「パンの耳を油であげて砂糖をまぶしたもの」
のぞみんさんの企画参加させていただきます。
ありがとうございます😊
私は、「パンの耳を油で揚げて砂糖をまぶしたもの」がとても好きだ。
初めて食べたのは小学校2年生の時だったと記憶している。母が作ってくれた。
家庭から出るパンの耳なんてたかが知れてるから、できあがったものはとても量が少なかった。
あまりにも美味しかったので、いつもなら欲張って多く食べるところを、思わず妹達にも平等に数を数えて分けて食べた。
「パンの耳を揚げて砂糖をまぶしたもの」は、どこにでも売っているような気がしていたが、そのあとなかなか出会うことがなかった。
15年ほど経った…
東京のスーパーのパン屋さんで信じられない光景を見た。
お店中央の大きなテーブルに「パンの耳を揚げて砂糖をまぶしたもの」がピラミッドのように積み上げられていた。
ビニールに詰め放題だった。
たくさんの人がごった返していた。
近所のおばさんがいた。
真剣な表情で時間をかけてビニールにつめていた。大きさの近いパンの耳を集め縦方向に、ビニールの底に綺麗に並べる(一段目)。それを二段、三段と重ねていく。
ビニールはパンパンに膨れ上がり、最後の段のパンの耳は3〜4センチビニールから顔を出してていた。
メッセージ性の強い現代アートのオブジェみたいだった。
私は、溢れてくる興奮を抑え、平静を装いながらビニールに詰め出した…
どうやら、スーパーの特売日に合わせたプチイベントらしく、私は「パンの耳を油で揚げて砂糖をまぶしたもの」をたまに食べることができた。
その当時お付き合いしている女性がいた。
パンの耳が嫌いで、胃腸が弱いらしく揚げ物をあまり食べない人だった。
私は彼女が「パンの耳を揚げて砂糖をまぶしたもの」を見るだけで、吐き気がするのではと心配で、気を遣って目の前で食べることはしなかった。
ある日、家に帰ると彼女が、浜に打ち上げられて海に帰れなくなったセイウチみたいに横たわっていた。彼女は放心状態だった。
彼女の側に空のビニール袋が置かれていた。
1人で食ってしまったらしい。
半笑いの私に気づいた彼女は、
「ちぃーせぇー男だな。
男なんだから、彼女がどんな状態でも受け止めろよ。
ほんとに器のちぃーせぇー男だ。
こんな男あったことない。
あ〜 ちぃーせぇー、ちぃーせぇー」
私は何も言わず、半笑いのまま、彼女の隣に座った。
海に戻れなくなった、小さめのセイウチは天井の一点を見つめていた。
「ゲゔぉっ…
ゲゔぉっ…
ゲゔぉっっ…
ゲゔぉっっ…」
時折…
聞いたことのない音色のゲップの音がする。
部屋に響く。
彼女の体が何かしらのメッセージを送っている…
人間の体から発せられる音とは到底思えなかった…
その後、彼女は揚げ物が食べられるようになった。
私は今でも「パンの耳を揚げて砂糖をまぶしたもの」が大好きだ。
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