第18期AC長野パルセイロの“決算書”から学ぶ、現役選手のための経営入門
今月から、1ヶ月限定で現役サッカー選手向けにクローズドコミュニティをテスト的に始めることになりました。
現役中から“サッカー以外”のことにも目を向け、 引退後も自分らしく生きるための土台をつくる。 そんなテーマで、信頼できる仲間内での対話や知識の共有を試しています。
初回の通話テーマは「決算書の読み方」です。
「サッカー選手に決算書?」と思うかもしれませんが、 実はこれは、ビジネスや投資の世界で本質的に役立つスキルのひとつです。
数字を読む力は、
何にお金が使われているのか
どこに伸びしろがあるのか
自分がいる“場所”がどうなっているのか
などを見抜く力につながります。
今回の記事ではその予習記事として、 実際にプロサッカークラブであるAC長野パルセイロの経営情報を題材に、決算書の読み方をざっくり整理してみたいと思います。
AC長野パルセイロの最新決算情報(第18期/2024年)
長野パルセイロの運営会社「長野パルセイロ・アスレチッククラブ」は、 2024年1月1日〜12月31日までの第18期決算において、純損失1億2005万円を計上し、 **3期連続の赤字(かつ株式会社化以降で最大の赤字額)**となりました。
クラブの競技成績としても、2024年J3リーグ18位、13試合連続勝利なしという厳しいシーズンが背景にあり、収益面の課題が色濃く表れています。
ただし、債務超過は回避されており、クラブ存続の危機には至っていません。
株主総会では、クラブ社長が「見込みが甘かった」と反省を述べ、今後は経営の安定化を最優先課題とする方針を明らかにしました。
こういった実際のクラブ経営の数字を見ていくことで、「数字が何を表しているのか」「その背景にはどんな要因があるのか」を読み取る視点が養われていきます。
決算書の“読み方”は言葉の理解から始まる
上記の決算情報はGoogle検索して出てきた情報です。この情報をしっかり読む解くためには「自分が理解できない論理の飛躍部分を確認すること」「言葉の意味を1つ1つ丁寧に理解すること」が必要になります。決算書の読み方は、基本的にこの繰り返しです。ポイントは「自分自身の言葉で他人に説明できるレベルまで」理解することです。
例えば、このあと記事で解説しますが、私は「債務超過は回避されており、クラブ存続の危機」がわかりませんでした。
上に書いてあるのは「債務超過になると、クラブ存続の危機になる」ということです。それはどういうことなのでしょうか?それを自分で調べるわけです。
初心者のうちは「決算」「純損失」「赤字」などを1つ1つ調べる感じですね。
債務超過とは何か?

その前に、前提として債務超過について。債務超過とは、企業や団体の資産よりも負債が多くなってしまっている状態のことです。 簡単に言うと、「持っているものより、借金のほうが多い」という状態。
この状態が続くと、銀行やスポンサーなどの外部からの支援が得にくくなり、 運営そのものが立ち行かなくなる可能性があります。
例えば、年収300万程度の友人に借金1000万くらいあって、唯一の資産である車を売っても200万にしかならず、借金をいますぐ完済できない。そんな人が債務超過な状態ですね。
債務超過になると、クラブはどうなるのか?
債務超過が長期化すると、
選手やスタッフの給与遅延やカット
補強予算の縮小
スポンサー撤退
クラブの消滅やリーグ退会
といった事態に繋がる可能性があります。
つまり「数字が赤字でもなんとかなる」という「感覚では済まされない問題」です。
ここで先ほどの「債務超過になると、クラブ存続の危機になる理由」について。
Jリーグのクラブライセンス制度と債務超過について
クラブライセンス制度の概要
Jリーグのクラブライセンス制度は、クラブの競技力や施設の水準を保ち、経営の安定性や財務の健全性を確保するために設けられています。
ライセンスには「J1」「J2」「J3」の3種があり、それぞれのカテゴリーでプレーするためには該当するライセンスの取得が必要です。ライセンス審査は5分野57項目(A・B・C等級)にわたる基準で構成され、A等級を一つでも満たさないとライセンスは交付されません。
J1・J2については独立した第三者機関が審査を行い、J3についてはJリーグ理事会が判定します。
債務超過とライセンスの関係
債務超過、すなわち「負債が資産を上回る状態」になると、原則としてライセンスが交付されません。これはクラブの存続に直結する要件です。
ただし、新型コロナウイルスの影響を受け、2020年度以降は特例措置が適用され、一定の猶予が与えられてきました。2025年度からは特例が撤廃され、債務超過や3期連続赤字に対する本来のペナルティが再開される見込みです。長野パルセイロは特例がなければ3期連続赤字に該当する=ライセンス剥奪でクラブ存続の聞危機ということです。

