診察室にて
以前、交差点の横断歩道を歩行中、後方右折してくるバスにはねられたことがあります。結論から言うと、肋骨の骨折と打撲だけで、ゆっくりだったら歩くこともできるという、奇跡的に軽い負傷ですみました。
その時の記憶が生々しく残っているので書いていきたいと思います。妙に感覚が研ぎ澄まされていたように思います。
ひかれた直後、信号待ちしていた車から降りて、助けてくれた方が、偶然看護師さんでした。私を路肩まで連れていってくれ、救急車を呼んでくれました。「頭は打っていないようだ。目立った出血なし。」など怪我の状況を適切に伝えていただけました。私を気遣いながら、交差点の滞った交通の誘導もやってくれていました(本当に感謝しかありません。喋れなかったのでお礼もできませんでした)。
救急車で、とある田舎の総合病院に運ばれました。日曜日の午後だった為、先生はおそらく1人、看護師さんも少なかったと思います。私の前に何人か急な患者さんがいたらしく慌ただしい状況だったようです。
私が運ばれていくのを見た、帰宅途中の看護師さんが、診療室まで戻り、中の看護師さんと引き継ぎができるまで見ててくれました(看護師さんにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、もうタイムカードも押していただろうし、帰宅途中にも拘らず、気遣っていただけました。感謝しかありません)。
診療室は慌ただしい雰囲気でした。私はベッドにしばらく寝かされていました。
そこに追い打ちをかけるように急な患者さんの連絡があったようでした。
「金属の鉢(はち)が頭に落ちてきたおじいさん」が運ばれてくるようなのです。
「金属の鉢ってなんなんだ?」とドクター。
現場は一挙に緊迫したようでした。「手術」という言葉も耳に聞こえてきます。
「俺より大変かもな...」
と私は朦朧とした意識のなかで漠然と考えていました…
少し経って、看護師さんが、大きな声で
「先生、違います。金魚鉢でーす!」
「ん… なに?金魚鉢?」とドクター。
私の心の声…
「だいぶ違うぞ… 『きんぞくのはち』から『きんぎょばち』に… 。でも、そもそもおじいちゃんの頭の上に何故、金魚鉢が落ちてくるんだ?一体全体、どういうシチュエーションなんだ…? なんで?なんで?。」
私は体の痛みに耐えながら、頭は「金魚鉢が落ちてきたおじいちゃん」で一杯になっていました。
しかも、おじいちゃんを心配してパニックになったおばあちゃんが、思わず救急車を呼んでしまったらしいのです。
不謹慎ですが、ちょっと笑けてきました…
「たんこぶぐらいじゃん…」
私は、バスにひかれて、歩けるとはいえ、死を意識し、今までの人生を振り返り、両親のこと、周りのことを考え、少しシリアスになっていたかったのです…。
しかし、頭の中が「金属の鉢が金魚鉢へ」、「たんこぶのおじいちゃん」と「おじいちゃんを心配してパニックになって救急車を呼ぶおばあちゃん」で占められ、笑いが込み上げてきます。折れた肋骨が急激な痛みを与えます。笑いのツボにハマり、
「お願いだからやめてくれ…やめてくれ…俺は深刻になりたいんだ…」
と肋骨の痛みにしばらく悶えていました…
その時の痛烈な痛みがまだ忘れられません(笑)
最後までお読みいただきありがとうございます😊
交通事故の経験を通して、医療関係者の方々をはじめ数多くの方に助けていただきました。本当に心から感謝しております🙇♀️
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