2つのシンプル鍋」
あまりのシンプルさときれいな写真に、目が覚める思いだった。
私はこの本を手に取って、子どもの絵本とともに購入することにした。
「だし」を使わない!?
この本に一貫して流れている考え方、それは「極力シンプルに」ということだ。新しく買わなければならないような調味料は使われない。
そして、驚いたことに、ほとんどのレシピ本では当たり前の「だし」も使われないのだ。顆粒だしや鶏ガラスープの素を使わないというのはまだわかる。なんと、昆布やかつおぶしなどの「だし」も取らないというのだ。
野菜や肉などの素材から出てくる「旨み」があれば十分、という考え方だ。
料理エッセイの良さは「五感」
この本は、レシピだけではない料理エッセイの良さがふんだんにあらわれている。だから、料理エッセイが好きなのだと、読むたびに思える。
その理由は「五感」が描かれていることだ。
五感が描かれていれば、その料理を試したいと思わせてくれる。
どうですか?スープがきれいな翡翠色になったと思います。見た目にも高級品です。レタス1個でも、ちゃんと素材と向き合って、ていねいに芯を取ったり、ていねいにちぎったりして調理すれば高級品になるんです。
私が胸を打たれたのは「きれいな翡翠色」だ。通常、レシピにこんな色の表現は出てこない。でも、この表現を読むとこの翡翠色のスープを見てみたい。そんな気持ちになる。
お茶代わりのスープですって?
「翡翠色のスープ」が登場する「お茶代わりのスープ」の章は、私のお気に入りで、何度も読み返している。
最初「お茶代わりのスープ」と聞いて、意外に思った。
スープといえば、濃厚で旨味が強いものだ。スープは、醤油や調味料の配分によって味が決まるため、慎重になってしまう。
しかし、この章の冒頭を読んで目から鱗が落ちた。
私にとってスープは「具が入った温かい水分」、つまり温かいお茶の延長線上にあるものです。
私はこの考え方に驚いた。
著者のウー・ウェンさんは中国の北京で生まれ育っている。中国といえば中華料理。それこそ濃厚な味付けのイメージがある。けれど、それは外食をする時の話だ。故郷の家庭内では野菜と水と油と塩で味付けした簡単なスープが作られるようだ。
具体的にいくつかの作り方が書いてあったが、極力シンプルだ。前述の通り、顆粒だしだけではなく、昆布や鰹節などのだしもとらない。だしの出やすい具材そのものを使うのだ。桜エビやトマト、長芋、海苔など……特に驚いたのはレタスだ。レタスのだしなんて聞いたことがないが、たくさん加え、肉や魚介のだしと合わせることで、旨みが引き立つのだそうだ。
この「お茶代わりのスープ」という考え方は、私にとって魅力的だった。スープをおいしく(=旨く)しようとすればするほど、旨味と合わせて塩分濃度も高くしてしまう。おいしくはあるが、飲み干すにはためらってしまうほどだ。しかし、「お茶代わり」であれば文字通りお茶のように飲めて、野菜もたっぷり食べることができる。
私はここに出てくる「レタスと桜エビ」のスープを1週間に一度は作っている。レタスのだしが「お茶」というのは本当にその通りで、まるで茶葉のように香り高い。他の料理の邪魔をせず、すっきりといただける。野菜不足も解消できるので、私のお気に入りメニューの一つだ。
お店の味と家庭の味は、ぜんぜん違っていい
「まるでお店の味」という言葉は、ほめ言葉だと思っていた。確かにお店で食べられるような美味しさを再現できたら嬉しいと思う。しかし、本書は「お店の味と家庭の味は違う」と主張する。
炒め物は強火でガーッと炒めるものと思っている人は多いと思うのですが、あれはお店の火力と大きな鉄の中華鍋だからできること。家庭の台所の火力で、おうちのフライパンで作る炒め物とプロの料理は、別世界のものです。
(中略)