今後のリスクと対応
2025年度からは、債務超過が解消されていないクラブにはライセンスが交付されない可能性が高く、また3期連続赤字によるライセンス停止も現実的なリスクとなります。クラブは黒字化や増資などを通じて健全な経営体質を目指していく必要があります。
長野パルセイロの状況は?
先ほど記載したように、長野パルセイロは、2024年1月1日〜12月31日までの第18期決算において、純損失1億2005万円を計上し、**3期連続の赤字(かつ株式会社化以降で最大の赤字額)**ですが、債務超過は回避されています。また今は特例があるため、クラブ存続の危機には至っていません。
つまり、3年連続で稼いだ額より使っている金額の方が多いけど、なんとか今までの貯金とか切り崩して全体としてはプラスで、かつ特例があるからギリ大丈夫、というヤバめな状況のわけです。
クラブ経営のカギは誰が握っているのか?
クラブの命運を握るのは経営陣、特に**経営者(社長)**です。 どんなに情熱のある現場があっても、経営の舵取り次第でクラブの方向性や生死が左右されます。
企業もクラブも、最終的には「誰が経営しているか」で大きく変わるのです。実際に投資をする際も「この会社の社長はどんな人か」「どんな経歴の人か」など、インタビュー記事や動画があれば調べます。超重要です。
そして、このタイミングで長野パルセイロの社長が交代となったようなので触れておきます。
2025年4月、新社長が就任
AC長野パルセイロでは、2025年4月1日付で澁谷泰宏(しぶや・やすひろ)氏が新社長に就任しました。
澁谷氏は、クラブの目標として今期一試合平均5,000人の来場者数を超えることを掲げており、スタッフ全員で知恵を出し合いながら集客に取り組んでいく姿勢を明らかにしています。
澁谷氏は、37年間にわたり法人営業一筋でキャリアを積み、直近では長野で4年間活動。また、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)にてスポーツ経営マネジメントを学んでおり、サッカークラブの経営にも意欲を見せています。
就任会見では、クラブの厳しい経営状況に対し「新たな角度での営業活動や工夫を通じ、経営の安定化に努める」と語り、スタッフとの対話を重視した組織づくりにも意欲を示しました。
また、「地域密着」を掲げるクラブとして、ファン・サポーターと直接向き合いながら、“露出をどう増やすか”“どう関心を高めるか”といった課題にも主体的に取り組む姿勢を明らかにしています。
社長就任を決意した背景には、最終戦でのゴール裏サポーターの声と、家族の後押しがあり、「本気で長野のために挑戦する」と語っています。
実際にどうなるのか?今後に注目です。
過去の1試合平均の来場者数は?
ここで、私が気になったのは「クラブの目標として今期一試合平均5,000人の来場者数を超えること」を掲げている点です。「この目標はどれくらい現実的なのか?」「そうなった場合に、どれくらい稼ぎが増えるのか?」も決算情報を見ると見えてくるものがあります。
ちなみに参考にしたのはこちらのサイト。
https://cieloazul310.github.io/jclub-financial-table/club/parceiro/
以下は、AC長野パルセイロの過去の来場者数データと入場料収入の推移です。

このデータを見ると、来場者数が多いほど入場料収入が増えていることが分かります。仮に「1試合平均5,000人」が達成された場合、客単価が現状と同水準(1,000円前後)であれば、1試合あたりの入場料収入は500万円前後、年間で9,500万円程度の収入になる可能性もあります。
これは2023年度実績(69百万円)よりも大幅な増収であり、経営改善のカギとなる施策です。
ただし、今季の純損失1億2005万円を解消するには十分とは言えず、あくまで“改善の一手”に過ぎません。根本的な経費構造や収益源の見直しといった経営全体の改革が求められます。
長くなってきたのこの辺で。
まとめ:数字を読む力が、未来を守る力になる
今回の記事では、長野パルセイロの実際の経営情報を題材にしながら、決算書の読み方の“入り口”を整理してきました。
「赤字ってどういう状態?」
「債務超過って、何がヤバいの?」
「社長が代わると、何が変わるの?」
「数字を読むと、どんなことが分かるのか?」
これらの問いに対して、少しでもイメージが持てるようになっていたら嬉しいです。
たしかに、サッカー選手にとって“決算書”は直接関係のないものかもしれません。でも、「自分が関わるクラブの経営」や「今後お金を扱う上での土台」になるスキルであることは間違いありません。
知らないより、知っていた方がいい。あとからじゃなく、今のうちから備えておいた方がいい。そう思えるきっかけになれば幸いです。
この記事が少しでも「役に立ちそう」と思ったら、ぜひスキやコメントをお願いします!コメントは勉強の一歩目だと思ってもらえればうれしいです。質問や「ここが分かりやすかった」だけでも大歓迎です!
(この先の通話やコミュニティの対話にもつながるかもしれません)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
用語リスト(この記事に出てきた言葉)
決算書:会社やクラブの「お金の出入り」をまとめた書類。年度ごとに作成される。
収支:収入と支出のバランス。プラスなら黒字、マイナスなら赤字。
PL(損益計算書):1年間の売上・経費・利益などの流れを示す決算書の一部。
純損失:利益ではなく、赤字になった場合に使われる表現。
赤字:支出(使ったお金)が収入より多い状態。
債務超過:資産よりも負債(借金)の方が多い状態。
クラブライセンス制度:Jリーグで試合をするために必要な許可。経営や施設の条件を満たす必要がある。
客単価:1人の観客が平均して払っている金額。入場料収入 ÷ 入場者数で求める。
参考URL
https://cieloazul310.github.io/jclub-financial-table/club/parceiro/
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