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ぞうさんの話をしよう。

"The elephant in the room"という、英語の表現がある。
直訳すると、「部屋の中の象」になるが、
本当の意味は、
「誰もが感じているけど話題に上りづらい状況」だ。

部屋に大きい「ぞうさん」がいることは、誰もが認識しているけど、
その話題を誰も口にすることはできない。

この表現を知った時、とても気に入った。
日本にもっと伝わってほしいと思っている。

例えば、コロナ。
コロナの感染者数は毎日報道されていた。
全国で何人、増えた、減った、
数万人になる時もあれば、10人を切る時もあった。

それが、ある時からパタリと報道されなくなった。
コロナそのものが克服されたわけではない。
でも、急に誰も話題にしなくなった。
コメンテーターも「そういえば、コロナの感染者数は…」とか、言わなくなった。

その時、ぞうさんが見えた。
大きいぞうさんが、スタジオ内にいた。
キャスターも、コメンテーターも、ぞうさんの足元だ。
ぞうさんのことを話すと、ぞうさんに踏みつけられる。
ぞうさんを避けながらしゃべるしかない。


例えば、「わたしたち、これからどうするの?」
付き合ってるような、付き合っていないような関係。
もしくは、付き合いが長くて、そろそろ結婚するかしないかという関係。

そんなところに、現れる、大きいぞうさん。

女は、男にぞうさんの話をしてほしいと思う。
男は、ぞうさんの話をできずにいる。
女は、しびれを切らして、自分からぞうさんに立ち向かう。
男は、ぞうさんから逃げる。

女は、がっかりして、ぞうさんの話はしなくなる。
そして、ちょっと不機嫌になる。

「女っていうのはよくわからないところで不機嫌になるな、やれやれ」

ぜんぶ、ぞうさんのせいだ。
ぞうさんの話ができる人は、かっこいい。


そういえば、義母に「2人目ができたら、教えてくださいね。」と言われた。
義母は、優しい。
優しいから、「2人目はまだなのか?」とは言わない。
それでも、ぞうさんの話はしたいらしい。

その後、私は子どもに連れて実家に帰る予定があり、家を空けた。
夫は、その間、義両親と共に、夕食を食べていたようだ。

きっと、義母から夫にも「2人目」の話が出たに違いない。
夫が問題意識を持ってくれたら、物事が進むのだ。

帰ってきて、期待しつつ夫に聞いた。
「お義母さんと、『なんのはなし』した?」
夫は、少し考えて、言った。

「ずっと、ミッションインポシブルの話してた!」

きっと、あの部屋、大きいぞうさんがいたんだろう。
ぞうさんの話をすることが、ミッションインポシブルだった。

なんのはなしですか?

まぎれもない、「ぞうさんの話」だ。






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