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総裁選も勝ってないしノーベル賞も獲ってないけど

新聞デビューした。
何者でもない私が、である。

私は、2025年の1月から短歌を詠みはじめている。
元々は文章力をつけるために、三十一文字という制限がある中で言葉を練ることで表現力を向上させたいと思ったのがはじまりだ。
しかし、短歌の世界はそういった「手段」にするにはあまりにも奥深く、太刀打ちできなかった。

いい短歌の良さはわかるようになったけれども、今でも、自分の短歌が良いのか、ヘンテコなのか、全くわからない。そして、同じお題で書いている人が私には到底考えつかないような短歌を詠んでいて、三十一文字の可能性の深さを知るばかりだった。

私は短歌を詠む時に「57577」というアプリを利用している。詠んだ短歌をストックしたり、Xでシェアしたりするのも手軽で、毎日お題も出てくるから何を詠むか困ることもない。このアプリのおかげで短歌が続けられてきたといっても過言ではない。いつもありがとうございます。

このアプリにて、毎日新聞とのコラボで『アプリで推し短歌』という企画が開催された。歌人の天野慶さんに読んでいただける可能性があるそうだ。

お題は「赤」。
赤という文字を入れなくても、赤をイメージさせるものを詠めばいいようだ。

それでも「赤」を詠むとなると意外と難しい。
トマト、消防車、赤い服……思いつくものは色々あるが、どのように短歌にするか迷っていた。

最初はこんな短歌を詠んでみた。

私は、赤いものといえば辛いものというぐらい辛いもの好きである。
味噌汁にも、カレーにも唐辛子をかけてしまう。
でも、神様も辛いもの好きでなんでもからくトッピングしてしまったら、人生つらくなるんじゃないか。そういうダジャレである。
落語研究会出身なので、時々短歌の中でもふざけてしまうのだ。

でも、何首出してもいいとのこと。
もう一首詠みたい、という思いが募った。

やはり私の中で、赤といえば口紅の赤だなという思いがある。

こんな思い出がある。

大学3年生の時に付き合っていた彼氏は学部の同じゼミ生で、ある時、ゼミの飲み会に一緒に参加していた。そこで、彼が男友達と「やっぱりふわふわしてる女子がいいよなー」という会話をしていた。普段すごくやさしい彼だ。女子の好みに関して一家言あるのが釈然としなかった。私はふわふわしているように見えるかもしれないけど、ちゃんと意思もあるつもりだ。女子の好みがふわふわなんて……彼の支配欲みたいなのを感じて、もやもやした。

飲み会の解散後、私は薬局で一番真っ赤なルージュを買って、自宅で唇に塗った。

誰に見せるわけでもない。
けれども、自分で確認したい。そういう思いがあった。
(※のちに彼とは仲直りしたけど今の夫とかじゃない)

この思い出を三十一文字に詰めてみたいと思った。

レジスタンスとは、抵抗運動とか権力に反抗する意味合いだ。
反旗を翻したい、そんな気持ちがあった。

このアプリは有料であれば色や字体を変えることができる。
白の背景にルージュの色をイメージした赤にしてみた。

しかし、Xにシェアしてみたものの、いいねの数はそこまで多くないし、忘れかけていた短歌だった。

2週間後、この企画の結果発表があった。

この企画は、以前から開催されている。
金賞、銀賞、プラチナ、原石の賞まであり、「原石の賞」は天野慶さんの目に留まった短歌が選ばれるということで、「原石の賞」になれたら……と思っていた。

結果発表のポストを見て「原石の賞」を探し回って、「ない……」と落ち込んでいた。

もう一度最初から読み返そうとしていたら、「亜麻布みゆ」の文字が!

「えっ!?」

【金の57577】
アプリで人気かつ天野慶さんに選ばれた短歌3首です。
放棄未完さん、ネムリカーテンさん(@SgYqip)、亜麻布みゆさんの3作品が選ばれました。おめでとうございます!
充実した評とともに、毎日新聞朝刊に掲載されています。(デジタル版リンクはスレッドへ)

短歌だけのSNS アプリ『57577』

人気?選ばれた?私が?
新聞に掲載?亜麻布が?
味噌汁?ルージュ?どっち?

様々な疑問と興奮とで、今すぐ外に出て確かめたくなった。
早朝だったので寝ている夫に小声で
「あの……短歌、選ばれたんだけど、新聞買いにいっていい……?」と聞いた。

夫は、「へえ……すごいじゃん……むにゃむにゃ」と、
よくわかっていない様子だった。

私は近くのセブンイレブンに毎日新聞を買いにいった。
秋晴れだ。風が涼しい。

短歌が載ってそうな気がする!

しかし、新聞を手に取ってあまりの軽さにちょっと不安になった。
私は福岡に住んでいる。福岡の毎日新聞には載ってないのでは……
コンビニの帰り道に新聞を広げた。

新聞は、高市早苗さん新総裁の話題で持ちきりだった。
女性で初の総理大臣になるとのこと。

そんな話題を横目に、私は中程のページをめくった。
毎日歌壇、その下部に「アプリで推し短歌」のコーナー。


あった。


著作権の関係で載せられないけど。
あった。「亜麻布みゆ」の名前。
そして、短歌が……

あったーーーーーー!!!!!!

紙面に載ってたもん!ほんとだもん!

あったーーー!!
レジスタンス!!
ルージュ!!
ふんわり!!

金賞として、私の短歌も含め、三首が選ばれていた。
他の二首が素晴らしくて、自分の短歌がこの短歌に並んでいていいのか、くすぐったい気分になった。

でも、そんな中私の小さなレジスタンスはとても頑張っているように見える。紙面に印刷される力って侮れない。

「亜麻布みゆ」のペンネームを使い始めてから、初めての経験だ。
私のペンネームを、入力して、印刷して、流通した人がいるんだろうな……と思うと感慨深い。

同じ日に、ノーベル医学・生理学賞が発表された。
きっと、そのお名前は夕刊に載っているだろう。

私は、総裁選で勝ってないし、ノーベル賞も獲ってない。
全然すごいことはしてない。
比較するのすらおこがましい。

それなのに、たった三十一文字で新聞に載ってしまった。
言葉の可能性を改めて感じた。

私は、三十一文字も書くし、十二万字も書く。
これからも、言葉とずっと戯れていたい。
そう思える出来事だった。

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