家庭料理は旬の食材を使い、油も塩分も必要最小限にして、家族の健康を第一に考えて作るもの。「毎日食べても飽きない」「シンプルでしみじみおいしい」「後味がいい」料理をつくりましょう。
読んでいてすごく納得した。一口食べて旨みがガツンとくるような料理は時々お店で食べればいい。
お店は多くの人に好まれる料理を売らなければならないから、わかりやすい美味しさになるのも仕方がないことだ。
しかし家庭料理でお店の真似をしていたら、塩分や油分の摂りすぎになってしまう。毎日、家庭料理は日々の健康を積み重ねる。「薄味に慣れていきましょう」と言われると、どこか我慢を強いられているようで、正直気が進まない。けれど、「素材の美味しさをシンプルに味わう」と言われた瞬間、それはとても豊かな食事に思えてくる。
甘くないけどやさしい「台所はいつもきれいに」
著者のウー・ウェンさんの語り口はやさしい。先生の料理教室でお話を聞いているような気分になれる。料理の悩みを「それは、こうすればいいのよ」と軽やかに解決してくれて、心強い。
でも、そのやさしさには、凛とした芯がある。それは、「おいしい料理は、きれいな台所から」という章題を読んだ時だ。
痛いところを突かれた気持ちだった。私は結構皿洗いなどを後回しにしてしまう癖があり、必ずしも料理のスタートの段階でシンクや水切りかごを綺麗にできない。皿洗いまでできたら御の字だ。
「それでもいいんだよ、忙しいんだから」と言ってくれる人もいる。本書は違う。「きれいな台所が大事」だと強調する。だから、読み進めるのに、私には少しの勇気が必要だった。
しかし、読んでいくうちに、「絶対に台所をきれいにしたい」と思うようになった。
キッチンの配置、料理をしながらどのように洗い物を進めていくか、順を追って書かれている。こんなことまで言及している料理の本を私は見たことがない。まさしく「洗い物も含めて料理」なのだ。
特に心に響いたのはこの文だ。
一に洗いかご。洗いかごがいっぱいになってそのままの状態……という風景はわが家にはありません。洗いかごは洗った食器や道具の一時置き場。ふきんで拭いてすぐにしまうので、かごの中にものがたまることはないんです。繰り返します。あくまでも洗いかごは「一時置き場」です。
私は今までの横着を大いに反省した。私は洗いかごからフライパンを出したり、箸やフォークを取り出したりすることがある。でもそれでは思考がクリアにならないのだと言う。
これを読んでから、私はきれいな台所を「目指す」ようになった。常にきれいにできているかというとそうではない。けれど、「何も置いていない台所が、本来の状態」—そんなふうに、自分の中のゴールが定まった。
洗いかごから食器を元に戻すのは、本書に書かれていなかったがもう一つの利点があった。それは、ものを探す時間が圧倒的に減ったことだ。
今まで私は「元の位置に戻ってなかったら洗いかごだな」というあたりをつけて、探すことがあった。しかし、「絶対に元の位置にある」と思えば、何も考えずにすぐに必要なものを探し出せるのだ。無駄な動きが一つ減っていた。
「おいしい料理は、きれいな台所から」これは、一見忙しい主婦(夫)にとって耳が痛いように聞こえてしまう言葉だが、全く逆。ウー・ウェンさんのやさしさに満ち溢れた提案だ。
おわりに
この本を読み始めて、もう1ヶ月が経った。私はいつもこの本を台所に持って行くので、表紙は少し水に濡れて、しんなりしてきている。
まだ試していないレシピもあるし、すべての献立にこの本の教えを反映できているわけではない。それでも、毎日ほんの少しでも読み返すことで、確実に自分の中に染み込んでいるのを感じる。
この文章で、本書の魅力をすべて伝えられたかはわからない。けれど、もし少しでも気になった方がいれば、ぜひ手に取って読んでみてほしい。
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